日本新聞
福島第一原発 汚染水の空タンク解体開始、作業員被ばく
4609号1面記事
福島第一原発 汚染水の空タンク解体開始、作業員被ばく
タンク解体作業で30代作業員が内部被ばく。鹿児島では原発複合災害訓練実施。原発からの撤退、事故
炉遮へい、汚染水発生防ぐ対策を
2月14日、福島第一原発の汚染水タンク解体が開始された。
2023年8月から、事故炉から発生した汚染水の海洋投棄が実施された。ALPS処理水とは言っても、トリチウムは除かれていないし、他の放射性物質も取り除かれてはいない汚染水である。海洋投棄反対の漁業者はじめ多くの声を無視しての強行である。
福島第一原発事故炉からの汚染水保管タンクは1000基を超えている。これまで、10回、タンク78基分を投棄した。その空になったタンクのボルトを外したり、ガスバーナーで切断したりし、細かく切って、コンテナに入れて原発敷地内の北側に保管するという。
放射性物質は拡散しないのか、作業員の被ばくはどう防ぐのかと疑問が湧く。1日目の14日はタンクのフタを5つに分けて撤去する作業。作業後の検査で、30代の作業員が放射性物質に汚染され、内部被ばくが確認された。
事前に予測できたことだ。21基のタンクを解体するというが、作業員の被ばく対策をやれないなら、作業継続はできないことだ。
タンク解体開始と同じ14日、鹿児島では地震に伴って九州電力川内原発で重大事故が起きたという想定で、避難訓練を実施したという。国と鹿児島県、地元市町、九電など294機関、住民約4800人が参加しての大訓練。
しかし、重大事故の訓練を物々しくやるより、原発からの撤退を考えた方がいい。東電福島第一原発事故は世界を震撼させた大事故である。事故後、ドイツは原発ゼロを実現した。ところが事故に直面した当の日本は、あろうことか今、原発を「できる限り活用」と原発推進策に戻っている。今も事故処理の見通しさえ立っていないというのに。
科学は人類の発展のためにあるべきで、発展とは破壊ではなく生成でなければならない。将来の世代に、核汚染という解決不能の問題を負わせる原発は、果たして科学と呼べるのか。
市民科学者が重要な提言を示している。
「汚染水発生ゼロめざし、長期遮へい管理求める」原子力市民委員会
東電は、21基のタンクを解体した跡地に燃料デブリの一時保管施設を建設することを検討しているという。放射性物質を敷地内のあちこちに分散する、これは汚染を拡散することではないだろうか。総量8トンもある燃料デブリは現在0.7gを試験的に取り出して調べている段階。超高線量で気の遠くなるような工程であり、取り出しは不可能である。
原子力市民委員会はすでに昨年3月、国と東電に提言書を提出している。
1.福島第一原発の廃炉に関わる「中長期ロードマップ」の「汚染水対策」の目標に「汚染水発生量ゼロ」を加え、その達成時期を明記すること
2.「汚染水発生量ゼロ」実現のために、地下水流入を防ぐ原子炉建屋止水を最優先項目に位置付けること、及び建屋止水後の燃料デブリの冷却のために、循環注水冷却システムを現在の開ループ方式から閉ループ方式に変更すること
3.「燃料デブリ取り出し」は、現状では技術的に極めて困難なこと、また、住民と作業員の被ばくリスクが大きいことから、「取り出し規模の拡大」を凍結し、現在の位置で長期遮蔽管理すること
実に明確である。原発事故に対しては、「止める、冷やす、閉じ込める」が原則だと言われている。今、政府・東電が行っているのは、「閉じ込める」ではなく「拡散する」である。原子力市民委員会が提言しているように、汚染水をこれ以上増やさないことが大切だ。建屋への地下水流入を防がず、汚染水を増やし海洋投棄、これでは汚染被害を拡大する一方だ。こんなやり方では、作業員の被ばく、住民の被ばくも拡大する。
政府・東電は汚染水の海洋投棄を即、中止し、事故炉の長期遮へい措置へと方針を変更すべきである。 (沢)