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2024.04.17
日本新聞
日本新聞 4565号記事 首相訪米で日米軍事同盟強化を宣言
中国に対抗する米英豪のオーカスへの日本の参加を示唆。
軍事同盟強化は平和と逆行し戦争への道。アジアの国々との協力が発展への道
岸田首相は米国を訪れバイデン大統領と会談した。
日米共同声明は
・グローバルなパートナーシップ構築
・自衛隊と米軍の「指揮統制」の枠組み向上
・防衛産業の連携へ関係省庁の定期協議
・米英豪の「AUKUS(オーカス)」と日本の協力検討
などで合意したという。
岸田首相は「世界の課題に米国と共に対処する」と強調したというが、一体何をしようというのか。
首相の「世界の課題に米国と共に対処する」という言葉は重要な意味を持つ。これまでは日本は不戦の憲法9条を持つ国として、決して参戦しない、武器も輸出しないことを貫いてきた。
これに対して安倍元首相は「自由で開かれたインド太平洋」を提唱し、アメリカにインド太平洋地域を守ってほしい、そのために日本は軍備増強をして備えると、法を次々改悪した。憲法解釈改憲で、集団的自衛権の行使容認、安保関連法改悪で戦争できる国へと変貌させる、等々である。岸田首相は安倍元首相の方針を継承し、その具体化にまい進している。軍事費をGDP比2%へ増額、敵基地攻撃能力保有、武器輸出解禁などである。
そして今、中国に対抗することを目的とした、アメリカ、イギリス、オーストラリアの軍事同盟AUKUSに日本が協力すると宣言した。また、中国をけん制するためのアメリカ、フィリピンとの海上合同軍事訓練をインド太平洋で1年以内に行うとしている。
対中国を強めるアメリカの戦略下に自衛隊が動くのである。
安倍元首相暗殺に身の危険を感じ、米国の意に沿うように尻尾を振っているのかもしれないが、それは日本の安全とは程遠い戦争への道である。
アジアの国々と共に発展する、それが最大の安全保障
「中国の覇権主義に対する抑止力」「台湾有事に備えて」と言うが、青山学院大学の羽場久美子名誉教授は次のように指摘する。
「中国は、アメリカが煽らない限り攻めてこない。台湾併合にしても、中国は100年待てると言っている。台湾の世論調査では、8割が現状維持、中国との良好な関係維持を求めている。中国が台湾を軍事併合することはない。
2035年には中国のGDPがアメリカを抜くと言われている。アメリカは今のうちに中国の発展を阻止したい。そのために日本を中国と戦わせたいのである。
日本は平和のために中国、韓国、インド、グローバルサウスと連帯することだ」
羽場久美子教授のこの指摘は全く正しい。岸田首相のように、アメリカと共同と言いながら、実際はアメリカに組みしかれ、日本が中国と戦わせられたら、日本の破滅は目に見えている。米軍は南西諸島から中国に向けてミサイルを撃ち込み、グアムに退散し、自衛隊に戦わせるシナリオだ。
戦争は失うものばかりの悲惨なもの、二度と戦争しない、その思いで、日本は憲法9条をつくり、不戦、戦力不保持を明記した。先人が歴史から学んだことを無にしてはならない。
日本の未来はアジアの国々と力を合わせて、平和を築いていくことである。日本がかつての侵略戦争でアジアの国々に行った加害の歴史をみつめ、二度と繰り返さないために謝罪し、友好・連帯を築いていくことである。それがアジアの平和、発展へとつながる唯一の道であり、日本の未来を切り開くことである。
軍備増強、死の商人への道の行きつく先は滅亡以外にない。反戦を訴えよう。 (沢) -
2024.04.10
日本新聞
日本新聞 4564号記事 熊本地裁不当判決に水俣病訴訟原告控訴
144人の請求を棄却した熊本地裁判決は不当。原告128人全員を水俣病と認め賠償命じた大阪地裁判決。
国・熊本県はすべての被害者救済を
4月4日、水俣病特別措置法の救済対象外の143人が、請求を棄却した熊本地裁判決を不服として、福岡高裁に控訴した。原告は144人だが、1人は訴訟が長期化することで控訴しなかった。原告の平均年齢が76歳という中で、長い裁判に耐えられないという判断は無理もない。決して判決に納得したのではない。
原告144人は、水俣病特別措置法で救済対象外にされたことを不当とし、国や熊本県に損害賠償を求めて訴訟を起こした。3月22日、熊本地裁は原告のうち25人の水俣病罹患を認めながら、損害賠償請求権が消滅する20年の除斥期間が過ぎたとして、請求を退けた。しかし、被害者は自分が水俣病であることすら、気づくまでに時間がかかった。原告の一人は「自分が水俣病だと知ったのは検診を受けた時だ。除斥という判断は許されない」と判決を批判した。
水俣病がチッソの流した排水が原因であることを知っていながら隠し通し、被害を拡大しておきながら、責任を取ろうともしない国と熊本県。原因不明の奇病とされ、水俣病患者が出た家は白い目で見られ、小さくなって生きらされた。現在に至るまで、理不尽な目に会わされ続けているのである。
同様の訴訟は全国4地裁で起こされている。昨年9月の大阪地裁判決は、原告128人全員を水俣病と認め、賠償を命じた。今回はそれとは正反対の不当判決である。4月18日の新潟地裁判決への影響が心配される。
水俣病の本質は何か
1956年5月1日、熊本県水俣市の新日本窒素肥料水俣工場附属病院の細川病院長が、水俣保健所に患者の発生を報告し、公式に水俣病が確認された。原因はチッソが無処理で垂れ流していたメチル水銀を含む工場排水である。のちに細川病院長が「工場の排水をかけた餌や水俣湾の魚をネコに与える実験をして、水俣病が確認された。工場幹部に伝えたが公表されず、実験は一時中止に追い込まれた」と証言している。しかし、チッソが排水を流していたのは1932年の操業開始時からである。
1952年 胎児性水俣病患者出生、認定は20年後
1953年 ネコが狂い死にし、水俣湾に魚が浮く
1954年 患者12人発生
1956年 「原因不明の奇病」として水俣病公表
1964年 東大医学部の白木教授が「水俣病の原因物質はメチル水銀化合物」と確定する論文発表
1965年 新潟大学の椿教授と植木教授が「原因不明の水銀中毒患者が阿賀野川下流沿岸部落に散発」と新潟県庁に報 告.新潟水俣病公式確認
1968年 厚生省が水俣病とメチル水銀化合物との因果関係を公式認定
1968年 チッソ水俣工場はアセトアルデヒドの製造停止
1956年の水俣病公式発表から12年も、チッソは水俣病の原因である工場排水を流し続けていたのである。もっと言えば、1932年の操業開始から36年間も流し続けたのだ。一体どれだけの人が犠牲になったのか。工場排水を流すのをやめれば、患者が増えることもなかった。新潟の犠牲者を出すこともなかったのだ。
企業の犯罪なのに、政府は企業の利益を守り、住民の命を守らない。政府がすぐに原因を究明し、対処を命じていたら、被害をいたずらに拡大することはなかった。日本という国は、被害を受けた側が小さくなって生きらされる間違った社会である。原発事故で被ばくした人が、そのことを訴えれば非難される、実に理不尽だ。
これをたださなければならない。水俣病の問題も、すべての被害者の救済をかち取るまで終わらないのである。(沢) -
2024.04.03
日本新聞
日本新聞 4563号記事 次期戦闘機の輸出は明らかに憲法違反
日英伊共同開発の次期戦闘機の輸出を閣議決定で認める無法。
民間空港・港を整備し自衛隊が利用。兵器ローン10年に延長で軍事費膨張
3月26日、政府はイギリス、イタリアと共同開発する次期戦闘機を、日本から他の国への輸出を解禁する方針を閣議決定した。またしても閣議決定である。
日本は武器輸出を原則禁止してきた。武器輸出は戦争する側に立つことであり、死の商人と化すことである。日本は不戦の憲法9条をもっている。戦争しない、戦力を持たないと明記している。武器輸出解禁は、明らかに憲法違反である。日本という国の本質に関わるこれほど重要なことを、与党の数人の閣僚のみで決められることではない。国会はもちろん、徹底した公開討論を行い、国民投票にかけるべきことである。何でも閣議決定で安易に政府の思惑を通す、これでは全く民意は反映されない。このようにして戦争に向かっていくことをおおいに警戒しなければならない。
3月28日には、自衛隊の武器を最大10年の長期契約でまとめ買いする時限法を恒久化する改悪法が、参院本会議で自公、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決、成立となった。これまでの「5年の失効規定」を削除する。時限法であれば、購入方法が適切かどうか、5年の失効期限前に国会審議でチェックできたが、上限10年の恒久化で、政府はチェックされずに簡単に武器調達ができる。雪だるま式に膨張している兵器ローンが、ますます急増することが予測されるのである。
未来を拓くのは軍事ではなく平和外交
政府は有事の際に自衛隊や海上保安庁が使用するために整備する「特定利用空港・港湾」に、北海道から沖縄まで7道県の計16か所を指定する方針を発表した。九州・沖縄が7か所と多い。これは南西諸島軍事要塞化とタイアップしている。沖縄県では12か所が候補とされたが、県は同意しなかった。そのため、県が管理する施設は含まれず、国の管理する那覇空港、石垣空港の2か所となった。
しかし、3月29日、政府は沖縄県・先島諸島の5市町村にシェルターを整備する方針を発表した。シェルターは「特定臨時避難施設」が正式名称だという。ミサイル攻撃などから住民を守るためとしているが、一体どのような状況下でミサイル攻撃を受けるというのか。
沖縄県の玉城知事は、「対話による平和構築こそが本来、日本が取るべき外交の正しい手段だ。基地の計画ありき、シェルターの建設ありきではなく、平和であるための取り組みをどうするのか、政府に説明を求めたい」と語っている。
もし、ミサイル攻撃された場合、シェルターで住民の命を守れるのか。なぜ、日本が攻撃されることを想定しなければならないのか。日本が中国や朝鮮に敵対しなければ、攻撃などされない。中国と敵対しているアメリカと手を組んで、アメリカの戦略下で動くことで、攻撃される危険性が生まれる。米軍が南西諸島からミサイルを撃って動き回ってハワイやグアムに立ち去る。自衛隊がそれを引き継ぐ時、島は戦場となってしまう。その時、軍隊が住民を守りはしないことを、かつての沖縄戦で、4人に1人の犠牲を強いられた沖縄の人々は知っている。軍隊は住民を守らない。
玉城知事が言うように、基地を造ったりシェルターを造っても住民を守ることは出来ない。琉球王国が示したように、争いではなく対話で平和をかち取ることである。日本はアジアの一員として、アジアの国々と力を合わせ、共に発展していく道を歩むことが未来を拓くことである。 (沢) -
2024.03.27
日本新聞
日本新聞 4562号記事 大阪高裁が美浜原発3号機差止棄却の暴挙
運転開始から48年の超老朽原発の再稼働を「問題なし」とした不当判決。
国内外の批判無視で汚染水海洋投棄強行。原発行政は大破たん
3月15日、大阪地裁は、運転開始から48年の超老朽原発である関西電力美浜原発3号機の運転差止を求める住民側の訴えを棄却した。
この裁判は、福井、京都、滋賀の住民7人が美浜原発3号機について、「老朽化で重大事故の可能性が高くなっている」と運転差し止めを求めたものである。
2022年12月、大阪地裁は、住民側の求めた運転差し止めの仮処分の申し立てを退けた。これに対して住民側は即時抗告した。今回大阪高裁は大阪地裁決定を踏襲し、「新規制基準に不合理な点は見いだせず、安全性を厳格、慎重に判断しなければならない事情はない」とした。しかし、高裁決定は美浜原発3号機について「経年劣化の懸念は否定できない」と言及してもいる。これはおおいに矛盾している。美浜原発3号機は1976年に運転開始した。運転開始から実に48年もの超老朽原発である。安全性を心配して運転停止を求める住民側と、「裁判所に理解された。引き続き安全性・信頼性の向上に努め、運転・保全に万全を期す」と言う関西電力と、どちらが理に合っているのか。
住民側の北村栄弁護士は「我々の主張がことごとく退けられた結論ありきの決定だ」と批判した。河井弘之弁護士は「事故は起きないから避難計画を考えなくても良いというのか。福島原発事故で得た『科学に絶対はない』という教訓に反する」と指摘した。長年、原発反対運動を続けてきた福井県小浜市明通寺の中嶌哲演住職は「法の理念や正義にのっとった決定なのか疑問だ」と語った。
福島の原発事故があったから原発の新規建設は難しいからと、原発の寿命40年を延長し、老朽原発を60年まで稼働を延長し、さらには60年を超えてもOKと法を変える、こんなことが許されるわけがない。必ず破たんするのは目に見えている。
東電福島第一原発事故で、私たちは原発と人類が共存することは出来ない、核と人類は共存できないことを知った。専門家であれば、その現実から目を背けることは出来ないはずである。金と引き換えに良心を売り渡さない限り。
汚染水4回目の投棄強行
17日、福島第一原発事故の汚染水の4回目の海洋投棄を完了したと東電は発表した。
放出量は4回で計約3万1200トン。トリチウムの総量は約4.5兆ベクレル。放出口付近の海水から微量の放射性物質トリチウムを検出したが、世界保健機構(WHO)の飲料水基準・1万ベクレルを大きく下回っているとした。
2024年度の海洋投棄は計7回行い、約5万4600トンに増やすという。トリチウムの総量は約14兆ベクレル。5回目の投棄は4~5月の予定だというが、国内外から批判が高まっている海洋投棄は即刻中止すべきである。
現在、海洋投棄されている汚染水は事故原発のデブリに直接触れた、汚染水である。世界でも例のない危険な物質なのである。今まで放出されていた放射性物質より少ない量だから大丈夫、などと言える代物ではない。
昨年12月、原子力市民委員会は「ALPS処理汚染水の海洋投棄を即時中止し、デブリ取り出しと非現実的な中長期ロードマップを見直し、福島第一原子力発電所の『廃炉』のあり方を公開・透明な場で検討するべきである」という声明を出した。声明では次の3点を指摘している。
1、政府は廃炉のために海洋投棄すると言っているが、福島第一原発の廃炉の見通しは全く立っていない。海洋投棄には何の道理も必要性もない。
2、原発事故時には「止める」「冷やす」「閉じ込める」を達成しなければならないが、いまだに「閉じ込める」ができていない。海洋投棄で更に汚染を重ねている。
3、中長期ロードマップを見直すべき。汚染水発生の防止、デブリ取り出しではなく保安方法を検討する、廃炉の公開性、透明性を確保し、市民の声が反映されるようにする。
原子力市民委員会は、良心的な専門家や市民が結集し、福島第一原発事故の収束について、真剣に取り組んでいる。デブリ取り出しなど不可能だ、仮にいくらか取り出したとしても、その保管はどうするのか。超高濃度のデブリを取り出すこと自体、危険極まりないことである。大型タンクあるいはモルタル固化など、実証されている建設的な代替案を提案している。しかし政府も東電も無視し続けている。御用学者は危険を知りながら、安全安全と繰り返している。
原発事故から13年、事故から教訓を得ることもなく、原発推進、再稼働に向かう政府の動きに歯止めをかけなければならない。原発はいらない! (沢)