日本新聞
高市首相「存立危機事態」発言に中国抗議
4649号1面
高市首相「存立危機事態」発言に中国抗議
「台湾有事」の際の武力行使を明言。「台湾は中国の一部」と明記した日
中共同声明に反し、戦争に向かう暴言。高市首相は発言撤回と退陣を
高市首相の「存立危機事態」発言に対して10日、中国政府は「強烈な不満」を表明した。中国外務省の毛報道局長は高市首相の発言が「戦後の国際秩序を著しく破壊し、中日関係の基礎を根本的に傷つけ、中国国民の憤怒を招いた」と非難した。
1972年、日本と中国は国交正常化を実現した。その時発表した日中共同声明で、日本が「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府である」ことを承認している。また、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」ことが明記され、日本はこれを「十分理解し、尊重する」と記されている。
高市首相の発言はこの日中共同声明に明らかに反する。だから中国側は抗議したのである。台湾は中国の一部であり、日本が武力行使する何の根拠も存在しない。内政干渉に他ならない。
高市首相の発言は中国に対する敵対発言であり、大問題である。高市首相は「政府の立場は一貫している」と、発言撤回に応じない姿勢である。「一つの中国」が政府の立場であり、この論は破たんしている。
軍備増強、軍国主義に前のめりの高市政権
高市首相は首相就任以来わずか1カ月で、次々危険な政策を矢継ぎ早に打ち出している。
1、安保3文書の改定を2026年度中に前倒しで行う。軍事費のGDP(国内総生産)比2%目標を、2027年度から補正予算と合わせて今年度中に前倒しし、軍事費を増やす
2、敵基地攻撃能力を高めるために潜水艦VLS(長射程ミサイル発射システム)搭載の潜水艦の開発・保有に乗り出す
3、日本版CIAである「国家情報局」を作り、スパイ防止法を制定する。権力者が意に沿わない人や政府に批判的な人を力でねじ伏せる弾圧装置
4、「防衛装備品移転三原則」で輸出は「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型に限定されていたのを廃止して、殺傷能力のある兵器の輸出ができるよう検討
どれをとっても、日本の軍国主義化に向かってまっしぐらの危険なものばかりである。
高市政権誕生で警戒しているのは中国だけではない。かつての日本の侵略戦争で多大な被害を受け、多くの犠牲を強いられたアジアの国々は皆、強い懸念を抱いていることだろう。戦後80年、日本政府はいまだに侵略戦争の加害、植民地支配に対して正式な謝罪も補償もしていない。それどころか、加害の事実すら認めず、「アジア解放戦争だった」とうそぶいている。
安倍政権は「解釈改憲」、閣議で集団的自衛権の行使を認めた。そして2015年、安保法制制定強行で集団的自衛権を合法化させてしまった。連日国会を包囲して「安保法制制定反対!」を訴えた市民の声を全く無視しての暴挙であった。高市首相は安倍首相の後継を自認している。
日本に住む人々の生活が困窮している今、軍事費をどんどん引き上げ、政府に反対する者を弾圧する法整備を行い、殺傷兵器の輸出で軍需産業を潤わせる。若者を戦場に向かわせるこの危険な政治に歯止めをかけなくてはならない。
中国は日本への渡航自粛、留学再検討を呼びかけ、日本産海産物の輸入手続きを停止した。渡航自粛だけで日本の経済損失は1兆7900億円にのぼると見られている。レアアースの日本への輸出が止められれば、打撃は余りにも大きい。
日本の加害の史実を認め、二度と戦争しないと明記した憲法9条を守り、アジアの国々と友好・連帯を築いていくことが日本の進むべき道である。高市首相は発言を撤回し、退陣すべきである。 (沢)