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2026.02.18

日本新聞

えん罪被害者救済にならない 法制審 再審制度 見直し答申

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4661号1面記事

えん罪被害者救済にならない法制審 再審制度見直し答申

全面的証拠開示・検察官の不服申し立て禁止認めず現状より後退の内容。超党派の議員連盟による再審法改正案の再提出、成立を求む

 法制審議会は2月12日の総会で、「刑事再審手続に関する要綱(骨子)を、反対4棄権1を含む多数決で採択し、法務大臣に答申した。2日の再審法改正部会でも反対3を含む多数決で採択を強行したものであった。つまり、問題大ありの答申なのである。

 改正ではなく改悪

 再審法はこれまで75年も何も見直されてこなかった。しかし、死刑囚の袴田巖さんが再審無罪となったことで、再審法の問題点がクローズアップされた。
 袴田さんは冤罪を晴らすまで、実に58年もかかっている。袴田さんは犯行を否認し続け、刑務所への差し入れに法律書を要求し、「俺は無実なんだから必ず無罪になる」と法律を勉強していた。しかし死刑確定以来、毎朝、自分の房の前で足音が止まらないか(止まったら死刑執行の日だから)、死の恐怖に怯えながらの日々を送った。そのため拘禁症を患い、無罪をかち取った今も袴田さんの日常は戻っていない。
 袴田さんの姉のひで子さんは弟のえん罪を晴らすために闘い続けた。しかし再審請求をして裁判所が再審を決定しても、検察が不服申し立てをして再審が取り消される。高齢の袴田さんの人生は限られている。検察の不服申し立てで、いたずらに時間が費やされたことは許されることではない。
 再審法が冤罪を晴らすためのものならば、検察官の不服申し立ては禁止されなければならない。
 そして全ての証拠が開示されなければならない。
 この2点は改正法に明記されなければならない。ところが、法制審の再審法見直し答申では、検察官の不服申し立ての禁止がない。これではこれまでと同様、冤罪被害者は再審開始まで気の遠くなるような時間を費やし、再審にこぎつける前に亡くなってしまう無念なことが起きる。狭山事件の石川一雄さんは不当逮捕から62年の昨年3月11日、第3次再審請求中に無念にも亡くなった。このようなことがないように、再審法見直しに、裁判所によるじん速な再審決定、検察官の不服申し立て禁止は不可欠である。
 そして証拠開示の問題である。法制審の答申では
「再審の請求の理由に関連すると認められる証拠」とし、相当と認めるものに限定している。これでは、弁護人が関連性、必要性、弊害性を具体的に主張しない限り、証拠開示が認められないことが起こり得る。そして、裁判所が証拠の提出を命じない限り、再審請求人と弁護人は直接、証拠を見られないことになる。証拠は原則開示されるべきで、これでは検察による証拠ねつ造を許すことになりかねない。
 また、答申は開示された証拠の「目的外使用」を罰則付きで禁止している。再審請求人が違反すれば1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される。例えば袴田事件の「5点の衣類」(検察がねつ造)のカラー写真も使えなくなる。これについて新聞協会は「国民の知る権利にこたえられない」と反対の見解を示している。
 法制審の再審法見直し答申は冤罪被害者の救済のためのものではなく、更なる被害者を生み出す改悪そのものである。
 法制審の「見直し答申」に、袴田ひで子さんが「こんな法律だったら今までと一緒だ。こんなことがいつまでも続いていいのか」と憤りを示した。この言葉は実に重い。
 「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が国会に提出した「議連法案」には、すべての証拠開示、検察による不服申し立ての禁止が明記されている。1月の衆院解散で廃案になったが、これを早急に再提出し、成立させるように求める。  (沢)