-
2024.06.13
書籍
俘虜記 闇からの脱出 カムチャッカ物語
3年8ヶ月のカムチャッカ抑留という闇の中には“生きて日本に帰って劇場をつくる”という希望があった。 だが帰って来た日本もまた巨大な暗闇であった。
「“戦争への道”はまっこと闇への道であり、苦しい戦いだが私は “平和への道”をこの闇の中に切り開いていくつもりである。それは親が子へ、子が孫へと続く“太陽の道”である」(まえがきより)
三橋辰雄 著
定価 2000円 -
2024.06.12
日本新聞
4573号 難民申請中の強制送還認める改悪入管法施行
4573号1面記事
難民申請中の強制送還認める改悪入管法施行
ウィシュマさん虐待死事件当時より更にひどい悪法。難民申請3回目以降の人は強制送還可能に。難民を受け入れない日本の制度が問題
「改正入管法」が10日、施行された。
入管法を巡ってはさまざまな問題があった。入管法は、日本への入国や出国の管理、在留資格や不法滞在、難民の認定手続きなどに関して決められた法律である。
2019年の入管法改定は、日本の人手不足を補うために、外国人受け入れ政策を見直し・拡大した。そのために新しい在留資格「特定技能」が創設された。一定の専門性・技能がある外国人を即戦力として受け入れることを可能にする、と言われたが、実際は単純労働を含む幅広い業務が可能になった。また、技能実習から特定技能への移行が可能となった。技能実習生は最長5年しか日本に在留できなかったが、特定技能に移行することで、引き続き働くことが可能になった。
それもこれも日本の労働力不足を補うためである。外国人労働者がいなければ日本は回らない、外国人労働者に助けられている。それなら、外国人労働者が安心して働けるような制度にすべきである。
2021年にも「入管法改正案」が国会に提出されたが、批判の声が強く、取り下げとなった。
2021年3月6日、名古屋入管に収監中のスリランカ人女性ウィシュマさんが死亡した。体調不良を訴え続けていたのに、入管側は適切な処置もせず放置した。この事件によって、入管による収監者への扱いが問題視された。
その直後の法案提出で、収監者への取り扱いや難民認定制度の改正が取り上げられているかと思いきや、それと真逆であったために、取り下げとなったのである。
「改正入管法」の
何が問題なのか
10日に施行された「改正入管法」は、2021年に取り下げになった「改正案」がほとんどそのまま引き継がれている。
最大の問題点は、3回目の難民申請以降は「難民認定すべき相当の理由」を示さなければ送還するという点だ。「相当の理由」は紛争などの本国の情勢に変化があったなどが挙げられるというが、それ以前から身の危険を感じて国を逃れてきた人はどうなるのか。変化がなくとも送還によって命の危険にさらされる可能性があるのだ。
日本は難民条約に加入している。それなのに、難民受け入れは極端に少ない。2022年の難民認定率は、イギリス68.6%、カナダ59.2%、アメリカ45.7%に対して、日本はわずか2.0%202人にとどまっている。
本来、難民に認定されて当然の人が認められないため、何度も何度も申請せざるを得ない。それを、3回目の申請以降は強制送還する、これはとんでもないことである。
他にも問題は多い。
入管が認めた「監理人」(親族や支援者)の下で生活できるようにする。一見いいようだが、3カ月ごとに、入管施設への収容継続の必要性を判断する、という条件が付けられている。「監理人」にも責任がかかり、「監理人」の負担も大きい。
更に、送還に必要な旅券の申請を命じられて拒否したり、送還の飛行機内で暴れたりした場合の刑事罰を新設。送還が命に関わる場合、命がけで拒否するのは当然のことである。有無を言わせず罪人にして送還する、これが難民条約に加入した国のやることなのか。
小泉法相は「改正入管法」について、「保護すべき者を確実に保護し、ルールに違反した者は厳正に対処する。日本人と外国人が尊重し合うバランスのとれた共生社会の基盤をつくるという考え方によって成り立っている」と持ち上げている。
外国人を安価な労働力として酷使し、「いつでも強制送還できる」と脅す。どこがバランスのとれた共生社会なのか。
日本社会にとって、外国人労働者はなくてはならないパートナーである。共に安心して働ける法制度を作ることが、今求められているのである。 (沢)
-
2024.06.12
書籍
心をつなぐ子ら ―友だちがいて ぼくがいてー
北国の子どもたちと生きる心温まる学級づくり
子どもの変革は教師の変革から。「やってもできない子にはやさしく」。教師自身が開放されないと子どもの心も開放することはできない、と日々奮闘する女教師たちの感動の実践記録。
三橋京子・木村弘子・竹林由美共著
定価1143円+税
-
2024.06.05
日本新聞
4572号「農政の憲法」を改悪、農業壊滅への道
4572号1面記事
「農政の憲法」を改悪、農業壊滅への道
食料自給率38%の危機的状況をさらに悪化させる改悪。農家の権利も消費者の権利もないがしろ。輸入に頼る農業からの脱却こそ急務
5月29日、「改正食料・農業・農村基本法」が参院本会議で与党、日本維新の会の賛成で可決、成立した。
「食料・農業・農村基本法」は1999年に制定され、「農政の憲法」と呼ばれている。改定は25年ぶりに初めて行われた。改定の根拠とされたのが、ウクライナ戦争などによって、食料安全保障の確保の重要性が浮き彫りとなったことが上げられている。
主な改定内容は
・基本理念に「食料安全保障の確保」を追加
・輸出促進のため、国は農産物の競争力を強化する
・消費者は、環境負担が少ないものや持続的な生産に資する商品の選択に努める
・大規模農家だけでなく多様な農業者が農地を確保できるよう配慮
・障がい者などが農業活動できるように環境整備する
では一つ一つ見ていこう。
基本理念に「食料安全保障の確保」を追加したというが、最近、安全保障という言葉が飛び交う。「経済安全保障」「食料安全保障」これらが軍事の安全保障と結びついている懸念は大きい。実際、有事の食料安全保障のために、花を作っている農家にいもを作るように命令を出し、従わなければ罰金を科すとしている。有事だからと、急に作付けを変えることなどできない。
価格に費用を転嫁できるように、理解増進、費用の明確化を進めるというが、実際は経費より安く米や野菜を売らなければならない状況である。大手企業の農業参入でますます価格統制が行われている。
輸出促進のため、農産物の競争力を強化というのも、大手企業にしかできないことだ。食料自給率が38%と極端に低い状況こそ変えていかなくてはならない。輸出の話ではない。食料自給率を引き上げていくことが最優先である。
消費者の商品選択が大きな問題のように言うが、消費者に正しい情報を提供することが先である。アメリカの余剰農産物を輸入するために、パン食を推奨し、欧米食に切り替えていったのは消費者のせいではなく、政府による意図的な宣伝によるものである。
大規模農家だけではなく多様な農業者が農地を確保できるようにする、これは企業が農業に進出しやすくするためのものであり、農業の発展や農家保護とは無縁だ。
障がい者が農業活動できるよう環境整備。農福連携で、農家も助かり、障がい者も仕事に誇りを持って取り組めるようになるのはいいことである。一部の者がそれを悪用することがないことを望む。
食料自給率アップ、種の自給が農業のカギ
日本の農家の平均年齢は68歳である。今の農政ではさらに高齢化するのは明らかである。何十年も農業委員を務めていた方が、「息子に農業をやる、と言われて、とっさに、“それはやめて!”と言ってしまった」と話していた。そう言ってしまった自分が悲しいのである。
食料自給率38%の現状からどう引き上げていくのか、それを第一にして、80%までもっていかなくてはならない。
生産費用の高騰で農家は悲鳴を上げている。欧米並みの直接支払い制度の拡充が必要だ。
国がめざすのは農業の大規模化だが、そうではなく家族農業など小規模農業の保障こそが、農業の未来を切り拓く。その具体化のための施策を講じるべきだ。
食料の保障の重要なポイントは種である。日本は今、種の9割以上を外国の圃場に依存している。国内で安全な種を確保することが緊急課題だ。
米の需要が減っているからと、田んぼを畑にする方針が出されている。それでどうやって、食料の確保ができるのか。義務でもないミニマムアクセス米を輸入するのではなく、日本の農家の米作りを保障し、国の責任で買い取る。それを備蓄や、内外の援助に回すことで食料の確保ができる。
農水省は「みどりの食料システム戦略」で、農地面積の4分の1の100万ヘクタールを有機農業にするという目標を提示している。しかし、何の具体策もないために国際社会からも「できるわけがない」と笑われているのが実情だ。
地方の一次産業を大事にすれば、人も戻っていく。政策の根本的な転換が求められる。 (沢)