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2024.12.04
日本新聞
米軍事故・事件多発、日米地位協定見直しを
4598号1面記事
米軍事故・事件多発、日米地位協定見直しを
相次ぐ米軍機不時着は大事故につながる危険。絶えない婦女暴行事件。
「抑止力」ではなく「有事」引き起こす横須賀への米原子力空母入港
11月22日、米原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)が米海軍横須賀基地に入港した。インド太平洋地域を管轄する第7艦隊隊長は「GWは米国と日本に提供できる最も先進的で最大の海上能力を持つ」と述べた。
原子力空母は「動く原発」とも呼ばれている。原子炉を搭載して、その核分裂反応による熱で運行する航空母艦。原理は原子力発電所の原子炉とほぼ同じ。つまり、ふだんから環境中に放射性物質をまき散らし、事故が起きれば取り返しのつかない大きな被害となる。しかも戦闘機と戦闘員を大量に運べる戦争のための空母である。
このような危険なしろものを日本の海に配置したら、近隣諸国が強い警戒心を示すのは当然である。「抑止力」などではなく、「有事」を引き起こす要因となることは明らかである。
米軍ヘリ不時着、女性暴行、米軍による被害相次ぐ
8月
米軍厚木基地から飛び立った米ヘリが海老名市内の田んぼに不時着
10月10日
神奈川県茅ケ崎市の海岸近くの国道に米軍ヘリ不時着
11月14日
米軍普天間基地所属ヘリが辺戸岬近くに不時着
これほど頻繁に米軍機が民間地に緊急着陸する状況は異常である。いつ大事故が起きるか全くわからない状況である。
そしてもう一つは米兵による犯罪である。特に、女性に対する暴行事件は日常的に引き起こされている。その多くは米軍によって隠され、基地が所在する自治体にも報告されない始末である。声を上げられない女性も多く、日本全国でどれだけの被害があるのか、わからない状況である。日本人の女性がどんな目にあおうが、問題にすらしない、そして日本政府は抗議すらしないのである。
11月20日、横浜地裁で第5次厚木基地爆音訴訟の判決が言い渡された。不当判決である。損害賠償訴訟は一部認められたものの、飛行差し止めは米軍・自衛隊ともに退けられた。爆音を解決するには飛行差し止め以外ない。それが認められなかったのは、基地周辺住民の権利が侵害され続けることであり、決して認められない。
この裁判は、1976年9月に第1次訴訟提訴以来、48年が経過している。住民の願いは「平和で静かな空を取り戻したい」という、当たり前の願いである。
米軍基地があることによって、基地周辺住民の権利は脅かされている。
根源に日米地位協定がある。
米軍基地がある国では、それぞれ地位協定が定められている。下の表から、いかに日本が無権利かよく見えてくる。
ヨーロッパに限ったことではない。フィリピンでも、国内法が原則適用され、訓練・演習にはフィリピンの環境法令の遵守義務が明記され、米軍の有害物質取り扱いにはフィリピン側の許可を必要とする。
相次ぐ事件や事故は、日米地位協定に示されているように、日本が全く無権利であることによるところが大きい。日米地位協定の抜本的見直しなしに、基地問題の解決はない。そして命を守ることもできないのである。 (沢)
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2024.11.27
日本新聞
農家を守らない農政は国を滅ぼす
4597号1面記事
農家を守らない農政は国を滅ぼす
高齢化、担い手不足、耕作放棄地増加、これらは農家の責任ではなく、政治の愚策が招いたもの。政府
は軍事でなく食料政策を最優先に
日本の農業について真剣に考えなければならない。
まず農家の平均年齢が68.4歳という実際がある。そして農家の減少。農業を生業としている農家数は、
2015年175万7000人
2020年136万3000人
2021年130万2000人
と、年々減り続けている。新規就農者数も減っている。
原因は政府の愚策に他ならない。
稲作農家に対しては、
・米が余っているからと減反を強制
・水田を畑にしたら1回限りの補助金で田んぼ潰し
・農家に赤字補てん無し
・小売り・流通業界による買 いたたき
この結果、稲作農家の離農が相次いだ。新規就農者は、農地確保、農具・農業用機械調達、収穫するまでは無収入などの問題があるのに、それを支える具体策は何も講じない。
日本の農家は自給できるだけの米を作れるのに、米まで輸入する農政に未来はない。この夏に起きたコメ不足は、これからも起こり得ることなのである。米を作る農家が激減しているのだから。
今、牛乳もバターも不足しているという。酪農家に対しても、稲作農家に対するのと同様の悪政ぶりだ。
酪農家に減産を要請し、乳牛処分に一時金支給で乳牛を減らし、酪農家の赤字補てんは無し、脱脂粉乳在庫減らしのために酪農家に巨額の負担金と、農家いじめとしか思えないひどい政策だ。この結果、多くの酪農家が廃業に追い込まれた。
国は、そこに住む人々の食を保障しなければならない。そのためには農家を保障しなければならない。日本の農政にはそれが全く見られない。
2022年の自然災害による農林水産関係の被害額は2401億円、これは国や自治体が支援すべきものである。日本の農家の所得に対する税金の割合は3割程度。フランスやスイスはほぼ100%が国の補助だという。
耕作放棄地の問題もある。農家が代々、生業として農業を続けられない状況は、耕作放棄地を増やしている。1990年から2015年までに耕作放棄地は2倍の42万3000haに増えている。耕作放棄地は農地の1.8倍の固定資産税となるため、農地を手放した人も多い。だから実際の耕作放棄地ははるかに多いのである。
「世界で一番先に餓 死するのは日本人」 と言われている実際
日本の食料自給率はカロリーベースで38%と低い。しかし鈴木宣弘・東大教授は「実際はもっと低い」と言っている。
餌の穀物の自給は2割、肥料の原料は100%輸入、そうなれば自給率は実質22%まで下がってしまう。野菜の自給率は8割だというが、種は海外に9割も依存している。種が止まると8%しか野菜を作れない。鶏卵は97%自給というが、餌のトウモロコシはほぼ100%輸入、ひなも輸入。輸入が止まると9.2%の自給にすぎない。
自給率がたったの38%なのに、日本は農林水産物・食品の輸出を推進している。2022年には前年にくらべて14.3%輸出を増加し、過去最高の1兆4148億円。政府は、“2025年までに2兆円、2030年までに5兆円”と目標を挙げている。
つまり、私たちの食を保障することには労力を使わず、農産物のブランド化に力を入れているのだ。これでは、農業を守ることにも、食を守ることにもならない。
また、食料不足の緊急時には、「芋を増産しろ」と命令を出す「食料供給困難事態法」を制定した。これは無理な話だ。普段から農家が作物を作れるように保障し、自給率を上げることが必須である。
持続可能な農業を確立していくことが不可欠である。農薬や化学肥料に頼らない持続可能な農業。規格外野菜などとレッテルを張らずに、農家が作ったものが無駄にならないような消費システムの構築。農産物の価格を農家が決められるようにする、学校給食に有機の安心安全な食材を使う等々。やるべきことは多い。日本の農業の再生、日本に住む人々の食を保障する政策へと変えていかなければならない。 (沢)
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2024.11.20
日本新聞
原発推進方針引き継ぐ石破政権
4596号1面記事
原発推進方針引き継ぐ石破政権
総裁選では「原発ゼロ目指す」、首相になったら「原発ゼロが目的で
はない」。女川原発再稼働直後トラブル。安全な原発など存在しない
東北電力は10月29日に女川原発2号機を再稼働したが、11月3日にトラブルが起きた。機器を通すための案内管接続部のナットが緩んで外れたことが原因だとし、13日に再起動し、15日から発電を再開した。
女川原発は2011年の東日本大震災で被災した原発で、東電福島第一原発と同じ沸騰水型の原発である。地元でも反対の声が上がる中での再稼働強行である。
破たんした原子力政策、原発は廃炉に
石破首相は総裁選では「原発ゼロをめざす」と言っていた。ところが首相になったら「原発ゼロが目的ではない」と大きく変わっている。「安定したエネルギー供給が大切」と言い、安全が確認されたら原発再稼働もOKだというのである。
安全が確認された原発などあるのだろうか。原子力規制委は、次々「新基準適合」と再稼働GOサインを出しておいて、「適合」が安全ということではない、と平然と言い放った。このような無責任な原子力規制委の判断をもとに、再稼働などしてはならないのである。
現在、日本で稼働している原発は、
大飯原発3、4号機
高浜原発1、3、4号機
美浜原発3号機
玄海原発3、4号機
川内原発1、2号機
伊方原発3号機
女川原発2号機
の12基である。
12月7日には島根原発2号機の再稼働を強行しようとしている。島根原発も福島第一原発と同じ沸騰水型だ。
政府は2030年までに電力の原子力の割合を、現在の5%から20~22%に増やそうとしている。
高浜原発1号機は国内の原発で最も古く、11月14日、運転開始から50年経った。原発の寿命は40年だというのに、30年経過した原発は10年ごとに規制委がGOサインを出すことになった。余りにも安全軽視の無謀な制度変更である。60年を超えてもGOサインが出せるように、来年は新制度ができるそうだ。これでは何でもありである。
古くなるほど配管が薄くなる、コンクリート構造物の強度が低下するなど、劣化は避けられない。原発は劣化したからと簡単に交換できるものではない。
さらに、この地震大国で原発稼働は危険極まりない。
東電福島第一原発事故から、当事国である日本はしっかり学ぶべきである。そして二度とあのような事故を繰り返さないために、全力を尽くさなければならない。しかし、残念ながら、政府がやろうとしていることはかけ離れている。
東電は福島第一原発2号機から0.7gのデブリを取り出し、11月12日、日本原子力工学研究所(茨城県大洗町)に輸送した。今後1年かけて分析して、デブリ取り出しの工法検討に活用するとしている。
超高線量のデブリを取り出してどうするのか。全部で880トンのデブリである。ようやく取り出せたのが0.7g。気の遠くなるような作業だ。取り出したとしてもその保管はどうするのか。環境中に放射性物質を拡散して、被害をますます大きくするだけである。廃炉の道筋はデブリを取り出さずに、原発全体を覆う以外にないと、良心的な科学者は事故当初より指摘している。依然として原発利権にしがみつく御用学者に従えば、国を滅ぼし、地球規模の環境破壊を引き起こすことになりかねない。
東電福島第一事故で、原子力は人間の力で制御できないことを、いやというほど見せつけられた。子や孫の世代に生きていける自然環境を残すためには、原発から撤退し、持続可能な自然エネルギーへと転換することである。 (沢)
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2024.11.13
日本新聞
第2回全国オーガニック給食フォーラム
4595号1面記事
第2回全国オーガニック給食フォーラム
JAと市が一緒にオーガニックに取り組んでいる常陸大宮市での開催。全国各地のJAの取り組みも紹介。食を守ることは命を守ること
11月8日、常陸大宮市文化センターで、第2回全国オーガニック給食フォーラムが開催された。会場には800人、オンラインで400人、全国50のサテライトスタジオにもたくさんの方が集まった。
常陸大宮市は、全国に先駆けて市とJAが一緒になってオーガニック給食を推し進めている。JA常陸の秋山会長は「もともと私が子どもの頃は、皆無農薬だった。やれないわけがない」と全国のJAの先頭で、ネオニコチノイド系の農薬削減に取り組んだ。全国オーガニック給食協議会の理事も務めている。鈴木市長もオーガニック給食に意欲的に取り組んでいる。
基調提案は鈴木宣弘・東大大学院農学生命科学研究科特任教授と、国際ジャーナリストの堤未果さん。
給食が拓く子どもたちの未来
鈴木宣弘教授は次のように語った。
――戦後日本は、米国の余剰農産物の最終処分場にされた。自動車の利益のために農と食を差し出す「いけにえ」政策だ。その結果、輸入増加、農業縮小、自給率低下を招いた。
食料自給率の低下は日本人の食生活の変化によって輸入するしかなくなった、これは嘘。1958年に出版された「頭脳」という本には「米食低能論」が記されている。慶応大学医学部・林教授の著書で50版を重ね、日本社会に大きな影響を与えた犯罪的な書だ。
国際紛争などの不測の事態になると、一気に事態が悪化するが、ウクライナ危機で、それが起こってしまった。
食料、種、肥料、飼料などを海外に依存していては、命を守れない。肥料、飼料、種を輸入していることを考慮すれば、日本の自給率は38%どころか9.2%にすぎない。海外に依存しないで、肥料も種も国内で作る。国内の生産力をフル稼働させることだ。
自給率は北海道が228%、茨城が70%、東京は0.4%、ほとんど0だ。農業問題は消費者問題、命の問題だ。
日本の農家は、ひどい政策下でも世界10位の農業生産をあげている。赤字でも頑張ってきた。農家とともに一緒に頑張ろう!——
本質をズバリ突いた講演だった。
いのちの給食が世界を変える
堤未果さんはこう語った。
――米大統領選があったが、ロバート・ケネディJrは無所属で大統領選に出馬していたが、降りて、トランプを支持した。彼は“子ども達の食を変える”と言っていた。医療と食が大企業寄りだと指摘した。
アメリカは毎日8000万人がファストフードを食べている。子ども達の3人に1人は肥満。米軍入隊年齢の7割が太りすぎ、健康に問題があって不適格。子ども達の健康が食から壊れている。
アメリカでは、食生活の7割が超加工品。便利、安い、どこでも手に入る。世界中に輸出している。化学的に作った味で、精神にも影響する。人工甘味料はカロリーゼロ。体がおかしいと思って、代謝ができなくなる。そしてもっと食べる。
「新・大豆バーガー」が2021年に学校給食にデビューした。アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、日本でも。環境にいい、健康にいい、は嘘。子どもの4人に3人が「毎日食べたい」。大量生産で、途中から遺伝子組換え大豆に変えた。ブラジルの木を大量に伐った。添加物だらけで塩分も高い。
日本政府は酪農家には「牛1頭殺せば補助金やる」、一方でコオロギには補助金たっぷり。コオロギはカドミウムを蓄積するから、遺伝子組換えする。「京大バーガー」はゲノム編集のマダイのフィッシュバーガー。
まずは種を守る。地元の災害に強く味もいい種を守る。旬の食材を使ったオーガニック給食を食べられる子ども達は幸せだ。自然の多様性に感謝するようになる―
見通しの出てくる講演だった。
各地のJAの取り組みを聞いたり、パネルディスカッションでの農家の方の「子ども達に農家の話を聞かせたい」という発言や、お母さんの立場から「なるべく受け入れられるように考えて、激しく主張しすぎないようにしている」という発言に学ぶところが多かった。
「子ども達に安全な食を!」オーガニック給食の実現に向けた展望の持てる集会だった。 (沢)