-
2022.12.21
日本新聞
日本新聞 4496号記事 安保3文書閣議決定の暴挙に抗議する
敵基地攻撃能力の明記を閣議決定!憲法9条を葬り去る戦争への道を国会での審議もなく決める暴挙。戦争反対の運動の前進を!
政府は16日、「国家安全保障戦略」などの安保3文書を閣議決定した。3文書は外交・防衛の基本方針である「国家安全保障戦略」、10年間の「防衛目標」を実現するための方法と手段を示す「国家防衛戦略」、防衛費の総額や装備品の整備規模を定める「防衛力整備計画」の3つである。
これらの柱は、敵基地攻撃能力の保有の明記であり、不戦の憲法9条を掲げ専守防衛を原則としてきた日本の在り方を大きく変貌させるものとなる。つまり、日本は「戦争する国」と世界に宣言することになるのだ。
これほどの大転換を、主権者である国民に信を問うこともなく、国会での審議もなく閣議決定で決めてしまったのだ。民主主義国家とは無縁の姿である。
岸田政権は軍事費をGDP(国内総生産)比2%にする、つまり年間11兆円へと増額するとしている。2023年度から5年間の軍事費の総額は約43兆円にものぼる。非常に危険な軍事大国への道である。
「戦争ではなく平和の準備を」と憲法学者らが対案公表
閣議決定を前にした15日、憲法学者らによる「平和構想提言会議」が安保3文書に対する対案として「戦争ではなく平和の準備を―“抑止力”で戦争は防げない―」を公表した。 提言は、「安保3文書改定は、日本の安保政策の大転換になり、日本が自ら戦争する国家に代わる」と指摘し、「国会の徹底的な審議もないままに憲法の実質が勝手に上書きされようとしている」と懸念を示した。政府・与党の「軍事力の増強が抑止力を強め、平和を担保する」という論を、「きわめて短絡的で危険」とし、「防衛力強化がかえって周辺国との軍拡競争を招いて戦争のリスクを高める」と警鐘を鳴らした。提言は「今こそ憲法9条が定める平和主義の原則に立ち返るべき」と訴えている。 具体的には、
・朝鮮半島の非核化に向けた外交交渉の再開
・中国を「脅威」と認定しないこ
・アジア諸国との対話の 強化を提唱
・専守防衛の堅持
・米国製巡航ミサイル「ト マホーク」など敵基地攻撃能力につながる兵器の購入や開発の中止 を求める
基本的に国会審議もなく決めたものを認めるわけにはいかないと、はっきり言っていこうと呼びかけている。
自民公明両党は16日、2023年度与党税制改正大綱を決定した。この中で、軍事費増額の財源は、法人税、所得税、たばこ税で賄うとした。増税時期は2024年以降とした。
法人税は、税率は変えず、本来の税額に4~4.5%を上乗せ、所得税は税額に1%上乗せして軍事費に充てる目的税を新設するという。復興特別税の税率を2.1%から1%引き下げる。つまり、東日本大震災の復興税を軍事費に当面流用するというわけだ。そして復興税としての上乗せ時期を延長する。たばこ税は1本あたり3円から引き上げていく。
日本は世界第3位の軍事大国になる。不戦の憲法9条のある日本で、敵基地攻撃能力保有、軍備増強、アメリカからの兵器爆買い、南西諸島の軍事要塞化などあってはならないことである。戦争をしないためには戦争しない道を歩むことである。中国などアジアの国々を敵対視するのではなく、平和外交を徹底することである。
今後5年間で軍事に約43兆円もの予算を使うのではなく、苦しい生活の中で途方に暮れている人たちがいる今、命綱として使うべきお金である。戦争への道を突き進むための安保3文書閣議決定に抗議する。 (沢) -
2022.12.14
日本新聞
日本新聞 4495号記事 沖縄県民の民意を尊重し辺野古新基地建設中止を
最高裁が辺野古問題で沖縄県を敗訴に。国の意向そのままの司法、三権分立などない。国と地方は対等、民意を踏みにじり基地建設は暴挙
8日、最高裁小法廷は沖縄県の上告を棄却する判決を言い渡した。
沖縄県の上告の内容は、2018年、辺野古新基地の埋め立て海域で軟弱地盤がみつかったことから、県は2013年に出した埋め立て承認を撤回した。マヨネーズ状の軟弱地盤に基地を建設するなど、危険極まりないことを撤回するのはあまりにも当然のことである。ところが防衛省沖縄防衛局は、行政不服審査法に訴え、国交相に県の埋め立て承認撤回を取り消すことを求めた。
行政不服審査法は、国のやり方で損害を被った人が訴える術である。防衛省が沖縄県を訴えるなど、対象外であることははっきりしている。にもかかわらず、国交相は防衛省の訴えを取り上げ、沖縄県の承認撤回を取り消したのである。これに対して沖縄県が、国交相の裁決の取り消しを求めて提訴したのである。
今回の判決の根拠は、「県は原告として認められない」である。これは全く不当である。防衛省が国交相に、沖縄県の決定の取り消しを求めること自体が成り立たない。これでは国の機関が内輪で認め合い、地方自治など成り立たなくなってしまう。
2000年に施行された「地方分権一括法」で国と地方の関係を、上下・主従の関係から、対等・協力関係に転換している。沖縄県に対する国のやり方は、「地方分権一括法」に明らかに反している。沖縄県民は、基地反対、特に辺野古新基地反対の民意を繰り返し、明確に示してきた。選挙で然り、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票で然りである。政府はこの民意を受け止め、辺野古新基地建設を断念しなければならないはずである。
ところが今回の最高裁判決を含め、国と沖縄県の間の訴訟は12件もあり、これまで判決が出されている5件(今回も含め)はすべて、沖縄県の敗訴となっている。日本は立法、行政、司法がそれぞれ独立している三権分立の国だということになっているが、実際は全く違う。裁判所は政府に忖度し、その機能を果たしていない。これは民主主義の崩壊である。
遺骨の眠る土砂を埋め立てに使うな、と怒りの声
具志堅隆松さんはガマフヤーのメンバーと沖縄戦で亡くなった方の遺骨の収容活動を、40年間にわたって続けてきた。3年前に、戦没者の遺骨が混じった沖縄南部の土砂を辺野古埋め立てに使おうとしていることがわかり、防衛省との交渉を続けている。今年8月5日の南部住民との意見交換会で、防衛省は「ご遺族の意見を聴く予定はない」と公言し、強い非難を浴びた。沖縄戦で沖縄の人々がどんな苦しい目にあわされたのか、何も考えようともしない姿勢に、「遺骨は防衛省のものではない!」と怒りの声があげられている。
沖縄の美ら海を沖縄戦の犠牲者の遺骨で埋める、このような非道を沖縄県民も私たちも決して認められない。
今、鹿児島南部の島から沖縄の与那国島までの南西諸島の軍事要塞化が進められている。島々にミサイル基地が造られ、米海兵隊がそこから中国へ向けてミサイルを撃ち込み、島から逃げる。こうして日本は戦争に巻き込まれていく。このような事態が現実のものとならないように、戦争反対の声を全国で高めていかなくてはならない。沖縄が直面している危険は、日本全体の問題である。
新基地を造らせない、軍備増強を許さない反戦の思いを全国でつないでいこう。 (沢) -
2022.01.26
日本新聞
日本新聞 4450号記事 東電福島第一原発事故被ばく
甲状腺がんになった若者6人が提訴
原告は事故当時6~16歳、被ばくと甲状腺がんの因果関係は認められないまま。約300人の被害者の先頭で東電の責任問う勇気ある決断
東電福島第一原発事故の後に甲状腺がんになった、事故当時6歳~16歳だった若者6人が、1月27日に東電に対して総額6億1600万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こす。原発事故によって子どもの時に甲状腺がんになった被害者が、東電を訴えるのは初めてのことである。
訴えるのは、福島市や郡山市などに住んでいた4人と、会津地方に住んでいた1人と浜通りに住んでいた1人。6人は福島県の県民健康調査などで甲状腺がんと診断された。2人は甲状腺の片側を切除、4人は再発し全摘出、放射線治療を受けていたり、今後予定している。4回手術した人、肺に転移した人もいる。治療や手術で、希望の就職をあきらめたり、大学を中退した人や退学した人もいる。一生、ホルモン剤を飲み続けなければならない生活。放射線治療で不安に押しつぶされそうになり、人生を奪われていると訴えている。
2011年3月の原発事故からもうすぐ11年になる。しかし、国も東電も何の責任も取っていない。
子どもの甲状腺がんは通常であれば100万人に1~2人。ところが原発事故当時18歳以下と、事故後の2012年4月1日までに生まれた福島県の計約38万人を対象に検査した結果、昨年6月までに約300人が甲状腺がん、またはその疑いと診断されている。通常であれば1人もいないのが当たり前なのに、約300人も甲状腺がんを発症しているのだから大問題である。
ところがこの診断結果について、福島県の専門家会議は「被ばくと甲状腺がんの因果関係は現時点で認められない。将来治療の必要のないがんを見つけている過剰診断の可能性が指摘されている」と言い放っているのである。そして「県民健康調査」も縮小しようとしているのだ。専門家会議は政府の御用学者の集まりではないか。
訴訟で東電の責任を明らかに
原発事故がなければ子どもたちは甲状腺がんで苦しむことはなかった。弁護団長の井戸弁護士は「再発している人も多く、過剰診断は考えにくい。東電は原因が原発事故と認め、早急に救済すべきだ。被ばくが原因とみられる甲状腺がんで苦しむ人たちの希望となる裁判にしたい」と語っている。
訴訟を起こした若者たちは絶望の真っただ中に置かれたことだろう。自分たちの苦しみの原因である原発事故を引き起こした東電が、事故が原因であることさえ認めない。そして政府は被害者を救済するのではなく、東電支援策ばかり考えているのだから。しかしその絶望の中から「事故が関係ないなら、なぜこれほど甲状腺がんの子が出ているのか。今後も甲状腺がんになる子がいるかもしれない。今できることをしなくては」と決意したのである。自分の苦しみの原因が原発事故によって放出された放射性ヨウ素によるものだということ、自分たちの闘いが300人の被害者の希望になればいい、と勇気ある決断をしたのだ。
チェルノブイリ原発事故に明らかなように、被ばくによる健康被害は否定しようがない。日本政府は「福島原発事故による健康被害はない」とうそぶいている。こんなことがまかり通る社会は間違っている。東電福島第一原発の事故によって、大量の放射性物質が放出され、300人もの子どもたちの甲状腺がんをはじめ、甚大な被害が出た。この事実が事実として認められ、被害者が補償されるよう要求する。(沢) -
2022.01.19
日本新聞
日本新聞 4449号記事 沖縄を再び戦場とする軍備強化に抗議
南西諸島の要塞化、敵基地攻撃能力保有は不戦・戦力不保持の憲法9条に違反。軍備増強は抑止力ではなく戦争に直結。平和外交の道を
1月7日、日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開かれ、南西諸島での自衛隊強化と日米の施設共同使用増加を共同発表に盛り込んだ。地域も具体的な共同作戦も明示されてはいない。岸田首相は「相手がいることなので」と説明しないでにごしている。
2プラス2に先立ち、米軍は昨年12月24日に、台湾有事の際の自衛隊との共同作戦の原案をまとめたと発表した。台湾有事の際の対峙する相手は中国である。アメリカは自国を戦場にはせず、南西諸島(九州南端から台湾北東端にいたる海域に連なる弧状列島の総称)に自衛隊基地を置き、戦場にしようとしている。
2016年与那国島に監視警戒部隊設置、2019年奄美大島に、2019年宮古島、2022年度石垣島にミサイル部隊設置・計画。
現在、鹿児島県種子島沖合・西之表市の馬毛島に米空母艦載機の陸上離発着陸訓練移転と陸海空自衛隊の一大訓練基地化が進められている。1月12日に防衛省は西之表市の八板市長に「馬毛島への整備計画を決定した」と伝えた。八板市長はこれまでも「不同意」を訴えてきた。「いったん立ち止まってほしい」と言う八板市長の訴えを無視し続けてきて、今回の「決定」である。地元の意向無視で米軍の戦略下で自衛隊が武器を使用する危険な事態が、すぐそこまできているのである。
沖縄を再び戦場にしてはならない
沖縄選出の参議院議員・伊波洋一さんは、「新しい米戦略構想は、第一列島線(九州―沖縄―台湾―フィリピン)沿いに展開する米軍と自衛隊からなるミサイル部隊と、第二列島線(本州―グアム―パプアニューギニア)沿いに退避する米海軍・空母機動隊の2段構えの布陣。台湾有事の際には南西諸島配備の自衛隊が米軍とともに第一列島線に展開し、通過しようとする中国艦艇をミサイル攻撃で封じ込める。第二列島線に構える米軍部隊は、中国のミサイルが届かない地点から自国軍や同盟軍を支援するという構図。自衛隊もやられ、戦場となる南西諸島の住民も逃げ惑うことになる」と指摘した。
岸田首相は「日米安保体制を新たな段階にしなければならない。敵基地攻撃能力の保有も含めて、あらゆることを考えなくてはならない」と言うが、これが具体化したものなのかと空恐ろしくなる。
改憲勢力が増えたことで改憲論議も加速しているが、戦争放棄・戦力不保持の憲法9条を葬り去ろうという意図が見える。
日本がやっている、
・対艦ミサイルの射程を現状の200㎞から1000~2000㎞に延ばす
・戦闘機から発射する長射程のミサイルの輸入
・ 護衛艦「いずも」「かが」の空母化
・空母艦載機となるF35Bステルス戦闘機の購入
など、すべて憲法9条に違反する。
台湾有事の際の日米共同作戦計画に対して、沖縄平和運動センター顧問の山城博治さんや沖縄県の研究者らは計画案に抗議し、超党派の「南西諸島を絶対に戦場にさせない県民の会」を立ち上げ、賛同者を募っている。
沖縄は日本で唯一、地上戦を余儀なくされた。本土を守るためにと「捨て石」にされたのである。沖縄県民の4人に1人が命を奪われるという大きな犠牲を強いられた。血塗られた歴史を繰り返してはならない。沖縄を再び戦場にしてはならない。 (沢)