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2025.07.30

日本新聞

政府、日米関税交渉で国益売渡し奴隷外交

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4632号1面記事
政府、日米関税交渉で国益売渡し奴隷外交

自動車大手守るための15%の関税と引き換えに、対米投資最大80兆円、
米国産米・農産物大幅輸入増、防衛装備品数兆円購入。交渉でなく売国

 米トランプ政権が世界各国に高関税をかけると脅し、交渉を迫っていたが、日米関税交渉の結果が発表された。日本政府の発表では具体的なことがあいまいにされていたが、米側の発表で全貌が明らかにされた。
 とても交渉と言えるものではない。石破首相は「同盟国であっても言うべきことは言わなければならない」「食の安全は譲らない」「時間がかかっても妥結しない」などと発言してきたが、果たして何を言って何を守ったというのか。
 関税率が15%になった、果たしてこれを“成果”と呼べるのか。

・対米投資80兆円
・米国産米輸入を即時75%増加
・トウモロコシ、大豆、肥料、バイオエタノールなど米国産品を約1兆3000億円購入
・ボーイング機100機購入
・防衛装備品年間数千億円規模で追加購入
・米国産車、トラックの規制撤廃、米国の自動車企画承認

 守ったのは自動車大手の利益だろう。そのために80兆円もの莫大な金を米国に投資するというのだ。日本の経済は低迷し、食うや食わずの人が増えているのに、80兆円も投資し、しかも利益の90%は米国のものだというのだ。
 日本はミニマムアクセス米を義務だと曲解し、毎年77万トンを輸入している。このうち米国産米は34万6000トンであったものを、75%増で約60万トンに増やす。ミニマムアクセス米の範囲内だから影響はないと言うが、今後更に増える可能性もある。
 米国産農産物の輸入拡大で「食の安全」は守られるのか。米国内で使われない除草剤や農薬が日本向けにはどんどん使われている。
 そしてボーイング機100機購入。ボーイング機は2018年にインドネシアで、2019年にエチオピアで墜落事故を起こし、併せて346人が死亡した。今年5月23日、米司法省はボーイング社を不起訴とする内容の合意を交わしたと発表。刑事責任を問わない方針に転換し、遺族から反発が起きている。世界中でボーイング機のトラブルは頻発している。それを新たに100機も購入するというのだ。

 日本奴隷外交と対照的な中国の姿勢

 中国の姿勢は日本と全く違う。アメリカは当初、中国に145%の追加関税をかけるとした。これに対して中国は125%の追加関税で応じた。
 中国に高関税をかけることは、実際はアメリカの経済に大打撃となる。失業者は増え、物価高騰で米国民の生活は苦しくなる。そこでアメリカは中国への追加関税の引き下げを示唆し、中国に交渉を呼びかけた。共同声明で米国は追加関税を撤廃し、当初の34%に戻すとした。中国は世界各国に対するアメリカの関税攻撃を批判し、「機嫌取りで平和はもたらされず、妥協で尊敬を得ることもない」と訴えている。
 中国は高関税を課そうとするアメリカに対して、今年1月中旬から、米国産の大豆やトウモロコシの買い付けを停止した。国内生産やブラジルなどからの調達を増やしている。BRICSの連携強化も、アメリカの理不尽に対抗する力として発展している。
 今回、日本が米国産の大豆やトウモロコシを1兆2000億円分も輸入することになった背景に、中国の輸入停止がある。アメリカの言う通りに機嫌取りに励んでいるわけだ。ベッセント米財務長官は「日本が合意内容を守っているか四半期ごとに検証する。トランプ氏が不満を持てば、関税は25%に戻る」と言っている。次は軍事費GDP比5%まで引き上げ、駐留米軍の経費負担増と、どこまでも要求されることは目に見えている。
 奴隷外交、売国政治に未来はない。米国にすり寄るのではなく、平和のための国際連帯に参加することが日本の活路である。             (沢)