-
2025.02.19
日本新聞
福島第一原発 汚染水の空タンク解体開始、作業員被ばく
4609号1面記事
福島第一原発 汚染水の空タンク解体開始、作業員被ばく
タンク解体作業で30代作業員が内部被ばく。鹿児島では原発複合災害訓練実施。原発からの撤退、事故
炉遮へい、汚染水発生防ぐ対策を
2月14日、福島第一原発の汚染水タンク解体が開始された。
2023年8月から、事故炉から発生した汚染水の海洋投棄が実施された。ALPS処理水とは言っても、トリチウムは除かれていないし、他の放射性物質も取り除かれてはいない汚染水である。海洋投棄反対の漁業者はじめ多くの声を無視しての強行である。
福島第一原発事故炉からの汚染水保管タンクは1000基を超えている。これまで、10回、タンク78基分を投棄した。その空になったタンクのボルトを外したり、ガスバーナーで切断したりし、細かく切って、コンテナに入れて原発敷地内の北側に保管するという。
放射性物質は拡散しないのか、作業員の被ばくはどう防ぐのかと疑問が湧く。1日目の14日はタンクのフタを5つに分けて撤去する作業。作業後の検査で、30代の作業員が放射性物質に汚染され、内部被ばくが確認された。
事前に予測できたことだ。21基のタンクを解体するというが、作業員の被ばく対策をやれないなら、作業継続はできないことだ。
タンク解体開始と同じ14日、鹿児島では地震に伴って九州電力川内原発で重大事故が起きたという想定で、避難訓練を実施したという。国と鹿児島県、地元市町、九電など294機関、住民約4800人が参加しての大訓練。
しかし、重大事故の訓練を物々しくやるより、原発からの撤退を考えた方がいい。東電福島第一原発事故は世界を震撼させた大事故である。事故後、ドイツは原発ゼロを実現した。ところが事故に直面した当の日本は、あろうことか今、原発を「できる限り活用」と原発推進策に戻っている。今も事故処理の見通しさえ立っていないというのに。
科学は人類の発展のためにあるべきで、発展とは破壊ではなく生成でなければならない。将来の世代に、核汚染という解決不能の問題を負わせる原発は、果たして科学と呼べるのか。
市民科学者が重要な提言を示している。
「汚染水発生ゼロめざし、長期遮へい管理求める」原子力市民委員会
東電は、21基のタンクを解体した跡地に燃料デブリの一時保管施設を建設することを検討しているという。放射性物質を敷地内のあちこちに分散する、これは汚染を拡散することではないだろうか。総量8トンもある燃料デブリは現在0.7gを試験的に取り出して調べている段階。超高線量で気の遠くなるような工程であり、取り出しは不可能である。
原子力市民委員会はすでに昨年3月、国と東電に提言書を提出している。
1.福島第一原発の廃炉に関わる「中長期ロードマップ」の「汚染水対策」の目標に「汚染水発生量ゼロ」を加え、その達成時期を明記すること
2.「汚染水発生量ゼロ」実現のために、地下水流入を防ぐ原子炉建屋止水を最優先項目に位置付けること、及び建屋止水後の燃料デブリの冷却のために、循環注水冷却システムを現在の開ループ方式から閉ループ方式に変更すること
3.「燃料デブリ取り出し」は、現状では技術的に極めて困難なこと、また、住民と作業員の被ばくリスクが大きいことから、「取り出し規模の拡大」を凍結し、現在の位置で長期遮蔽管理すること
実に明確である。原発事故に対しては、「止める、冷やす、閉じ込める」が原則だと言われている。今、政府・東電が行っているのは、「閉じ込める」ではなく「拡散する」である。原子力市民委員会が提言しているように、汚染水をこれ以上増やさないことが大切だ。建屋への地下水流入を防がず、汚染水を増やし海洋投棄、これでは汚染被害を拡大する一方だ。こんなやり方では、作業員の被ばく、住民の被ばくも拡大する。
政府・東電は汚染水の海洋投棄を即、中止し、事故炉の長期遮へい措置へと方針を変更すべきである。 (沢)
-
2025.02.12
日本新聞
政府は子宮頸がんワクチンの積極的勧奨の中止を
4608号1面記事
政府は子宮頸がんワクチンの積極的勧奨の中止を
東京・名古屋・大阪・福岡でワクチン被害者120名超の裁判闘争続く。
国と製薬会社2社は「病気の原因はストレス」と被害を認めぬ暴挙
2月3日、東京地裁でHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)薬害東京訴訟の原告側反対尋問が行われた。
HPVワクチン薬害訴訟とは
HPVワクチンは2010年末頃から、接種費用の公費負担が行われ、国がワクチン接種を積極的勧奨した。ワクチンは「サーバリックス」(グラクソスミスクライン社・英国)と「ガーダシル」(MSD社・米国)だ。中学生、高校生の女子300万人以上に接種した。ところが接種者に被害が次々表れた。全身の痛み、運動障害、認知機能障害など多岐にわたり、1人の人にいくつもの障害が出て、大変な苦しみを背負い、日常生活も困難になる。学校にも通えない、車いす生活を余儀なくされる人も多い。ワクチンに対する不信が高まる中、国は2013年には積極的勧奨を中止した。
2016年7月に、東京・名古屋・大阪・福岡の4都市の各地方裁判所に被害者たちは、国と2つの製薬会社を訴えて訴訟を起こした。現在、原告は120名を超えている。
そもそも子宮頸がんはワクチンを打たなければならないものなのか。
子宮頸がんの原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)だとされているが、そのウイルスに感染しても2年以内に9割が自然排出されるという。子宮頸がんにかかるのは感染者のわずか0.15%だという。まして、子宮頸がんの死亡者は若い人はごく少ない。定期的に検診を受ければ、早期発見により治癒率は高まる。
ワクチン接種による被害の方が深刻である。製薬会社と政治家の癒着も指摘された。儲けの犠牲にされた少女たちは「私の人生を返してください!」と訴えている。
ワクチンを打つ前は、元気な女の子達だったのである。これからの人生に夢を持ち、将来何になろうかと思いを巡らしていたのである。ところがワクチン接種で人生が一変し、夢を断たれてしまったのだ。
にもかかわらず、2022年4月、国は「専門家が“安全性に重大な懸念はない”と言っているとし、積極的勧奨を再開した。小6~高1女子を対象に、公費での定期接種を再開したのである。
2013年にワクチン接種を始めてから被害者が急激に増え、2013年に積極的勧奨を中止してから2022年の再開までは減り、再開後26カ月で被害の新規受信者数は308人にのぼっている。(現在は全国で545人以上)
ワクチン接種と被害者数とは明らかに相関関係がある。
心因性を主張しワクチン被害を否定する国と製薬会社
2014年に厚労省は被害者の症状の原因を「心身の反応・機能性身体症状」と発表した。ワクチンが原因ではなく、ストレスなど心因性だとしたのだ。これによって被害者は2次被害を受け、一般の病院でも診療を受けられなくなった。ひどい仕打ちである。
2月3日の東京訴訟でも、原告側証人の角田郁生医師が「子どもの時にどういう環境にあったかが影響する。汚い環境にあると病気にかかりやすい。両親が離婚して過度のストレスを受けていた人もいた。ワクチンと関係ない」と言うのを聞き、憤りを感じた。差別に満ちた発言だ。角田医師はマウスの実験をしたり研究室にいる人で、一人の患者も診療していない。自分が発表していることも「知らない」「わからない」と平気で言う。
「自分の上に5人の人間が乗っているような強い倦怠感」「スプーンでえぐられるような頭痛」「学校で意識をなくし、目を覚ました時、それ以前の記憶がなかった」
被害者の体験はあまりにも悲惨だ。それが今も続いている。良心的な医学者達は研究グループを作り、「HPV関連神経免疫異常症候群(HANS)」と被害を命名し、患者の診療を続けている。
これ以上被害を拡大しないために、政府はHPVワクチン接種をすぐさま中止すべきである。 (沢)
-
2025.02.05
日本新聞
子どもの自殺最多の527人、深刻な事態
4607号1面記事
子どもの自殺最多の527人、深刻な事態
小中高の不登校は40万人を超え、毎年100人近い教員が自殺している。
子どもも教師も希望を持って生きられる差別反対の教育改革が急務
2024年の小中高生の自殺者数は527人で過去最多となった。
小学生 15人
中学生 163人
高校生 349人
これは実に深刻な問題である。
子どもは未来の日本を切り拓く大きな力である。本来、希望に燃えた存在だ。その子ども達が明日に絶望して、自らの命を絶つ、これは日本社会に未来がないことを示すと言わざるを得ない事態だ。
新聞報道などでは「コロナ禍以降高止まり。コロナで生活が変ったからだ」などと言われているが、果たしてそうだろうか。
原因として、「学校問題」が44%を占めている。実際、教師にしかられた直後に自殺したという子どももいる。同級生に壮絶ないじめにあっていた子どももいる。差別に押しつぶされて命を絶った子どもが多いと考えられる。
また、不登校も増え続けている。2023年度に不登校だった小中学生は34万6482人にのぼる。前年度に比べて4万7000人増、16%も増えている。高校生の不登校は6万8770人である。小学生の不登校は13万370人で10年前の5倍、中学生は21万6112人で10年前の2.2倍となった。
学校に行けば差別される、いじめられる、話ができる友達もいない、そんな子ども達の孤立した状況が不登校や自殺という結果を引き起こしている。
そして学校には、子ども達の苦しみを解決する力が全くない。それは教育現場で病んでいるのは、子どもだけではなく、教員も犠牲となっていることが示している。
毎年100人近くの教員が自殺している
自殺しているのは子どもだけではない。教師もまた、自殺に追い込まれている。実に毎年100人近くの教員が自殺しているのだ。
特に新任教諭が自殺へと追い詰められている。
2006年6月
新宿の小学校で23歳の新任女性教諭(23歳)が、毎日書類を書いてソファで寝る生活で、保護者からは「結婚も子育ても未経験で信頼できない」などとクレームをつけられ、疲れ果てて自殺。
2006年10月
西東京の小学校の25歳の新任教諭は、睡眠時間3時間で仕事漬け。保護者からは深夜も休日も携帯に電話がかかり、ストレスがたまり自殺。
2019年9月
福岡県の24歳の新任教諭が教室で首つり自殺。遺書に「人のためにと思って就いた職業。あこがれた仕事。子どもに迷惑をかけてしまう。大好きな子どもなのに。さようなら」と記していた。
教員の精神疾患も増えている。公立学校教員の1か月以上の長期療養者数(2022年度)は、
全体 12192人
20代 3096人
30代 3380人で、
20代は2016年度に比べて2.41倍、30代は1.89倍と増えている。
自殺した教員もそうだが、心が壊されている教員も、相談する相手もいなかったのだ。それどころか、叱責されたり嫌味を言われたり、新任の教員を励まし育てる現場ではないから、心が病んでしまう。
そのような教師集団が子どもの抱えている問題に心を砕いたり、子どもが元気になるような教育実践ができるわけがない。子どもを差別から解放するには、まず教師が差別から解放されていなければならない。子どもに対する教師の差別、教師の間の差別、それを解決しなければ、子どもの命を守ることは出来ない。
子どもと最も近いのは新任の教員だ。若い教師が書類の作成で夜中まで働かされ、子どもと元気に遊ぶこともできない、これでは子どもの声を聞くこともできない。
学校の主役は子ども達である。子ども達が共に学び、成長していける教育現場への抜本的な改革が必要とされる。 (沢)
-
2025.01.29
日本新聞
軍備増強は抑止ではなく戦争への道
4606号1面記事
軍備増強は抑止ではなく戦争への道
日米軍事同盟強化は自衛隊が米軍の指揮下で動くこと。戦争抑止は平和外交でこそ実現できる。軍事に金をかけず貧困層の支援第一に
1月21日、米ワシントンで日米豪印4か国の戦略対話(QUAD)外相会合が開かれた。トランプ米大統領就任後初の会合だ。QUADは中国に対抗するためのもので、「力または威圧により現状変更を試みるいかなる一方的な行動にも強く反対する」という。では日米豪印で軍事同盟を組み、中国に対抗し、合同軍事演習を繰り返すのはどうなのか。「力または威圧」に当たらないのか、はなはだ疑問だ。
岩屋・外相は米国務長官と会談し、「新たな高みに日米同盟を引き上げることで一致した」と発表した。新たな高みとは一体どのようなことなのか。
翌2日、中谷・防衛相は沖縄県与那国町で糸数町長と会談した。中谷・防衛相は「敵のミサイル攻撃を受けた際に住民が避難するシェルターの整備、政府と自治体による共同訓練などに、最大限努力する」と語った。
与那国島は日本で最も中国に近い島である。与那国島の島民は歴史的にも平和を愛し、争いとは無縁に生きてきた。他国の国民とも平和的に友好を重ねてきた。「敵」とは一体どこのことか。
アメリカが喧伝する「台湾有事」を理由にして、アメリカの要請どおりに軍事費倍増を決めてしまった政府。南西諸島にはミサイル基地がどんどん造られ、ミサイル、弾薬が配備されている。そして「有事」の際には島の人たちはどこに逃げるのか、シェルター整備、避難訓練と、危機感を煽っている。
抑止力、実は戦争へと向かうもの
“戦争にならないようにするために”と、軍備増強が行われている。アメリカの安全保障専門家からは、「日本は防衛費をGDPの3%まで増やすべきだ」という主張が出ているという。日本はどこまでアメリカの要求に応えようとするのか。日本の経済はすでに破たん状況である。GDPに対する政府債務残高の比率は250%を超えているのだ。
世界の中で、30年以上労働者の賃金が上がっていない国は日本以外にない。数字上いくらか賃金が上がっていても、物価の上昇率を下回っているため、実質賃下げが続いている。
日本の大企業はバブル期を超える利益を上げ、内部留保金も過去最大を更新している中で、働く者は貧困にあえいでいる。給食以外にはろくにご飯を食べられず、冬休みや夏休みには給食がないため、ひもじい思をしている子ども達がいるのが、日本の現実なのである。
このような中、莫大な予算を、防衛省は湯水のように軍事費に費やしている。ミサイル研究開発、イージス・システム搭載艦建造、無人での攻撃能力推進、宇宙システム管理、防衛通信衛星打ち上げ、弾薬・火薬などの新設(全国12施設に57棟の火薬庫新設決定)等々、防衛ではなく、明らかに攻撃のための軍備増強である。
もはや南西諸島だけのことではない。日本全国に、米軍の戦略を遂行するための基地が造られている。米軍の戦略は、日本と中国を戦わせ、高見の見物ということだ。アメリカは経済的にももうすぐ中国に追い抜かれる、それを避けるために中国にダメージを与えたい。そのために自衛隊はじめ、日本の若者が危険にさらされるのである。
軍備増強してアメリカと歩調を合わせることは抑止力ではない。「有事」を引き起こすことである。南西諸島の島々の住民を命の危険にさらすことだ。
軍備増強ではなく平和外交で、アジアの平和・友好をかち取ることが、戦争を止める最良の道である。軍事に金をかけるのではなく、貧困に苦しんでいる日本に住む人々の救済に予算を使うべきである。野党はそのために全力を尽くす時である。 (沢)