-
2024.09.11
日本新聞
石垣市の若者達 民主主義求め最高裁に要請行動
4586号1面記事
石垣市の若者達
民主主義求め最高裁に要請行動
住民投票実施の規定クリアでも陸自石垣駐屯地について住民投票を行わない石垣市。最高裁に地裁、高裁の請求却下覆す判断を求める
9月6日、石垣島から若者達が上京し、最高裁に要請行動を行った。若者は金城龍太郎さん、川満起史さん、宮良麻奈美さんである。
金城さん達は陸自石垣駐屯地の建設工事が始まる前の2018年10月に、「石垣市住民投票を求める会」を立ち上げた。
求める会は、陸自石垣駐屯地について、住民投票を行おうと署名を集め、1か月で有権者の4割近い1万4263筆を集めた。石垣市の住民投票条例には、市の有権者の4分の1以上の署名で住民投票を請求できる、市民から請求があった時には、市長は住民投票を実施しなければならない、とされている。
2018年12月、1万4263筆の署名を金城さん達は石垣市に提出し、住民投票を請求した。ところが市長は臨時市議会で住民投票を否決し、住民投票を行わない。それどころか、2021年6月には市議会が、住民投票実施に関する自治基本条例の条例文(28条1項)を削除という暴挙に出た。
2019年9月19日
那覇地裁に「義務付け訴訟の提起及び仮の義務付けの申し立て」
2020年8月27日
那覇地裁判決、原告の訴え却下
2021年1月20日
福岡高裁、控訴審第1回期日 即日結審
2021年3月23日
控訴審判決 控訴棄却
最高裁に上告
当たり前のことが通らない、このまま最高裁が一審二審の判決を踏襲するなら、地方自治も民主主義もない、そのような思いで、金城さん達は闘っている。
9.6最高裁要請行動
9月6日、早朝から金城さん達3人をはじめ、賛同者、支援者たちが最高裁判所前でビラまきなどの情宣活動を行った。賛同者2万4157筆の署名を最高裁に提出し、要請行動を行った。
衆議院第一議員会館で行われた東京集会で、原告の3人が思いを語った。
金城さん
「僕が会の代表になったのは、一番若いからということでしたが、同時に僕の実家と農園が基地予定地に一番近く、基地建設の状況を見てきたから、その目線から発信しようという覚悟もありました」
川満さん
「住民投票がいまだに実施されていないことに、怒りに近い感情を抱いている。次世代を担う中学生や高校生に、政治に関する不信感を抱かせてしまった。署名活動は大きな盛り上がりを見せ、子ども達にも多大な関心を持たせた。署名して投票に行くと言ってくれた高校生もいた。政治とは未来を語ることだと思う。一度政治に不信感を抱いてしまった彼らは石垣市の未来を語れるか。
彼らに少しでも明るい未来を見せることが私たちの責任だ」
宮良さん
「2018年からこの運動に関わってきた。その時から感じていたのは、この島に自分たちが住んでいないかのように、頭の上でどんどん話が進んでいる、それがこの問題に関わったきっかけ。住民投票運動は、私にとって“私たちはここにいる。透明人間じゃない。意思をもっている。一番直面するのは私たちだから、ここにいるんだとアピールする場にしたい”と思っていた。支援の輪も広がり、6年頑張ってきて良かった」
大井琢・弁護団長から経過報告が行われた。
一審判決は「今の時点では28条1項は廃止されてしまっているから、訴えは不適法」と話にならない。廃止しても、後戻って、それが適用される。そうでなければ何でもできる。
控訴審判決は
・地方自治は間接民主制が基本
・住民投票実施には議会の判断が必要
石垣市は「市民からの請求は拒むことができない」を破り、住民の利益や権利を侵害した。それを裁判所が認めている。住民は選挙の時のみの「主権者」ではない。裁判所は住民ではなく行政を救済する、これが現状。
大井弁護団長は「最高裁が一審や控訴審判決を認めることは民主主義の死を意味する」と訴えた。
まさにその通りである。民主主義を求めて、島での暮らしの継続を願って、最高裁に要請行動を行った石垣島の若者達と連帯しての闘いは、日本を守ることである。 (沢)
-
2024.09.04
日本新聞
関東大震災から101年 政府は朝鮮人虐殺の責任を認めよ
4585号1面記事
関東大震災から101年
政府は朝鮮人虐殺の責任を認めよ
関東大震災時の朝鮮人虐殺は国が扇動したもの。「記録がない」と責
任逃れに終始する政府。加害を認め謝罪し、差別政策を撤廃すべき
1923年9月1日の関東大震災の時に、関東周辺で罪もない朝鮮人が虐殺された。その数は6600人を超える。殺された人の名前も明らかにされておらず、犠牲となった人々の数さえ定かではない。
大震災の混乱に乗じて、「朝鮮人が井戸に毒薬を入れた」「朝鮮人が放火している」など、ありもしない流言蜚語が流され、憎悪に満ちた市民自警団が朝鮮人と見れば片っ端から殺すという、大惨事が引き起こされた。
これは自然発生的に起きたものではない。
「こうした流言が官民いずれから発生したかは確認しがたい。しかし、早くも9月1日の夕方から警察官ないしは警察署が流言を流し、2日には内務省警保局長までその誤認情報を伝達する処置を取った。しかも警察官は民衆に対して朝鮮人虐殺を容認する発言すらした。官憲のこの責任は免れようもない」
「関東大震災時の朝鮮人虐殺とその後—虐殺の国家責任と民衆責任」
山田昭次 著
この書籍には、警察官がいつどのようなデマを流して朝鮮人虐殺を扇動したか、詳細に記されている。
虐殺の国家責任は明白だ。
各地で朝鮮人虐殺の国の責任を求める集会開かる
関東大震災101年の今年、朝鮮人虐殺の国の責任を追及する集会が各地で開かれた。
8月30日には連合会館で、「関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者追悼と責任追及の行動委員会」の主催で集会が開かれた。
総連中央の徐忠彦(ソウ・チュンオン)副議長は「関東大震災時、6600余名の朝鮮人を無差別に殺害した残虐な集団テロ、ジェノサイドだった。根底には日本による朝鮮侵略と植民地支配がある。日本政府は100年以上経った今も、“記録がない”と嘘までついている。東京都の小池知事は朝鮮人虐殺への追悼文を拒否している。群馬県の山本知事は、強制連行の追悼碑を強制撤去する暴挙に出た。日本政府は高校無償化や幼保無償化から朝鮮学校を排除するなど、官製ヘイトとも言うべき措置を取り続けてきた。それに誘発された日本の心無い人々によって、ヘイトスピーチがはびこる深刻な事態となった」と日本の実情を訴え、「日本が加害の歴史を認めることから健全な未来が開ける、日本の市民の活動に光を見る」と語った。
犠牲者の遺族の曺光煥(チョ・ガンファン)さんが証言した。
「私の祖父の兄が1923年9月2日、30歳で関東大震災の時に亡くなった。故郷には両親と妻、2人の娘と5歳になる息子がいた。大叔父の死は、日本で近くに住んでいた同じ村の人が家族に伝えた。生き残ったその人は後頭部に大きな傷を負っていた。生涯トラウマに悩まされて一生を終えた。韓国には、遺体がない人のお墓にその人の好きなものを入れて土饅頭を作る風習がある。法事の最後には日本の方角に家族みんなで向いて黙とうする。大叔父がどこでどのようにして亡くなったのか知りたい。
私が何より憂えるのは,関東大震災時の朝鮮人虐殺の真相が歳月の流れに埋もれることだ。バトンを3世4世に引き継いでいきたい」と語った。
「関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会」代表の山本すみ子さんは、新史料について説明した。当時の神奈川県知事から警保局長に提出された資料である。内地人の朝鮮人に対する殺傷事件、朝鮮人と誤認して、「支那人」「台湾人」「内地人」を殺傷した事件が記されている。犠牲となった朝鮮人は氏名不詳、犠牲となった内地人は住所も氏名も明らかで、加害者は裁判にかけられている。
虐殺の事実は明らかである。これまでの史料では、神奈川の虐殺事件は2件、横浜は0とされているが、実際は横浜を中心に神奈川県内で145人が殺されたことが記されている。
日本政府は遺族に謝罪し、早急に真相究明を行わなければならない。それがアジアの国々との友好・連帯の最初の一歩なのである。(沢)
-
2024.08.28
日本新聞
汚染水の海洋投棄は ただちに停止を
4584号1面記事
汚染水の海洋投棄は ただちに停止を
トリチウムを筆頭に多くの放射性物質含む汚染水海洋投棄を8回も強行。デブリ取り出しは不可能。石棺で覆う放射能封じ込め実施を
8月22日、東電は事故を起こした福島第一原発燃料デブリの試験的取り出し作業を初めて行う予定だったが、手順を間違え中断した。再開のメドは立っていない。燃料デブリは事故で溶けた核燃料が冷えて固まったもので、高線量で人間は近づけない。パイプを5本つなげて、取り出しに使うロボットを2号機に投入する予定だったが、パイプをつなぐ順番が間違っていたため、中断。これまでもロボットの開発の遅れや、堆積物でロボットが進めないなどで、デブリの試験的取り出しはこれまで3回延期され、当初の計画から3年も遅れている。
1号機から3号機まで合わせたデブリは約880トンあると推計されている。試験的デブリ取り出しは、計画通り進んだとしても、2週間かけて3グラム取り出すというもの。
一体どうやって、どのくらいの時間をかけて880トンのデブリを取り出すのか。しかもそれをどこにどうやって保管するのか。
元京大原子炉実験所助教の小出裕章さんは、「国と東電が策定したロードマップは『幻想』です」と断じている。デブリ取り出し一つとっても全く同感だ。小出さんは次のように指摘している。
「国と東電はデブリが、圧力容器直下のコンクリート製の台座に、まんじゅうのような塊になって堆積していると期待していた。格納容器と圧力容器のふたを開け、上からつかみ出す予定だった。ところが、デブリは飛び散っていることがわかった。そこで、国と東電は格納容器の横に穴を開け、横に取り出すと言い出した。作業員の被ばくが膨大になり、しかも格納容器の反対側にあるデブリは取り出せない」
結論として小出さんは「デブリの取り出しは100年経っても不可能。チェルノブイリのように原子炉建屋全体をコンクリート製の構造物(石棺)で封じ込めるしかない」と言っている。
汚染水海洋投棄、デブリ取り出しを中止し、原発からの撤退を
8月21日、「ミライノウミプロジェクト」主催の院内集会と政府交渉が、衆院第二議員会館で行われた。
福島県平和フォーラム、原子力資料情報室、原水禁が呼びかけ団体となり、「『ALPS処理水』海洋投棄を直ちに停止してください」と署名活動を行い、今集会を開催した。
「ALPS処理水」にはトリチウムをはじめ、処理できない放射性物質が含まれている。「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」という約束を反故にして強行している。他の方法を講ずるべきだと話された。
また、通常的に福島第一原発敷地内から雨水での垂れ流しは問題にされていない。
・構内排水路を通って流れ出るもの、これはALPS処理もしていない危険なものだ。ALPS処理はで
きることだ。
・海側遮水壁から汚染水が外に出ている。2019年の東電の発表で1日30トン。
海洋投棄より、はるかに多い放射性物質が日々、垂れ流されているのである。今、海洋投棄されている汚染水はトリチウムが少ないもの、他の核種があまり入っていないもので、これからがますます問題になる。
政府交渉に先立ち、これまでの署名20万7456筆が経産省に提出された。政府は署名に込められた思いを真摯に受け止めてほしいものだ。
ロードマップが崩壊していることについては経産省側は、「3年程度遅れてはいるが、着実に進展している」と繰り返し強調し、「ロードマップ見直しは考えていない」と言い放った。
小出さんが指摘しているように、原子炉建屋全体をコンクリート製の石棺で覆うことが、現時点で有効な措置だと思われる。地下水の流入を防ぎ、汚染水の増大を防ぐ。そして放射性物質の環境への拡散を止める。これ以上、作業員の被ばく、環境汚染を拡大することにストップをかけなくてはならない。
原発再稼働などとんでもない。政府はただちに原発から撤退すべきである。 (沢)
-
2024.08.21
日本新聞
東海第二原発 防潮堤不備、再稼働中止を
4583号1面記事
東海第二原発
防潮堤不備、再稼働中止を
防潮堤の造り直しを求められているのに補強工事で済まそうとする日本原電。老朽被災原発の稼働は危険。再稼働でなく廃炉にすべき
日本原子力発電(原電)は、施工不良がみつかった東海第二原発の防潮堤で、補強工事で対応する考えを示した。防潮堤は安藤ハザマなどの共同企業体が建設したもの。昨年10月に原電によると、取水口が設置されている鋼製防護壁を支える鉄筋コンクリート製の2本の基礎で問題が見つかった。コンクリの充填不足による隙間や鉄筋の変型がある。
原子力規制委は、「防潮堤としては期待できない。地震と津波に耐えられるかわからない。抜本的に設計を見直し、造り直しを含め検討を」と求めた。これに対して原電が回答したのが「補強」なのである。「9月完成」が造り直しでは大幅に遅れるために、「補強」でしのごうとしているのだ。
原子力規制委が安全を第一に考えるのであれば、この「補強案」を受け入れられる筈はない。規制庁の審査担当官は「補強で十分なのか今後の審査会合で議論していきたい」と言っているが、忖度しない正しい判断を求める。
茨城県の大井川知事は「この状況でいまだに工期を変えないのは、地元に対して不誠実じゃないかと思う」と批判している。東海村の山田村長や30キロ圏内の自治体首長からも同様の批判の声があげられている。
こうした原電の姿勢は、福島第一原発事故を起こした東電の姿勢と類似している。原発事故の前に15メートルを超える津波が原発を襲うという資料が提示されていたのに、東電幹部はそれに対応せず握り潰した。理由は経費がかさむからである。その結果、福島第一原発事故という大事故を引き起こしてしまった。15メートルを超える津波に耐えられる防潮堤を造っていれば、事故は防げたのである。いくら経費がかかろうが、それが原発を動かす会社の最優先課題である。それをないがしろにしたために、福島の惨状が引き起こされた。福島だけではない。世界に影響する環境破壊がもたらされたのである。13年半も経った今も、廃炉への道は遠く、被ばく作業が続けられている。
造り直しを命じられても補強でしのぐ、そんな会社に原発を稼働させたら、福島の二の舞である。
危険な東海第二原発再稼働はあり得ない
原発はどれも危険だが、東海第二原発は最も危険な原発だといっても過言ではない。
被災原発
東日本大震災で被災した原発で、5.4メートルの津波に見舞われ、冷温停止に必要な外部電源と非常用電源の一部を失った。かろうじて深刻な事故は免れたが危機一髪だった。
老朽原発
1978年11月に運転開始、46年目の超老朽原発。
首都圏の原発
30キロ圏内に94万人が居住、150キロ圏内首都圏に4000万人が居住。事故が起きても避難など不可能。
2012年7月に地元住民224人が水戸地裁に起こした裁判で、2021年3月18日、水戸地裁判決は、「避難計画やそれを実行する体制が整えられているというには程遠い状態で、防災体制は極めて不十分」とし、運転差し止めを命じた。本来ならこれで再稼働をあきらめるところだが、原電が控訴したため、再稼働の計画が進められてきたのだ。
東電も原電も安全軽視で利潤追求が会社の体質である。事故を起こしても国が支援してくれる、電気料金に上乗せして乗り切る、こうした考えが透けて見える。
福島の被害者の苦しみは今も続いている。被ばくによる健康被害、故郷を奪われた喪失感、経済的な打撃など、何も解決していないのである。二度と惨事をくり返さないためには、原発からの撤退、すべての原発を廃炉にする以外にないのである。 (沢)