News

お知らせ

2025.06.25

日本新聞

東海村村長が一転して東海第二原発再稼働容認

SHARE

4626号1面記事
東海村村長が一転して東海第二原発再稼働容認

運転開始から46年の老朽原発、22年~24年まで11件の火災。92万人が住む首都圏の原発再稼働は無謀。
政府は「原発最大限活用」方針撤回を

 10日、東海村の山田修村長が村議会で「再稼働は必要だ」と再稼働容認の立場を明らかにした。山田村長はこれまで、再稼働に対しては「中立」と言ってきたが、この日、一転して容認に転じた。
 東海村の前村長は、「脱原発をめざす首長会議」世話人の村上達也さんだ。村上さんが村長の時の副村長が、山田村長だ。村上さんは村長をやめる時に、山田さんに「心残りは東海第二を止めていないことだ」と言ったら、「信じてください」と言ったというのだ。今回の再稼働容認表明と真逆の言葉である。
 東海第二原発は運転開始から46年の老朽原発である。しかも、2022年~2024年の間に11件もの火災を起こしている。今年2月には、中央制御室の制御盤でも火災が発生している。非常に危険な原発である。更に東海第二原発30キロ圏内には92万人の人々が暮らす。事故が起きた時に、一体どうやって92万人もの人たちを避難させるのか。避難などできないのは火を見るより明らかだ。
 こうした実際から2021年3月、水戸地裁は住民の運転差止訴訟で、運転を認めない判決を下した。その状況が何も変わっていない中で、山田村長の再稼働容認は一体何が働いたものなのか。納得できるものではない。
 同じ10日、東京電力は柏崎刈羽原発6号機原子炉に核燃料を装てんする作業を開始した。昨年4月に7号機の原子炉に核燃料を装てんした時同様、地元の同意なしの暴挙である。再稼働について、地元の同意を得ることなしにできることはない。
 東電は福島第一原発事故という過酷な事故を起こし、福島の人々から故郷を奪い、生業を奪い、命さえも奪った。福島第一原発事故の収束の目途も立っていない中で、福島第一原発と同じ沸騰水型の原発を再稼働するというのだ。安全よりも利益第一の東電の体質は、あれだけの大事故を起こしても何も変わっていない。

 東京高裁が東電旧経営陣の賠償取り消しの不当判決

 「東電の旧経営陣が津波対策を怠り東電に巨額の損失が生じた」として、株主が旧経営陣に23兆円超を東電に賠償するよう求めた株主代表訴訟の控訴審判決が、東京高裁で6日行われ、13兆3210億円の支払いを命じた一審東京地裁判決を取り消し、株主側の請求を棄却した。全くの不当判決である。
 取り消しの理由は、「巨大津波は予見できなかった」。2002年の政府の地震調査研究推進本部の「長期評価」をもとに、2008年には東電内部で最大15.7メートルの津波が来ると試算していた。もちろん旧経営陣にも報告していた。武藤元副社長は「社員の報告内容に切迫感はなかった」と、下部の者に責任転嫁しようとしている。報告された時点で対策を講じていれば事故は防がれたのである。安全第一ではなく、いかに経費をかけないかを第一にした結果、大事故を引き起こしたのである。旧経営陣の責任は明白だ。しかし、裁判所はそれを裁こうとはしない。
 今も事故は収束していない。家族の長年の思い出の詰まった大切な家を解体しなければならない原発周辺の人々の思いを、国、東電、裁判所は何も理解しようとしない。被ばくと隣り合わせの現実を見ないようにして暮らす被害者がどんな思いでいるか、考えることもないのだろう。
 原発事故から14年、汚染水の問題、デブリ取り出しの問題など、何も解決していない。廃炉の見通しも立たない中、現場では毎日4000人を超える作業員が被ばく作業に従事している。
 政府は「原発最大限活用」の方針から原発からの撤退へと大きく舵を取る時である。 (沢)