日本新聞
軍備増強は抑止ではなく戦争への道
4606号1面記事
軍備増強は抑止ではなく戦争への道
日米軍事同盟強化は自衛隊が米軍の指揮下で動くこと。戦争抑止は平和外交でこそ実現できる。軍事に金をかけず貧困層の支援第一に
1月21日、米ワシントンで日米豪印4か国の戦略対話(QUAD)外相会合が開かれた。トランプ米大統領就任後初の会合だ。QUADは中国に対抗するためのもので、「力または威圧により現状変更を試みるいかなる一方的な行動にも強く反対する」という。では日米豪印で軍事同盟を組み、中国に対抗し、合同軍事演習を繰り返すのはどうなのか。「力または威圧」に当たらないのか、はなはだ疑問だ。
岩屋・外相は米国務長官と会談し、「新たな高みに日米同盟を引き上げることで一致した」と発表した。新たな高みとは一体どのようなことなのか。
翌2日、中谷・防衛相は沖縄県与那国町で糸数町長と会談した。中谷・防衛相は「敵のミサイル攻撃を受けた際に住民が避難するシェルターの整備、政府と自治体による共同訓練などに、最大限努力する」と語った。
与那国島は日本で最も中国に近い島である。与那国島の島民は歴史的にも平和を愛し、争いとは無縁に生きてきた。他国の国民とも平和的に友好を重ねてきた。「敵」とは一体どこのことか。
アメリカが喧伝する「台湾有事」を理由にして、アメリカの要請どおりに軍事費倍増を決めてしまった政府。南西諸島にはミサイル基地がどんどん造られ、ミサイル、弾薬が配備されている。そして「有事」の際には島の人たちはどこに逃げるのか、シェルター整備、避難訓練と、危機感を煽っている。
抑止力、実は戦争へと向かうもの
“戦争にならないようにするために”と、軍備増強が行われている。アメリカの安全保障専門家からは、「日本は防衛費をGDPの3%まで増やすべきだ」という主張が出ているという。日本はどこまでアメリカの要求に応えようとするのか。日本の経済はすでに破たん状況である。GDPに対する政府債務残高の比率は250%を超えているのだ。
世界の中で、30年以上労働者の賃金が上がっていない国は日本以外にない。数字上いくらか賃金が上がっていても、物価の上昇率を下回っているため、実質賃下げが続いている。
日本の大企業はバブル期を超える利益を上げ、内部留保金も過去最大を更新している中で、働く者は貧困にあえいでいる。給食以外にはろくにご飯を食べられず、冬休みや夏休みには給食がないため、ひもじい思をしている子ども達がいるのが、日本の現実なのである。
このような中、莫大な予算を、防衛省は湯水のように軍事費に費やしている。ミサイル研究開発、イージス・システム搭載艦建造、無人での攻撃能力推進、宇宙システム管理、防衛通信衛星打ち上げ、弾薬・火薬などの新設(全国12施設に57棟の火薬庫新設決定)等々、防衛ではなく、明らかに攻撃のための軍備増強である。
もはや南西諸島だけのことではない。日本全国に、米軍の戦略を遂行するための基地が造られている。米軍の戦略は、日本と中国を戦わせ、高見の見物ということだ。アメリカは経済的にももうすぐ中国に追い抜かれる、それを避けるために中国にダメージを与えたい。そのために自衛隊はじめ、日本の若者が危険にさらされるのである。
軍備増強してアメリカと歩調を合わせることは抑止力ではない。「有事」を引き起こすことである。南西諸島の島々の住民を命の危険にさらすことだ。
軍備増強ではなく平和外交で、アジアの平和・友好をかち取ることが、戦争を止める最良の道である。軍事に金をかけるのではなく、貧困に苦しんでいる日本に住む人々の救済に予算を使うべきである。野党はそのために全力を尽くす時である。 (沢)