日本新聞
農家を守らない農政は国を滅ぼす
4597号1面記事
農家を守らない農政は国を滅ぼす
高齢化、担い手不足、耕作放棄地増加、これらは農家の責任ではなく、政治の愚策が招いたもの。政府
は軍事でなく食料政策を最優先に
日本の農業について真剣に考えなければならない。
まず農家の平均年齢が68.4歳という実際がある。そして農家の減少。農業を生業としている農家数は、
2015年175万7000人
2020年136万3000人
2021年130万2000人
と、年々減り続けている。新規就農者数も減っている。
原因は政府の愚策に他ならない。
稲作農家に対しては、
・米が余っているからと減反を強制
・水田を畑にしたら1回限りの補助金で田んぼ潰し
・農家に赤字補てん無し
・小売り・流通業界による買 いたたき
この結果、稲作農家の離農が相次いだ。新規就農者は、農地確保、農具・農業用機械調達、収穫するまでは無収入などの問題があるのに、それを支える具体策は何も講じない。
日本の農家は自給できるだけの米を作れるのに、米まで輸入する農政に未来はない。この夏に起きたコメ不足は、これからも起こり得ることなのである。米を作る農家が激減しているのだから。
今、牛乳もバターも不足しているという。酪農家に対しても、稲作農家に対するのと同様の悪政ぶりだ。
酪農家に減産を要請し、乳牛処分に一時金支給で乳牛を減らし、酪農家の赤字補てんは無し、脱脂粉乳在庫減らしのために酪農家に巨額の負担金と、農家いじめとしか思えないひどい政策だ。この結果、多くの酪農家が廃業に追い込まれた。
国は、そこに住む人々の食を保障しなければならない。そのためには農家を保障しなければならない。日本の農政にはそれが全く見られない。
2022年の自然災害による農林水産関係の被害額は2401億円、これは国や自治体が支援すべきものである。日本の農家の所得に対する税金の割合は3割程度。フランスやスイスはほぼ100%が国の補助だという。
耕作放棄地の問題もある。農家が代々、生業として農業を続けられない状況は、耕作放棄地を増やしている。1990年から2015年までに耕作放棄地は2倍の42万3000haに増えている。耕作放棄地は農地の1.8倍の固定資産税となるため、農地を手放した人も多い。だから実際の耕作放棄地ははるかに多いのである。
「世界で一番先に餓 死するのは日本人」 と言われている実際
日本の食料自給率はカロリーベースで38%と低い。しかし鈴木宣弘・東大教授は「実際はもっと低い」と言っている。
餌の穀物の自給は2割、肥料の原料は100%輸入、そうなれば自給率は実質22%まで下がってしまう。野菜の自給率は8割だというが、種は海外に9割も依存している。種が止まると8%しか野菜を作れない。鶏卵は97%自給というが、餌のトウモロコシはほぼ100%輸入、ひなも輸入。輸入が止まると9.2%の自給にすぎない。
自給率がたったの38%なのに、日本は農林水産物・食品の輸出を推進している。2022年には前年にくらべて14.3%輸出を増加し、過去最高の1兆4148億円。政府は、“2025年までに2兆円、2030年までに5兆円”と目標を挙げている。
つまり、私たちの食を保障することには労力を使わず、農産物のブランド化に力を入れているのだ。これでは、農業を守ることにも、食を守ることにもならない。
また、食料不足の緊急時には、「芋を増産しろ」と命令を出す「食料供給困難事態法」を制定した。これは無理な話だ。普段から農家が作物を作れるように保障し、自給率を上げることが必須である。
持続可能な農業を確立していくことが不可欠である。農薬や化学肥料に頼らない持続可能な農業。規格外野菜などとレッテルを張らずに、農家が作ったものが無駄にならないような消費システムの構築。農産物の価格を農家が決められるようにする、学校給食に有機の安心安全な食材を使う等々。やるべきことは多い。日本の農業の再生、日本に住む人々の食を保障する政策へと変えていかなければならない。 (沢)