日本新聞
第12回、311子ども甲状腺がん裁判 がんと被ばくの因果関係は明らか
4600号1面記事
311子ども甲状腺がん裁判
第12回口頭弁論
がんと被ばくの因果関係は明らか
勇気を持って裁判を闘っている原告の青年達をこれ以上、傷つけるのは許されない。
東電は原発事故の犠牲によるがんだと早急に認めよ
12月11日、東京地裁で「311子ども甲状腺がん裁判」第12回口頭弁論が行われた。
傍聴のためにたくさんの方々がかけつけた。89席の傍聴席の傍聴券に189名が並んだ。「これだけ多くの人がこの裁判を注目している、裁判官は真剣に審議し、判決を出してほしい」という思いが伝わってくる。東京周辺からだけではない。福島からも青森からも九州からも、全国からかけつけているのである。
この日は東電福島原発事故から13年8か月である。事故当時、生まれた赤ん坊が中学1年生か2年生になっている。実に長い年月が経過している。にもかかわらず、事故はいまだに収束せず、健康被害も拡大している。
裁判所前の集会では、福島で被ばくのことを口にすれば“風評加害”だと被害者が逆に攻撃される実際が報告された。絶対に間違っているが、これが現実だ。その中で、バッシングを覚悟しながら裁判を起こした6人の青年達は宝であり、守っていかなければならないと痛感する。
「あじさいの会」共同代表の千葉親子さんから「本日、原告の意見陳述の予定だったが、できなくなった。裁判所は何故、本人の声を聞かないのか。重い気持ちになった。石破政権は原発回帰に動いている。しかし、裁判を闘う青年達は、原発回帰の波を押し返してくれていると思う。これからも一生懸命に応援していきましょう」と訴えた。
郡山から避難している松元徳子さんは「この裁判は必ず勝ち抜かなければならない。福島第一のような事故を起こせば、必ず私たちのような避難者が出る。甲状腺がんだけではなく、病気で苦しむ子ども達が必ず出ます。やはり国を動かさなければならないし、東電は許されない。汚染水を処理したと海洋に流すことは許してはいけない」と訴えた。
井戸弁護団長からは「前回我々は10本以上の準備書面を出した。今日は被告側がそれに答える期日です。結果としては反論の書面はほとんど出てこなかった。
こちらの主張の大きな柱は、ひとつは甲状腺がんになった子ども達の病理です。大部分の子ども達にリンパ節転移がある。一部には遠隔転移まである。どうして潜在がんだと言えるのか。それに対してどう反論してくるのか注目していたが、反論は出ていない。
二つ目は、被ばく量。黒川先生に詳細に指摘していただいて、UNSCEARが言ってるような少ない被ばく量ではない。5通の意見書を出した。それに対してどう反論してくるかが注目ポイントであった。これについての反論もない。次回までには反論を出し尽くすと言っているので、次回に注目してください」と説明された。
「県民健康調査」のいい加減さ、100ミリ閾値論の偽り
今回の裁判では、福島「健康調査」のいい加減さが明らかになった。線量が多かった地域ほど甲状腺がん患者の割合が多い、これは実際である。検討委員会でも「甲状腺がんの原因は原発事故だ」という委員も数人いたが、その意見は取り上げられず、あろうことか“健康被害は生じていない”と報告されたのである。
また被告・東電は「100mSvを下回る被ばく線量では発がんリスクの増加は確認されていない」と主張したが、これは明らかに間違っている。
報告集会で、初めて裁判を傍聴したという立教大学の大学院生の斉藤さんは、「8月に勉強会に参加し、母も被ばくの問題に関心があったということもあり、参加した。健康被害を被害者が語れない状況、語れば自己被害にされるのはひどい。全国各地から来ている支援している皆さんに学びたい。たくさんの方が集まって、裁判所に圧力をかけられた。傍聴して、原告の側は科学的な根拠に基づいて、理性的に述べていると思った」と感想を述べていた。
若者がその感性で、何が真実か見抜いていくのが頼もしいと感じた。
次回13回口頭弁論期日は来年3月5日(水)です。一人でも多くかけつけて、正しい判決を求めましょう。 (沢)