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2024.05.15
日本新聞
日本新聞 4569号記事 人権侵害の経済安保情報保護法成立の暴挙
対象になる情報も明らかにされず、調査を拒否した結果の不利益も防がれず、罰則だけが明記。
知る権利やプライバシー侵害の悪法に反対
10日、参院本会議で「重要経済安保情報の保護・活用に関する法律」が、可決・成立した。賛成したのは自民・公明、日本維新の会、国民民主、立憲民主の各党である。
どんな法律なのか
この法律は、2014年に施行された特定秘密保護法の経済版と言われている。特定秘密保護法は、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で、対象者の9割が公務員である。
しかし経済安保はそれを大幅に拡大するものになり、対象者の範囲も大きく広がる可能性がある。
法律の中味は、
・国が保有する情報のうち、流出すれば安全保障に支障を与えるおそれがあるものを「重要経済安保情報」に指定
一体何が「重要経済安保情報」になるのか、何も示されていない。政府は、「成立後に作る運用基準で詳細を定める」と言っている。これでは何でも調査対象になるとされかねない。核心部分がこれから、なのであれば、そもそも法案提出自体ができないことだろう。
・適正評価制度に基づく調査をクリアした人にアクセス権限を与える調査は、
①重要経済基盤毀損活動との関係に関する事項(家族及び同居人の氏名、生年月日、国籍及び住所を含む)
②犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
③情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
④薬物の濫用及び影響に関する事項
⑤精神疾患に関する事項
⑥飲酒についての節度に関する事項
⑦信用状態その他の経済的な状況に関する事項
以上7項目だという。調査対象者と周辺の関係者、実に多くの人が調べられることになる。調査は同意が必要とされているが、拒否した場合の配置転換など、不利益が生じた場合の保障は一切ない。これでは調査はほぼ強制と言える。また、適性が認められない不適者がどのような扱いをされているのか、秘密保護法の事例も不明である。
・情報を漏らした場合、5年以下の拘禁刑か500万円以下の罰金を科す
この点のみは、しっかり明記している。
問われる野党の姿勢
このように見てくると、この法が論議にもならない中味のないものであることがわかる。核心の部分をあいまいにし、とにかく決めろと言わんばかりである。それでも恐るべきファシズム法であることは明らかだ。
この法案に反対したのは、れいわと共産のみなのである。立憲会派の社民は退席で反対の意思表示をした。日本維新の会、国民民主をはじめ、立憲民主までがこのファシズム法案を通している。これが問題である。
「どんな情報が指定対象になるかわからない、これから決める」こんなふざけた答弁をした時点で、野党は審議に応じられないと、態度を明確にすべきではなかったか。
成立後に政府は「運用基準の決定に向けてパブリックコメントを行う」と放言している。今まで市民の意見に耳を傾けたことがあったか。
化学機械メーカー大川原化工機事件があった。大川原化工機が軍用転用可能な装置を中国や韓国に不正に輸出したとして外為法違反に問われ、社長などに厳しい尋問が行われた。第1回公判期日の直前に検察が起訴を取り消した。
2023年12月、東京地裁で、大川原化工機の関係者が訴えた国賠訴訟で、原告側に全面勝訴判決が出された。ねつ造事件である。
新法成立で、このような事件が二度三度とでっち上げられる危険性は高い。ファシズム国家を完成させようとする政府にノーを突きつける運動はますます重要な局面を迎えている。 (沢) -
2024.05.08
日本新聞
日本新聞 4568号記事 憲法変えるなと有明に3万2000人集う
2024憲法大集会開催。改憲発議許さず、憲法を生かし、平和・いのち・くらし・人権を守ろう。
戦争への動きに歯止めをかけよう
日本には不戦を明記した憲法9条がある。世界でも日本の憲法9条をお手本にして、不戦を貫くコスタリカのような国もある。
しかし、憲法9条のある日本が今、アメリカの戦争に加担するような動きをしている。これに対して世界の国々、特にアジアの国々が警戒を強めている。
このような中、5月3日の憲法記念日に、有明防災公園で「2024憲法大集会」が開催された。有明防災公園には色とりどりの旗がなびき、3万2000人がかけつけた。
オープニングは古謝美佐子さんのステージ。平和を願う歌声が響く。「小さな沖縄に日本全体の米軍基地の70%以上が押し付けられている。平和な琉球は無くなってしまった。みなさんも考えてください」という言葉が突き刺さってくる。古謝さんの歌は沖縄の人々の悲しみ、無念さを訴えている。
主催者あいさつでは、「今回が10回目の憲法集会。戦争させない、9条壊すなの一点で一致してきた。安保関連法、安保3文書、軍事費43兆円に、他国と共同して武器開発。日米首脳会談では、自衛隊が米軍の指揮下で戦うこと、オーカスとの協力強化を約束してきた。明文改憲の論議の強まりに歯止めをかけ、運動を大きくしていこう」と訴えられた。
伊藤塾塾長で弁護士の伊藤真さんは「変えてはいけないことは、憲法への愛。その思いで、憲法に自衛隊明記という改悪を阻止してきた。憲法に明記されている、不戦の9条、政教分離、これを守り、戦争しないでこれた。しかし、軍需産業強化、戦闘機輸出など憲法無視の政治が行われている。自公が43%の得票で67%の議席を得ている、これも理不尽だ。77年前の戦争する国に戻してはならない。憲法を生かす政治を取り戻そう」と語った。
新外交イニシアチブ(ND)代表で弁護士の猿田佐世さんは、「岸田首相はアメリカに行って“アメリカのそばに日本はいますよ。だから自信を持ってください”と米議会でアピールしてきた。軍事大国の道を突き進み、抑止力の強化で他の国が日本に攻撃してこないと言っている。そうではない。外交によって緊張を緩和することだ。来年の今日、ここに一人一人が30代、20代、それ以下の人を連れてこよう」と呼びかけた。
真実を訴え運動の輪を広げよう
原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)共同代表の武藤類子さんは、「元旦の能登半島地震は、志賀原発が止まっていたこと、珠洲原発が住民の反対運動でできなかったことが幸いしたが、大惨事になるところだった。ところが原子力規制委は“原子力災害対策指針の見直しはしない”と言った。世界の原発を止め、少しでも安全を確保する時だ。福島の事故を忘れないでほしい。海洋投棄は人為的環境破壊で、何としても止めたい。東電幹部の責任を問う刑事訴訟は、不当極まりないひどい判決だ。6月17日、ヒューマンチェーンで最高裁を取り囲む。あきらめずに進んでいこう」と訴えた。
オール沖縄共同代表の高里鈴代さんは、「0.6%の小さな沖縄に日本の米軍基地の70.3%がある。いくらか返還されたが、それがそのまま、自衛隊基地として機能強化され、今はミサイル基地となっている。新たな戦争の準備のようだ。本当に復帰して良かったのか、この憲法は沖縄を守っているか問いたい。2月29日、最高裁は沖縄県の上告を完全に無視して、代執行を行った。最高裁が国の代執行を認めるのは沖縄県が初めて。沖縄は憲法の下に平等に守られてはいない。
2014年から3回にわたっての沖縄県知事選、そして県民投票の結果、沖縄県民は基地建設反対の声をあげ続けている。それを全く一顧だにしない国。工事が強行されている。軟弱地盤の問題も大きい。こんな税金の使い方でいいのか。
今も辺野古で座り込みをしている。代執行を許さない、新たな基地建設を許さない。沖縄を戦場にさせない。沖縄を戦争のための準備の基地にさせないという思いで頑張っている。辺野古に来てください!」と力強く呼びかけた。
山岸素子さんは難民問題について、大内由紀子さんは核兵器課題について、猫塚義夫さんはパレスチナ問題について、熱く訴えた。
不戦、基本的人権の尊重を訴える憲法が守られていないことで、様々な理不尽が存在する。それを今、9条を葬り去り、人権を踏みにじる悪法へと、明文改憲しようとしている。ファシズム社会の完成へと向かう危険な動きを阻止しなければならない。
憲法が実現され、一人一人の人権が守られ、そして命が守られる社会を築いていこう。 (沢) -
2024.05.01
日本新聞
日本新聞 4567号記事 不戦、戦力不保持の平和憲法を守ろう
軍備増強、武器輸出解禁、すべてを戦争につなげる経済安保など、戦争に向かって突き進む岸田政権。今、反戦の声を高らかにあげよう
5月3日は憲法記念日である。
現在の日本国憲法は、1946年11月3日に公布され、翌年1947年5月3日に施行された。
日本が敗戦したのが1945年8月15日。この戦争で日本は国土も焼け野原と化し、戦死者約310万人、生き残った人々も食べるものもままならない困窮の中にあった。また、日本の侵略戦争、植民地支配により、アジアの国々の犠牲者は2000万人を下らないといわれている。
戦争によって得たものは何もない。失ったもの、奪われたものは実に大きい。そこから、二度と戦争を繰り返してはならないと、憲法が作られた。
その前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と明記している。そして9条1項では、戦争の永久放棄を、2項では、戦力の不保持、交戦権を認めないことを明記している。
日本国憲法9条は、平和を愛する世界の国の手本とされている。9条を守り、二度と戦争を繰り返さないことが、日本、そして世界の平和を守る道である。
改憲、戦争に向かう岸田政権
ところが安倍政権、菅政権、岸田政権と、憲法9条を葬り去ろうという姿勢は変わらない。岸田首相は「私の任期内に改憲を行う」と言ってはばからない。
憲法記念日を前にした4月26日、自民憲法改正実現本部は、改憲実現に精力的に取り組む方針を確認したとしている。「大型連休明けには国会発議に向けた取り組みをしっかりしなければ」と話されたという。
改正と言っているが、9条を葬り去って、戦争を合法的に行うように変えてしまおうというのである。
そして政府は、戦争に向かって突き進んでいる。軍事費を世界3位にまで拡大し、軍需産業に武器を造らせ、武器輸出を許す。これを決めてしまった。戦争で人々は辛酸をなめさせられたが、その時大儲けしたのが三井、三菱、住友などの財閥の軍需産業である。
そして今再び、軍需産業の利益を保障し、私たちを戦火の中に放り出そうとしているのだ。
軍備増強、武器輸出、南西諸島の軍事要塞化、軍事同盟であるNATO会議に首相が参加、経済安保(3面参照)、どれもこれも憲法違反である。それを政府が公然と行う。国会の審議もなく、密室で数人の与党閣僚による閣議で決定してしまう。ファシズム体制が完成に近づいていることに危機感を抱かなければならない。
「台湾有事」を煽り立て、南西諸島の軍事要塞化を猛スピードで進め、住民避難のためとシェルターを建設。そのシェルターに住民を避難させる避難訓練を行っている。ごく一部の住民しか入れないシェルターはアリバイでしかない。
米軍が南西諸島の島々で中国に向けてミサイルを撃ち、立ち去る。自衛隊が後を引き継ぐ。犠牲になるのは自衛隊員であり、住民達である。
日本が憲法9条を守り、不戦を貫く時、日本に攻撃する国はない。日本がアメリカと組んで有事を引き起こす時、日本は戦場と化すことになる。
アジアの国々と力を合わせて、戦争ではなく経済発展の道を歩む。沖縄をはじめ、豊かな自然の宝庫である南西諸島に世界の人々が集う、そんな島にすることである。自然あふれる島々に基地やミサイルはいらない。
憲法記念日に、反戦、平和の思いを新たに。 (沢) -
2024.04.24
日本新聞
日本新聞 4566号記事 東電、柏崎刈羽原発に核燃料装てんの暴挙
福島第一原発事故は終っていない。事故を起こした東電が、福島と同じ沸騰水型原発を地元同意の見通しもない中で再 稼働の準備を強行
東電は15日、柏崎刈羽原発7号機の原子炉に核燃料を入れる燃料装荷を始めた。872体の燃料を入れるという。
柏崎刈羽原発再稼働については何も決定していない。昨年12月までは原子力規制委も運転禁止命令を出していた。ずさんな管理、安全対策の不備による措置だ。
東電は福島第一原発事故を起こした当事者である。事故によって、福島の人々が大きな被害を受けたこと、命を失った人もいたことを重く受け止めることもなく、「経営改善のため」と、柏崎刈羽原発の再稼働に勇み足になっている。
しかも柏崎刈羽原発は福島第一原発と同じ沸騰水型の原発である。福島の事故後に再稼働した原発に、沸騰水型の原発はない。こともあろうに事故を起こした当事者の東電が、福島と同じ沸騰水型原発を再稼働することは認められることではない。
ところが、原子力規制委は昨年12月、柏崎刈羽原発に対する運転禁止命令を解除したのである。それを受けて、今回の核燃料装てんが強行されたのである。原子力規制委も国と一体の犯罪的組織であると言わざるを得ない。
新潟県・花角知事は再稼働に慎重な姿勢を崩していない。原発から6方向に延びる避難道路の問題、避難計画の問題など何一つ結論は出ていない。
上越市長は「今の状況では『再稼働していいですよ』とスムーズに返事することは出来ない」、長岡市長は「原発に影響を与える断層を再検証する必要があるのではないか」と言っている。再稼働を危険視する意見が増えているのだ。
この状況で核燃料装てんは、東電が福島第一原発事故を起こした時と同様、住民の命など二の次の体質が何ら変わっていないことを露呈している。
15日に核燃料装てん開始後、17日午前には電源トラブルで作業を停止、16時間後の17日深夜に作業再開。電源トラブルの原因不明のままの再開である。
すべての原発は停止し廃炉に
能登半島地震では、志賀原発が止まっていたことが幸いした。もし動いていて大事故になったら、避難などできないことが明らかになった。
屋内に避難しろと言われても、家がぺしゃんこにつぶれた映像から、屋内避難など不可能だということははっきりしている。屋外に避難しろと言われても、道路は寸断され逃げることなどできない。原発事故等起きないようにする以外に方法はない。
原子力規制委は「自然災害についての避難は、我々には無関係」と言い放っているのだから、命を守ることなど考えていない。この地震列島日本で、原発を動かすこと自体無謀であり、やってはならないことだと、私たちは東電福島第一原発事故から思い知らされた。
第一原発の事故現場では、ALPSは上澄みを通すが、汚泥はそのまま取り出し、その超高濃度の放射性物質である汚泥を新しい保存タンクに移し替えるのは作業員の仕事である。今も危険な被ばく作業を余儀なくされているのだ。
故郷を追われ、生業も無くした被害者は、事故前の生活を望む術もない。支え合うコミュニティをなくし、力尽きた人もいる。このような惨状から目を背けず、二度と福島の惨状を繰り返してはならないと行動しなければならない。
国も東電も何の責任も取らず、それどころか国は再稼働を推進し、東電はそれに乗っかって、再稼働へと突き進もうとしている。これでは第二第三の福島が起きる。
すべての原発を止め、廃炉にすることが命を守ることである。(沢)