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2024.07.31
日本新聞
原発建設費の電気料金上乗せに反対する
4580号1面記事
原発建設費の電気料金上乗せに反対する
現在稼働中の原発は9基、定期点検中3基。汚染水、デブリ処理など問題山積み。安全な原発などない。すべての原発廃炉以外に道はない
経済産業省は原発の建設費を電気料金に上乗せできるようにする制度の導入を検討しているという。東電福島第一原発事故では、政府は被害者よりも事故を起こした東電を支援している。とっくに倒産しているはずの東電が、政府の支援で黒字になって、被害者への支援は次々打ち切られている。
原発建設費を電気料金に上乗せ、これもまた電力会社の負担を減らし、利用者の負担を増やすという理不尽なやり方だ。決して認められるものではない。
岸田首相は6月21日、「安全が確認された原発を速やかに再稼働させる」と言ったが、果たして安全な原発などあるのだろうか。
知れば知るほど危険な原発
現在、日本全国で稼働している原発は9基。
関西電力
美浜原発3号機
大飯原発3号機
大飯原発4号機
高浜原発2号機
高浜原発3号機
高浜原発4号機
九州電力
玄海原発3号機
玄海原発4号機
川内原発2号機
定期点検中
高浜原発1号機
川内原発1号機
そして四国電力の伊方原発3号機である。
これらのうち、美浜3号機、高浜1、2号機、川内原発1号機は40年超えの老朽原発である。美浜3号機は2004年、熱水や蒸気噴出事故で11人が死傷。高浜1号機では蒸気漏れ、4号機では蒸気発生器の破損。
7月26日には、敦賀原発2号機について、原子力規制庁の審査チームが「原子炉建屋の真下に活断層があることが否定できない」とし、再稼働不許可の判断を示唆した。日本原電はこれまで「活断層ではない」と言っていた。これほどの安全無視、無責任極まりない日本原電が進めようとしている東海第二原発の再稼働を何としても阻止しなければならない。
7月18日、東北電力は女川原発2号機の再稼働を11月ごろに延期と発表した。再稼働延期は3回目である。
13年前に事故を起こした東電福島第一原発は、いまだに廃炉の見通しも立っていない。その中、汚染水の海洋投棄が強行され、7月16日、東電は通算7回目の海洋投棄を終え、約7850トンの投棄を発表した。投棄したトリチウム総量は約1兆3000億ベクレル。国際社会からも大きな批判が巻き起こっている。そして超高線量の溶け落ちた核燃料デブリは約880トンあり、それを早ければ8月から試験的に取り出しを始めるというのだ。そんな危険なものを取り出して、一体どこにどのようにして保管するのか。ロボットを遠隔操作して1回に数グラム取りだせるかどうかだというのだから、気の遠くなるような話である。取り出しなど不可能だ。
このように見てくると、岸田首相の言う「安全が確認された原発」など存在しないことがよくわかる。原発再稼働はエネルギー政策として、最も危険であり、原発からの撤退こそが緊急の課題である。
「安全」を語るなら、岸田首相は原発からの撤退を宣言し、再生可能な自然エネルギーへのシフトを急がなければならない。この小さな島国・地震頻発国の日本に54基もの原発を造ったのは、まさに大罪である。そして今また、老朽原発を次々再稼働させ、事故になったら「自然災害で避難できないのは関わりありません」などと言いのける。こうして、地球規模の環境破壊につながる取り返しのつかない大罪を重ねることを、看過することはできない。
良心的な科学者が原発の危険性を指摘している。そして、福島第一原発の事故炉の廃炉についても、具体的な実現可能な道筋をいくつか提示している。
政府は再稼働ではなく、そうした建設的な意見を吟味し、廃炉を進め、原発からの撤退方針を出すべきである。それが安全の唯一の選択である。
(沢)
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2024.07.24
日本新聞
農家を守る農業政策が日本の未来を拓く
4579号1面記事
農家を守る農業政策が日本の未来を拓く
「ふだんは輸入中心、有事には農産物増産命令」政府の方針は実現不可能で命を守ることはできない。食料自給率を引き上げ食の保障を
ウクライナ戦争、イスラエルとハマスの戦い、いずれも長期化し、解決は難しい状況である。ウクライナ戦争では、NATOがウクライナに武器支援を続けているために、戦争を長引かせ、犠牲を拡大している。イスラエルとハマスの戦いではパレスチナの人々が犠牲になっている。アメリカはイスラエルにガザ攻撃をやめさせるように働きかけているというが、この間もイスラエルに武器を輸出し続けている。
世界の国々が戦争が終わるために動けば、いたずらに戦闘を長引かせることはない。
こうした戦いによって、世界の国々に影響がある。ロシア、ウクライナは穀倉地帯である。そこからの穀物の輸出が滞ることで日本も大きな痛手を被る。ロシア、ウクライナが主要な生産国である小麦の高騰。イスラエルとハマスとの戦闘による石油、天然ガスの高騰。円安の影響が更に追い打ちをかける。
このような中、世界の国々は国内で食料を調達できる体制をとっている。特に大国中国では、今後1年半の食料備蓄に取り組んでいる。
では日本はどうか。今、真剣に考えなければならない時にきている。
日本の農業政策を問う
日本の食料自給率は38%。カナダ266%、オーストラリア200%、アメリカ132%、フランス125%、ドイツ86%、イギリス65%、イタリア60%、スイス51%と比べて、あまりにも低い。
日本の農業政策に大きな問題があることは、この数字からもよくわかる。1970年には、総予算に占める農水予算の比率は11%であった。ところが2023年度には2.2%に低下している。これでは農業の再生は見込めない。今、日本の農家は肥料、飼料、燃料の暴騰、加えて農産物の価格は上がらず、廃業に追い込まれる農家が増えている。
食料の確保は命に関わる重要課題である。政府は農家に対して、生産コストの上昇を国が補てんする、農地を守る交付金などの個別所得補償制度が必要である。外国では当然の制度とされているのに、日本ではバラマキなどと批判される。日本の農家の所得に占める補助金の割合は国際的にも最も低い割合だ。にもかかわらず、「補助金漬け」などと批判される。全く実際ではない。
政府は軍事費だけはうなぎのぼりに引き上げていき、農水予算は減らしていく一方である。これでは農家の所得補償などできない。
食料自給率低下の原因を“日本人の食生活が変わったから”というが、戦後、日本がアメリカの余剰農産物の処理場とされたからである。また、輸出企業が製品を輸出するかわりに、農産物を輸入させられ、日本の農業を衰退させた農政に大きな責任がある。
改悪された農業基本法には、平時は食料は輸入し、有事になったら国内の農家に増産命令を出す方針が記されている。有事になったから急に食料増産しろと言っても、実際には無理である。ふだんから日本の農家に所得補償して主食を作らせるべきだが、政府は田んぼをやめて畑にすることを進めようとしている。これでは食料の備蓄など到底無理である。
外国から食料を輸入することで、添加物や収穫後に輸送に耐えられるように農薬をふりかけるポストハーベストなど、食の安全が問われる問題も起きている。
地産地消、できるだけ小さな範囲(地元)で生産と消費を行う、食料の備蓄、タネの自給を確保するなど、取り組むべきことははっきりしている。農業を守ることは未来を拓くこと、農政の抜本的改革は緊急課題である。 (沢)
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2024.07.17
日本新聞
中国の軍事脅威強調の防衛白書に中国が抗議
4578号1面記事
中国の軍事脅威強調の防衛白書に中国が抗議
「台湾有事」は日米の宣伝、それを口実に南西諸島軍事要塞化、軍備増強。「防衛」をかたり、島民を戦争の犠牲にすることは許されない
2024年の防衛白書が12日の閣議で報告された。例年であれば、その日の夕刊か翌日の朝刊でその中味が報じられるが、今回は防衛白書自体を取り上げている新聞は少なく、「自衛隊員218人処分」がトップ記事である。
防衛省は、特定秘密の不適切運用、パワハラなどで自衛隊員218人を処分したという。その他にも、海自の潜水艦の乗員が川崎重工から不正に金品を受領していた問題がある。自衛隊という組織自体が病んでしまっているのが実際である。自民党の裏金問題にも見るように、まさに「今だけ、金だけ、自分だけ」がまん延し、市民のための政治も望めないし、安全を守ることも二の次三の次なのである。
これまで米側は、日本で情報流出が起きても、十分に重い処分が科されてこなかったことに不満があったという。つまり、今回、処分に踏み切ったのは、米側に対して「日本は情報を守る。これだけ真剣にやっている」というアピールだったのだ。
マスコミもそれを大宣伝して、防衛白書についてはあっても小さな記事で終わっている。
中国、朝鮮共和国の脅威を強調し、軍備増強を正当化
2024年の防衛白書では、中国について、「日本列島から沖縄、フィリピン、そして伊豆諸島から小笠原諸島、グアムまで活動を活発化させ、ロシアとの連携強化の動きを一層強めている」としている。
南西諸島にミサイル基地を置き、軍事要塞化して緊張を高めているのは日本である。「台湾有事」を言い始めたのはアメリカであり、それを受けて日本は南西諸島の軍事基地化に乗り出した。
「台湾有事」というが、台湾では8割が現状維持を望んでおり、中国が台湾に攻撃する可能性は低い。米軍が南西諸島の島々からミサイルを発射すれば話は別である。南西諸島が危険にさらされる。その時、米軍は撤退し高みの見物、あとを引き継ぐのは自衛隊である。つまり、「台湾有事」はアメリカと日本が作り出すのであり、南西諸島周辺が危険だ、というのは偽りである。
日本の平和と安全、国際秩序強化のために、同盟国・同志国などと協力して対応、これは実に危険な表現だ。「有事」をかたって、戦争に突入する準備を行っているのである。
朝鮮共和国については、核・ミサイル能力の向上に注力している、と危険視している。
このように見てくると、日本はアメリカと歩調を合わせ、どんどん敵を作っているのがわかる。
今回の防衛白書について、中国は強く批判している。中国外務省の林剣報道官は「乱暴に中国の内政に干渉し、いわゆる『中国の脅威』を騒ぎ立て、地域情勢の緊張を誇張している。中国は強く不満であり、断固として反対する」と語った。
また、解釈改憲で集団的自衛権行使容認の閣議決定から10年を経た今回の防衛白書から、安保関連法に関する特集が削除された。こうして解釈改憲を既成事実にしようとしているのではないか。集団的自衛権の行使容認、安保3文書、武器輸出などすべて憲法違反であり、認められない。
自衛隊のなり手不足が深刻だというが、当然である。アメリカと手を組んで、アジアの国を敵視し、戦争に向かっている中で、真っ先に戦場に向かわせられるのが自衛隊だからである。
中国は今、経済的にも日本をはるかに抜いて、アメリカをも、あと数年で追い抜くと言われている。国際的にも大きな影響力をもつ中国を敵視するのではなく、力を合わせてアジアの経済圏の発展に向かうことが、日本にとっても建設的な未来に向かうことである。戦争ではなく平和への道を。
(沢)
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2024.07.10
日本新聞
子どもの自殺が年々増えている日本の病巣
4577号1面記事
子どもの自殺が年々増えている日本の病巣
小中高生の自殺が2020年から急増し続けている実態。自殺の6割「原因不明」はありえない。問題を直視し子どもが希望を持てる社会に
札幌市立中学1年女子生徒が2021年10月、いじめが原因で自殺した。生徒の両親は「何度もいじめ被害を訴えていたのに、学校が放置し続けた」と、7月5日、札幌市に約6500万円の損害賠償を求め、札幌地裁に提訴した。
今年2月に、第三者による調査委員会が公表した報告書では、生徒は学校のアンケートに「仲間外れや無視をされる」と何度も答えていた。6年生の時には「どれいあつかいされる」と書いていたという。調査委員会は、「髪の毛を引っ張られたり、絵の具で服を汚されるなどのいじめも受けていた、学校側が適切に受け止めず、対応しなかったことが自殺につながった」と結論づけた。
訴状では、小学5年から2年以上、陰湿ないじめを受け、「終わりの見えない苦痛、屈辱を感じる慢性的ストレスを受けた」と主張している。
生徒の父親は「学校の先生方や市教委には、娘を死に追い込んだことについて責任を自覚し、償ってほしい」、母親は「いじめられ続け、被害を訴えても、先生方が誰も助けてくれなかった。どれだけ娘が悩み苦しんでいたかと思うと、悔しくてなりません」と訴えている。
第三者の調査委員会が調べてすぐわかるいじめを、学校側が把握できないわけがない。いじめを問題にもしない教育現場に深い闇がある。
いじめは日々、陰湿化し、教師も一緒になって葬式のまねごとをしていた事例や、いじめられた女子生徒が凍死したあとも「死んでサッパリした」とSNSに書き込んだり、心が病んでいるとしか言いようがない。校長も「死んだ一人より、生きている(いじめた)10人の未来を考えなければならない」と、死んでも尚、問題にしようとしなかった。このようなことが現実に起こっていることを重く受け止めなければならない。
児童生徒が自殺に追い込まれても、「いじめとの因果関係は不明」などと平気で言い放つことが繰り返されてきた。今、子ども達を取り巻く問題を掘り下げて考えなければならない時にきている。
世界でも子どもの自殺
が深刻な日本
日本の小中高生の自殺は、
2019年 317人
2020年 415人
2021年 473人
2022年 514人
2023年 513人
と、年々増えている。2022年に比べて2023年が1人減っているのは、不登校が増えている関係がある。いじめが減っているわけではない。
15~19歳の死因のトップが自殺であり、これはG7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ)のうち、日本だけである。そして、自殺の原因は6割が不明とされている。これも全く異常である。不明なのではなく、明らかにしたくないのである。
日本の子どもの「精神的幸福度」はOECD38カ国中37位だとされている。虐待、いじめ、差別、貧困など、子どもを取り巻く状況は厳しい。
コロナ禍もあり、貧富の格差は拡大するばかりである。仕事を失った親は子どもを食べさせるために必死に働き、子どもと話をする時間さえない状況だ。貧困家庭に対する政府の支援体制は全く不十分である。貧しい子どもたちが差別され、いじめられる。お金がなければ大学にも行けない。将来を考えても、貧困から抜け出すすべはない。持っている能力を伸ばすこともできない。
一番若い世代が自ら命を絶つ国に未来はない。子ども達が希望を持てる社会、生きたいと思える社会へと変えていかなければならない。差別を許さない教育、貧困の連鎖を断ち切る政治が求められる。 (沢)