-
2024.08.14
日本新聞
敗戦から79年、戦争への動きに歯止めを
4582号1面記事
敗戦から79年、戦争への動きに歯止めを
不戦の憲法9条投げ捨て、解釈改憲で攻撃できる国にし、軍事費倍増、
南西諸島の軍事要塞化。戦争に向かうすべての動きを止める運動を
8月15日は79回目の敗戦の日である。79年前の8月15日、天皇の玉音放送が流され、敗戦が知らされた。
すでに戦況は厳しく、日本の敗戦は明らかであったにもかかわらず、いたずらに戦闘を続けたために、多くの犠牲者を出した。1943年10月21日、神宮外苑競技場で学徒出陣壮行会が行われ、未来ある学生たちが戦場に送り出された。空で命を散らす特攻作戦、海で命を散らす潜水艦回転など、若者たちは死に向かう実に苦しい闘いを強いられた。
1945年3月のアメリカのB29による東京大空襲では、一晩で10万人もの命が奪われた。唯一地上戦を強いられた沖縄戦では、県民4人に1人が犠牲となる大惨事となった。そして1945年8月6日、広島に、9日、長崎にアメリカによる原爆投下が行われ、その年のうちに広島で14万人、長崎で7万人が犠牲となった。その後も今日に至るまで、原爆症で亡くなったり、被爆の後遺症で苦しみ続けている。
天皇をはじめとした上層部が、早期に敗戦を認め降伏していれば、犠牲を最小限にとどめることができたのである。
そして日本の侵略戦争、植民地支配で、アジアの人々2000万人以上の尊い命が奪われたのである。ところが日本政府はアジアの国々に謝罪するどころか、“南京虐殺はなかった”とか、“慰安婦は民間がやったものだ”と、実際にやったことさえなかったことにしようとしている。
このような誠意のない姿勢は、国際社会から非難の的となっている。政府は加害の実際を認め、真摯に謝罪しなければならない。
戦争に向かうすべての政策にストップを
過去の加害の事実を認めず、日本はどこに向かっているのか。それが一番大事なことである。
日本には憲法9条がある。戦争は日本の310万人にのぼる尊い命をも奪った。二度と戦争をくり返すまい、という強い思いで制定された憲法9条である。不戦を明記し、戦力をもたないことを宣言している。
ところが今、日本が向かっているのは何か。憲法9条に真っ向から反対の軍備増強である。自民党は憲法9条をそのままにしておいて、自衛隊を明記すると言っている。実に姑息なやり方である。後から決めた法律が優先するというのを使って、自衛隊を明記することで、戦力不保持を投げ捨てるやり方である。
さらに、今やっているのは、改憲の手続きを何も踏まず、戦争に向かうやり方である。安倍政権時、解釈改憲で集団的自衛権の行使もあり得ると閣議決定した。そして安保関連法の強行採決。戦争法を一括して採択する無謀極まりないものだ。更に岸田政権は安保3文書で、相手のミサイル発射拠点をたたく反撃能力(反撃ではなく攻撃)、軍事費をGDP比2%に倍増する方針を閣議決定した。
このような国の在り方を変える重大なことを、国会審議ではなく閣議決定で決めてしまう。全く民主主義のかけらも存在しない。
今、沖縄を含む南西諸島には、次々自衛隊のミサイル基地が造られ、軍事演習が行われている。自衛隊とその家族が島に移り住み、島のことを決めるにも自衛隊の発言権が大きく、島民の声が反映されないようになっていく。
「台湾有事」をアメリカが宣伝し、政府はアメリカの意向に沿って、南西諸島を軍事要塞化している。島から中国に向けてミサイルを配備する、自衛隊を配備する、それが有事を作りだすことにつながる。米軍が島からミサイルを撃って、自衛隊が引き継ぐ。アメリカはもともと、アジア人同士戦わせる作戦なのである。
敗戦から79年、今、平和と逆行するすべての動きに歯止めをかける運動が求められている。
(沢)
-
2024.08.07
日本新聞
世界遺産認定巡り加害の歴史を消す政府
4581号1面記事
世界遺産認定巡り加害の歴史を消す政府
佐渡金山で朝鮮人が強制労働させられた事実を認めない日本政府。日本と合意し、市民から非難される
韓国政府。加害の歴史は消せない
佐渡金山が世界遺産に認定されたが、大きな問題が残っている。経緯は次の通り。
2010年
国内推薦候補の暫定リスト入り
2021年12月
文化審議会が国内推薦候補に選定。韓国は撤回を要求
2022年1月
政府は推薦見送り方針。自民党内から反発
2022年2月
政府はユネスコに推薦。ユネスコが推薦書の不備を指摘
2023年1月
ユネスコに推薦書再提出
2024年6月
ユネスコが諮問機関による「情報照会」勧告を通知
2024年7月
世界遺産委員会で審査、世界文化遺産に登録決定
日本のマスコミは「日韓 資料の展示で妥結」とか「日韓新時代」などと持ち上げている。
しかし、真相は全く違う。
韓国は昨年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産委員会の委員国に推薦された。世界遺産登録の決定は、21カ国の委員国全会一致が基本原則である。韓国の合意がなければ登録は不可能だ。
日韓の最大の争点は、朝鮮人の強制労働を認めるか否かであった。ところが日本政府は「条約上の『強制労働』には」該当しない」という見解を変えない。しかしこのままでは登録されない。そこで、「朝鮮半島出身者を含むすべての労働者が過酷な環境にあったことを、詳細に展示、説明する」とし、「現地施設において、新たな展示物を展示した」とアピールしたのである。
これに対して韓国政府代表は、「登録決定前に日本が展示資料を設置したことは、過去の約束を履行していないという韓国国内の懸念を取り除くものであり、歓迎する」と応じたのである。
これは韓国の市民が納得できるものではない。ハンギョレ新聞は社説で「日本政府は、韓日間での最大の争点である『朝鮮人強制動員』の強制性については全く認めなかった。2015年の端島(軍艦島)の時より大きく後退している。尹政権は一体誰のための政権なのか」と厳しく批判している。
侵略戦争の加害の歴史を認めてこそ友好・連帯の道に進むことができる
2015年の長崎県の端島(軍艦島)などからなる「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録の時、日本は「意思に反して連れてこられ、厳しい環境で働かされた多くの朝鮮半島出身者らがいた」と認め、「犠牲者を記憶にとどめるために適切な対応を取る」と表明したが、「虐待や差別はなかった」と言う元島民の証言を紹介している。このため、韓国国内では「日本は約束を履行しなかった」という大きな反発が巻き起こった。
今また、侵略戦争時の植民地支配、強制連行強制労働の歴史を認めようとしない日本政府に憤りを抱くのは当然のことである。
ハンギョレ新聞は日本の市民が強制動員を明らかにしたと、佐渡島の称光寺の住職・林さんの活動を紹介している。
――林さんは1991年8月に佐渡鉱山の朝鮮人の煙草配給名簿を確保した。1944年~1945年の太平洋戦争時に三菱鉱業佐渡鉱業所が作成した名簿である。その名簿には400人あまりの朝鮮人の名前、生年月日など記されていた。林さんは3度にわたって韓国を訪れ、被害者を探し出した。被害者から、「逃げて捕まった人が殴られるのを見た」「地元で割り当てがあると言われて佐渡に連れてこられた」「いつも腹がすいていた」などの証言を得た。
日本政府や警察が作った公文書、新潟県の文献にも、太平洋戦争が始まると、金だけでなく戦争に必要な銅や、亜鉛、鉛などが採掘され、1500人あまりの朝鮮人労働者が動員されたと記されている。新潟県の文献には「1939年に始まった労務動員計画は、名称こそ『募集』『官斡旋』『徴用』と変化するものの、朝鮮人を強制的に連行した事実においては同質であった」と明記している――
侵略戦争時の日本の加害の事実は決して消すことは出来ない。加害を認め、謝罪し、そこからアジアの国々との友好・連帯へと進んでいける。加害を認めず、軍事費を増やす政策は、平和と逆行する道である。
(沢)
-
2024.07.31
日本新聞
原発建設費の電気料金上乗せに反対する
4580号1面記事
原発建設費の電気料金上乗せに反対する
現在稼働中の原発は9基、定期点検中3基。汚染水、デブリ処理など問題山積み。安全な原発などない。すべての原発廃炉以外に道はない
経済産業省は原発の建設費を電気料金に上乗せできるようにする制度の導入を検討しているという。東電福島第一原発事故では、政府は被害者よりも事故を起こした東電を支援している。とっくに倒産しているはずの東電が、政府の支援で黒字になって、被害者への支援は次々打ち切られている。
原発建設費を電気料金に上乗せ、これもまた電力会社の負担を減らし、利用者の負担を増やすという理不尽なやり方だ。決して認められるものではない。
岸田首相は6月21日、「安全が確認された原発を速やかに再稼働させる」と言ったが、果たして安全な原発などあるのだろうか。
知れば知るほど危険な原発
現在、日本全国で稼働している原発は9基。
関西電力
美浜原発3号機
大飯原発3号機
大飯原発4号機
高浜原発2号機
高浜原発3号機
高浜原発4号機
九州電力
玄海原発3号機
玄海原発4号機
川内原発2号機
定期点検中
高浜原発1号機
川内原発1号機
そして四国電力の伊方原発3号機である。
これらのうち、美浜3号機、高浜1、2号機、川内原発1号機は40年超えの老朽原発である。美浜3号機は2004年、熱水や蒸気噴出事故で11人が死傷。高浜1号機では蒸気漏れ、4号機では蒸気発生器の破損。
7月26日には、敦賀原発2号機について、原子力規制庁の審査チームが「原子炉建屋の真下に活断層があることが否定できない」とし、再稼働不許可の判断を示唆した。日本原電はこれまで「活断層ではない」と言っていた。これほどの安全無視、無責任極まりない日本原電が進めようとしている東海第二原発の再稼働を何としても阻止しなければならない。
7月18日、東北電力は女川原発2号機の再稼働を11月ごろに延期と発表した。再稼働延期は3回目である。
13年前に事故を起こした東電福島第一原発は、いまだに廃炉の見通しも立っていない。その中、汚染水の海洋投棄が強行され、7月16日、東電は通算7回目の海洋投棄を終え、約7850トンの投棄を発表した。投棄したトリチウム総量は約1兆3000億ベクレル。国際社会からも大きな批判が巻き起こっている。そして超高線量の溶け落ちた核燃料デブリは約880トンあり、それを早ければ8月から試験的に取り出しを始めるというのだ。そんな危険なものを取り出して、一体どこにどのようにして保管するのか。ロボットを遠隔操作して1回に数グラム取りだせるかどうかだというのだから、気の遠くなるような話である。取り出しなど不可能だ。
このように見てくると、岸田首相の言う「安全が確認された原発」など存在しないことがよくわかる。原発再稼働はエネルギー政策として、最も危険であり、原発からの撤退こそが緊急の課題である。
「安全」を語るなら、岸田首相は原発からの撤退を宣言し、再生可能な自然エネルギーへのシフトを急がなければならない。この小さな島国・地震頻発国の日本に54基もの原発を造ったのは、まさに大罪である。そして今また、老朽原発を次々再稼働させ、事故になったら「自然災害で避難できないのは関わりありません」などと言いのける。こうして、地球規模の環境破壊につながる取り返しのつかない大罪を重ねることを、看過することはできない。
良心的な科学者が原発の危険性を指摘している。そして、福島第一原発の事故炉の廃炉についても、具体的な実現可能な道筋をいくつか提示している。
政府は再稼働ではなく、そうした建設的な意見を吟味し、廃炉を進め、原発からの撤退方針を出すべきである。それが安全の唯一の選択である。
(沢)
-
2024.07.24
日本新聞
農家を守る農業政策が日本の未来を拓く
4579号1面記事
農家を守る農業政策が日本の未来を拓く
「ふだんは輸入中心、有事には農産物増産命令」政府の方針は実現不可能で命を守ることはできない。食料自給率を引き上げ食の保障を
ウクライナ戦争、イスラエルとハマスの戦い、いずれも長期化し、解決は難しい状況である。ウクライナ戦争では、NATOがウクライナに武器支援を続けているために、戦争を長引かせ、犠牲を拡大している。イスラエルとハマスの戦いではパレスチナの人々が犠牲になっている。アメリカはイスラエルにガザ攻撃をやめさせるように働きかけているというが、この間もイスラエルに武器を輸出し続けている。
世界の国々が戦争が終わるために動けば、いたずらに戦闘を長引かせることはない。
こうした戦いによって、世界の国々に影響がある。ロシア、ウクライナは穀倉地帯である。そこからの穀物の輸出が滞ることで日本も大きな痛手を被る。ロシア、ウクライナが主要な生産国である小麦の高騰。イスラエルとハマスとの戦闘による石油、天然ガスの高騰。円安の影響が更に追い打ちをかける。
このような中、世界の国々は国内で食料を調達できる体制をとっている。特に大国中国では、今後1年半の食料備蓄に取り組んでいる。
では日本はどうか。今、真剣に考えなければならない時にきている。
日本の農業政策を問う
日本の食料自給率は38%。カナダ266%、オーストラリア200%、アメリカ132%、フランス125%、ドイツ86%、イギリス65%、イタリア60%、スイス51%と比べて、あまりにも低い。
日本の農業政策に大きな問題があることは、この数字からもよくわかる。1970年には、総予算に占める農水予算の比率は11%であった。ところが2023年度には2.2%に低下している。これでは農業の再生は見込めない。今、日本の農家は肥料、飼料、燃料の暴騰、加えて農産物の価格は上がらず、廃業に追い込まれる農家が増えている。
食料の確保は命に関わる重要課題である。政府は農家に対して、生産コストの上昇を国が補てんする、農地を守る交付金などの個別所得補償制度が必要である。外国では当然の制度とされているのに、日本ではバラマキなどと批判される。日本の農家の所得に占める補助金の割合は国際的にも最も低い割合だ。にもかかわらず、「補助金漬け」などと批判される。全く実際ではない。
政府は軍事費だけはうなぎのぼりに引き上げていき、農水予算は減らしていく一方である。これでは農家の所得補償などできない。
食料自給率低下の原因を“日本人の食生活が変わったから”というが、戦後、日本がアメリカの余剰農産物の処理場とされたからである。また、輸出企業が製品を輸出するかわりに、農産物を輸入させられ、日本の農業を衰退させた農政に大きな責任がある。
改悪された農業基本法には、平時は食料は輸入し、有事になったら国内の農家に増産命令を出す方針が記されている。有事になったから急に食料増産しろと言っても、実際には無理である。ふだんから日本の農家に所得補償して主食を作らせるべきだが、政府は田んぼをやめて畑にすることを進めようとしている。これでは食料の備蓄など到底無理である。
外国から食料を輸入することで、添加物や収穫後に輸送に耐えられるように農薬をふりかけるポストハーベストなど、食の安全が問われる問題も起きている。
地産地消、できるだけ小さな範囲(地元)で生産と消費を行う、食料の備蓄、タネの自給を確保するなど、取り組むべきことははっきりしている。農業を守ることは未来を拓くこと、農政の抜本的改革は緊急課題である。 (沢)