日本新聞
原発推進方針引き継ぐ石破政権
4596号1面記事
原発推進方針引き継ぐ石破政権
総裁選では「原発ゼロ目指す」、首相になったら「原発ゼロが目的で
はない」。女川原発再稼働直後トラブル。安全な原発など存在しない
東北電力は10月29日に女川原発2号機を再稼働したが、11月3日にトラブルが起きた。機器を通すための案内管接続部のナットが緩んで外れたことが原因だとし、13日に再起動し、15日から発電を再開した。
女川原発は2011年の東日本大震災で被災した原発で、東電福島第一原発と同じ沸騰水型の原発である。地元でも反対の声が上がる中での再稼働強行である。
破たんした原子力政策、原発は廃炉に
石破首相は総裁選では「原発ゼロをめざす」と言っていた。ところが首相になったら「原発ゼロが目的ではない」と大きく変わっている。「安定したエネルギー供給が大切」と言い、安全が確認されたら原発再稼働もOKだというのである。
安全が確認された原発などあるのだろうか。原子力規制委は、次々「新基準適合」と再稼働GOサインを出しておいて、「適合」が安全ということではない、と平然と言い放った。このような無責任な原子力規制委の判断をもとに、再稼働などしてはならないのである。
現在、日本で稼働している原発は、
大飯原発3、4号機
高浜原発1、3、4号機
美浜原発3号機
玄海原発3、4号機
川内原発1、2号機
伊方原発3号機
女川原発2号機
の12基である。
12月7日には島根原発2号機の再稼働を強行しようとしている。島根原発も福島第一原発と同じ沸騰水型だ。
政府は2030年までに電力の原子力の割合を、現在の5%から20~22%に増やそうとしている。
高浜原発1号機は国内の原発で最も古く、11月14日、運転開始から50年経った。原発の寿命は40年だというのに、30年経過した原発は10年ごとに規制委がGOサインを出すことになった。余りにも安全軽視の無謀な制度変更である。60年を超えてもGOサインが出せるように、来年は新制度ができるそうだ。これでは何でもありである。
古くなるほど配管が薄くなる、コンクリート構造物の強度が低下するなど、劣化は避けられない。原発は劣化したからと簡単に交換できるものではない。
さらに、この地震大国で原発稼働は危険極まりない。
東電福島第一原発事故から、当事国である日本はしっかり学ぶべきである。そして二度とあのような事故を繰り返さないために、全力を尽くさなければならない。しかし、残念ながら、政府がやろうとしていることはかけ離れている。
東電は福島第一原発2号機から0.7gのデブリを取り出し、11月12日、日本原子力工学研究所(茨城県大洗町)に輸送した。今後1年かけて分析して、デブリ取り出しの工法検討に活用するとしている。
超高線量のデブリを取り出してどうするのか。全部で880トンのデブリである。ようやく取り出せたのが0.7g。気の遠くなるような作業だ。取り出したとしてもその保管はどうするのか。環境中に放射性物質を拡散して、被害をますます大きくするだけである。廃炉の道筋はデブリを取り出さずに、原発全体を覆う以外にないと、良心的な科学者は事故当初より指摘している。依然として原発利権にしがみつく御用学者に従えば、国を滅ぼし、地球規模の環境破壊を引き起こすことになりかねない。
東電福島第一事故で、原子力は人間の力で制御できないことを、いやというほど見せつけられた。子や孫の世代に生きていける自然環境を残すためには、原発から撤退し、持続可能な自然エネルギーへと転換することである。 (沢)