日本新聞
食料自給率38%では命を守れない
4644号1面記事
食料自給率38%では命を守れない
政府は自給率を上げ、安全な食を保障しなければならない。農薬まみれの作物、添加物満載の食品輸入に依存している現状から脱却を
2024年度の食料自給率は38%と発表されている。たったの38%である。世界各国の食料自給率は、
オーストラリア 247%
カナダ 177%
フランス 118%
アメリカ 101%
ドイツ 79%
となっている。日本の38%は余りにも低く、大問題である。
日本の食料自給率が低い理由を政府は「コメと野菜が中心の食生活から、パンと肉が中心の食生活に変わったから」と説明している。日本人の食生活がまるで自然に変わったかのように言っているが、それは全く違う。
戦争に負けて、日本はアメリカの余った小麦、大豆、トウモロコシの市場にされた。自然に米飯からパン食になったのではなく、アメリカの小麦を大量に輸入させられたからである。食で支配され、食生活を変えさせられたのである。アメリカから大量の小麦や大豆、牛乳や肉を大量に輸入させるためである。
そのために学校給食が使われた。次代を担う子ども達の食を米飯からパンに変えたのだ。
自給率38%では、もし輸入相手国(小麦ならアメリカ、カナダ、オーストラリア)が何らかの理由で(災害など)、日本向けの輸出ができないとなったらどうなるか。私たちはたちまち食べるものがなく、餓死の危険に直面するのだ。
政府は何十年も前から“食料自給率を45%にする”と目標に掲げながら、何の具体策もなく、輸入を続けている。それどころか、関税交渉では、アメリカの言うがままに、アメリカからの米の輸入拡大、農産物の輸入拡大を約束させられている。
農家を守ることが国を守ること
今、世界的にも日本食が見直されている。小麦より米の方が体にいいと言われている。パンもケーキも米で作れる。子ども達のおやつだって米で作れるし、食料油、畜産の飼料だって米に代えられる。海外への援助だって米でできる。1年分くらいの備蓄米を持つことも必要だ。
こう考えると、米が余るということはない。
日本の農家が米を作り続けられるように保障する、これが一番の国を守ることである。ところがありもしない「過保護農政」が宣伝され、食管制度(国が米や麦などの主要穀物を農家から買い取り、消費者に安く売る)も廃止されてしまった。それ以来、日本の農家は国からの補助もない中、食料を供給するのが責務だと頑張り続けてきたのだ。
60キロの米を作るのに1万5000円の経費がかかる。しかし近年では米価は1万円を切ったことさえある。昨年から米価が上がったとはいえ、30年前に戻ったに過ぎない。農家に生産費に見合った米価はもちろん、生きていける米価を国が保障しなければならない。そうすれば買う側も、米が高くて買えないという状況は解消できる。国が具体策を講じなければ、農家は廃業し、農村もなくなってしまう。
外国からの農薬たっぷりの野菜や果物が安全な食と言えるか。政府は残留農薬(栽培過程で使用した農薬が収穫後も残っている濃度)基準を緩和している。世界の動きと逆行している。アメリカ国内ではオーガニックが広まり、遺伝子組換えや農薬を使って栽培したものは売れないので、基準の緩い日本向けの農産物を作っている。
残留農薬基準緩和に加えて、日本では「無農薬」表示は禁止され、「遺伝子組換えでない」表示は「分別生産主流管理済み」に変えられ、全く意味が分からなくされている。
農薬を使わないで安全安心な食品を届けようとしている農家の努力も、安全なものを選びたいという消費者の意思をも踏みにじる政策である。
食を守ってこそ、他国に支配されない独立国と言える。 (沢)