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2025.08.27

日本新聞

原発再稼働に前のめりの政策に歯止めを

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4636号1面記事
原発再稼働に前のめりの政策に歯止めを

福島第一原発の汚染水海洋投棄開始から2年。漁業者の努力を踏みにじる暴挙。政府が掲げる「安全確
保前提の再稼働」などあり得ない

 8月24日、東電福島第一原発の事故炉の核燃料に触れた汚染水の海洋投棄開始から2年が経過した。汚染水の海洋投棄は「関係者の了解なしには行わない」という約束を反故にして、政府と東電は抗議の声を無視して強行した。
 福島の漁民たちは事故後、漁ができなくさせられた。福島の安全でおいしい海産物を届けたいと必死の努力を続けてきたのに、今度は汚染水で海を汚すというのだから、その落胆、怒りは計り知れない。それでも諦めず、線量を測り続けながら漁を続けてきた。福島の魚だからというだけで、値を下げられながらも、誇りを失わずに、海を守ろうとしている。
 政府はこうした被害者に寄り添う政策をおこなうべきだ。

 安全な原発などない。 政府は原発からの撤退を

 現在までに再稼働済みの原発(定期検査で停止中含む)は14基。政府のエネルギー政策では原発を最大限活用と位置付けているが、実際には再稼働も思うように進まない状況だ。
 福島第一原発事故は、世界でも最も過酷なレベルの事故で、地球規模の環境汚染を引き起こした。それは今も解決せず、現場では毎日約4500人もの作業員が被ばく作業を余儀なくされている。
 このような中、政府がやっていることは原発をやめるのではなく、原発に依存するエネルギー政策を進めようとしている。
 事故が起きた2011年には原発回帰などおくびにも出さなかった。ところが安倍政権の2014年、事故からわずか3年で、“原発を重要なベースロード電源”とするエネルギー政策が出された。そして2023年岸田政権は、GX(グリーントランスフォーメーション)なるもので、“原発を最大限活用”と掲げた。それだけではない。次世代革新炉の開発・建設、廃炉原発敷地内での次世代炉への建て替えも明記した。更に、運転期間を延長できるように、停止期間を運転期間から除外する法律まで決めてしまったのである。
 一体、福島第一原発事故から何を学んだのか。被害者や全国の市民は、原発が事故を起こせば、人間がコントロールできるものではないことを学んだ。だから、原発の新規建設や再稼働には反対する。それを見越して政府は、原発の新設は難しい、だから今ある原発を再稼働しよう、となった。しかし、日本の原発は老朽原発が多い。だから原発の寿命を40年というのを変えなくてはならないと、認可されれば40年以上運転できるとした。更にGXで言っているのは、運転を停止していた期間を運転期間に加えないというもの。これは成り立たない。運転していなくても、経年劣化は進む。原発の配管などの機器は停止している間も確実に劣化し、傷んでいる。それを運転期間からはずすというのは、安全の視点など全くないことを示している。
 政府は「安全確保を大前提にして再稼働」と言っているが、大嘘である。
 これから再稼働させようとしている原発に柏崎刈羽原発がある。福島第一原発と同じ沸騰水型の原発であり、しかも東電の原発である。何としても再稼働の目論見をストップさせなければならない。
 そして大間原発も2030年をめどに稼働させる可能性を示している。大間原発はすべての原子炉が、ウランとプルトニウムの混合燃料を使ったフルモックス原発である。世界でも例のないものであり、どのような危険が起きるか予測もできない。運転は断念すべきだ。
 島根原発も2030年に再稼働の可能性のある原発としているが、一旦事故が起きれば偏西風で放射性物質が日本全体に広がる危険な原発である。
 「安全確保できる」原発など存在しない。政府は再稼働を断念し、原発からの撤退へと舵を切ることが唯一の安全確保なのである。     (沢)