日本新聞
武力でなく農業再生が日本の活路
4635号1面記事
武力でなく農業再生が日本の活路
「食料自給できない国は奴隷」これがアメリカに奴隷外交の日本の本質。農業を守らずに国は守れない。政府は警鐘を受け止め農政改革を
小泉進次郎農相が韓国の米農家を訪れ、米作りの実情を視察したという。韓国の米農家から話を聞くのもいいが、日本の米農家から話を聞くべきではないだろうか。
「令和の米騒動」と騒がれ、米の価格の急騰、スーパーの売り場から米が姿を消す。この事態に小泉農相は備蓄米を放出し、輸入を急いだ。急場を凌いだかのように宣伝されたが、実は何も解決していない。それどころか農家はますます窮地に追い込まれた。農家の実情もわからないのだから、日本の農家の窮状にこそ、耳を傾けるべきだ。米作りのノウハウは日本の農家は十分知っている。「令和の米騒動」の原因は、減反を強いられ、資材高騰などで悲鳴を上げている状況でも救済策も受けられない現状、つまり悪政こそが原因なのである。
郵政民営化の手口同様の農協解体
根本原因を隠して悪者にされたのは、米卸業界や農協である。コメ卸業者が儲けている、農協が米の流通を独占している、などという論だ。小泉農相は備蓄米を扱う業者を、農協ではなく特定の大手業者を優遇した。
実際は米卸業界の営業利益は非常に少ないのである。
小泉農相は、自民党の農林部会長時代、農協解体を提唱し、それが頓挫した。今また、農協を悪者にして解体しようとしている。
ねらいは、農林中央金庫の貯金100兆円と全共連の共済の55兆円の運用資金を外資に回すことである。そして、日本の農産物流通の要の全農をグローバル穀物商社に差し出すことだ。
かつて小泉純一郎首相が強行した郵政民営化とうり二つである。郵貯と簡保合わせて350兆円もの運用資金を、民営化で外資企業の手中にするというものだ。親子でアメリカなどの外資に巨額の資金を融通するというのだ。これは看過できないことである。
農家を守る抜本的な農業改革を
「令和の百姓一揆」代表の菅野芳秀さんは「1947年の農地改革によって475万人の自作農が誕生した。今は、70万人を切ろうとしている。約400万人が百姓をやめた。米農家の平均年齢は70歳を超えている。食糧生産が追い込まれている。有史以来の一大危機だ」と警鐘を鳴らしている。
キューバの著作家であり革命家でもあるホセ・マルティは、「食料を自給できない人たちは奴隷である」と語った。日本はまさにそうである。戦争直後、日本の食料自給率は88%だった。それがアメリカの余剰農産物を買わされ、現在の食料自給率はわずか38%である。アメリカの意のまま、関税問題しかり、軍備増強しかりである。
“日本の農家は過保護だ”という宣伝が行われている。これは全くのデマだ。日本の農家の所得に占める補助金の割合は3割、それさえ受けていない農家もいる。ところがフランスは90%以上、スイスは100%が補助金で保障されている。命を守り、環境を守り、地域コミュニティを守っているのが農家、その農家をみんなで支える、そういう考えのもとに行われている政策である。
日本はそこが実に弱い。「自給率を上げる必要はない。アメリカから輸入すればいい」という論がふりまかれた。輸入した方が商社が儲かるからだ。日本の農民はこうして踏みつけられてきた。農民の苦境は今、日本の危機として具現化されている。輸入に頼る食は安全性も安定性もない。農薬まみれ、遺伝子組換え、輸入先の政情不安、災害などでいつ輸入がストップするかわからない。
日本の農家の生活を補償し、日本の農業の再生を図る政策へと変えていかなくてはならない。それが日本を守る活路である。 (沢)