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2024.12.11

日本新聞

消費者に安全な食品がわかる表示を

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4599号1面記事
消費者に安全な食品がわかる表示を

遺伝子を操作するゲノム編集は表示不必要、「無農薬」「遺伝子組換えでない」を表示も禁止。現行の企業優先の食品表示は抜本的改正を

 食品表示はとても大切である。安全なものを食べたい、子どもに食べさせたいと思っても、表示がきちんとしていなければ、消費者は選びようがない。
 残念ながら、日本の食品表示が正しくされているとは言い難い。それどころか、誰を守るための表示なのかと言いたくなる状況がある。
たとえばパンなどの表示で、小麦粉は「国内製造」。これは一体何?と考えさせられる。サラッと見ると、「国内ならいいか」と思わされる。しかし「国産」とは書かれていない。小麦粉「国産」なら、国内産の小麦を国内で製粉したもので、「国内製造」は国内で小麦から小麦粉にしたというだけで、国内産の小麦かどうかは書いていない、ということになる。
ひどいごまかしだ。国内産だとはどこにも書いていない、そう思った消費者が悪い、というやり方だ。

 食品表示の問題点

 日本ではゲノム編集食品の表示はいらないことになっている。遺伝子組換えは、遺伝子のすきまに別な種の遺伝子を付け加えるやり方。たとえば、トウモロコシに害虫に強くなる遺伝子を付け加えると、害虫に強いトウモロコシができる。そのトウモロコシを食べると虫が死ぬ。では人間には影響がないのか、という問題がある。除草剤の影響を受けない大豆なども遺伝子組換えだ。
 日本の食品表示では、遺伝子組み換え作物を使った加工品については、表示義務はない。表示義務があるのは、原材料の上位3位までのもの、5%以上のものに限る。それ以外は表示しなくていいことになっている。日本の食用油にはほとんど、遺伝子組換え菜種が使われているのに表示はない。
 そして、ゲノム編集食品については、最初から“表示しなくていい”だった。理由は遺伝子をカットしているだけで、組み換えていないから。たとえばサバは攻撃性の強い特徴があるから、お互いに攻撃しあって、数が減ってしまう。それを防ぐために、攻撃性の遺伝子をカットし、数を確保する。また、サケの食欲抑制遺伝子をカットし、巨大なサケを作っている。明らかに遺伝子操作である。カットする部分を誤ってカットしてしまうという大変な問題も起きる。EUではゲノム編集も遺伝子組換えと同一視している。
 人間の健康にどのような影響を与えるのかを研究するのではなく、どうやったら儲かるかに焦点が当てられている。調味料や子どものおやつに遺伝子組み換えの食品が使われているのに、表示されていない。
 さらにひどいことに、「無農薬」表示が禁止されている。理由は「風に乗ってくる農薬は防げないから、完全に無農薬などと言えないから、消費者が混乱する」と言うのである。無農薬の表示がないから、農薬や化学肥料を何回もかけたものも、農薬や化学肥料を使わないで栽培しているものも区別がつかない。
 また、「遺伝子組換えでない」という表示もできなくされた。分別生産流通管理をしているか、第三者分析機関などによる分析など、遺伝子組換え農産物の混入がないことを確認できる方法がなければ、「遺伝子組換えでない」と表示できないのだ。家族経営の農家がこのようなことができるわけがない。安全な食品だと表示することにだけ、厳しい規制をかけている。その結果、消費者は何が安全なのか、何が遺伝子組み換えなのか、見分ける権利も奪われている。実に理不尽である。
 正しい情報を知り、安全なものを選ぶ権利は全く当然の権利である。消費者と生産者の顔の見える関係が大切だ。同時に実際を知ることができるように、食品表示の抜本的な改正を求める。        (沢)