日本新聞
東電、12回目の汚染水海洋投棄強行
4619号1面記事
東電、12回目の汚染水海洋投棄強行
汚染水のトリチウム総量を今年は昨年度より増加方針。2回目の超高線量デブリ取り出しは3グラム。原発は廃止、放射性物質投棄止めよ
福島第一原発事故から14年経った。事故を起こした東電は4月10日、事故炉の核燃料に触れた汚染水の12回目、今年最初の海洋投棄を強行した。
東電はALPS(多核種除去設備)で処理したから汚染水ではないと言っている。しかし、ALPSでトリチウムは除去できないし、トリチウム以外の62の放射性核種が排水基準を超えていることが明らかになっている。
原発事故によって大きな打撃を受けた三陸の漁師の皆さんは、必死の努力を続けてきた。獲った魚の線量を測り続け、ようやく原発事故の被害をはねのけ、漁業の再開をかち取った。その矢先に汚染水の海洋投棄が強行された。“放射性物質の処理については、当事者の同意なしには行わない”という約束だったが、当事者である漁協の反対を無視して2023年8月末から始められた。風評被害ではなく、実質被害がまき散らされることになってしまったのだ。
4月10日には12回目の海洋投棄が強行された。漁業者の生業も、消費者の健康も全く眼中にない暴挙と言うしかない状況である。
危険極まりないデブリ取り出しも強行
4月23日には溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の2回目の試験取り出しが強行された。東電は、1回目に比べて量も多いし時間も大幅に短縮できた」と見通しがあるかのように発表している。1回目は0.7グラム、2回目は3グラム程度の取り出し。デブリは総料880トンあるという。全く気の遠くなるような話だ。しかも、デブリの放射線量はあまりにも高線量で、人間は即死してしまうため、遠隔操作である。東電は「回収した試料を分析し、燃料デブリの保管方法の検討などに役立てる」と言うが、そんな危険なものを取り出してどうするのか。保管する場所も方法もない。危険なデブリは閉じ込めておく以外に方法はないという、良心的な専門家の意見を聞くべきである。
原発事故が起きたら、止める、冷やす、閉じ込める、だというが、3つ目の閉じ込める、がいまだにできていない。毎日4000人の作業員が廃炉作業を行っているが、被ばく作業を余儀なくされているのである。
福島第一原発事故を教訓にするなら、日本は世界のどこの国よりも早く、原発から撤退しなければならない。ところが政府は、全く逆の原発を最大限活用という方針を出し、原発再稼働へと動いている。昨年12月に政府が公表した第7次エネルギー基本計画では、2023年時点で原発は総電力量の9%、それを2030年には20~22%にする、そのために現在14基の原発稼働を30基にしなければならないというのだ。これは実に無謀である。
すでに日本の原発は老朽原発がほとんどである。だから40年といわれている原発の寿命を60年、あるいはそれ以上に伸ばしている。原発事故後10数年停止していたからその期間は寿命からはずすなどという、全く非科学的な論まで出てきている。運転していなくても経年劣化は進む。根拠もなく原発の寿命を延ばすなど、安全軽視そのものである。
安全対策を怠って原発事故を起こした東電が、福島第一原発と同じ構造の柏崎刈羽原発の再稼働をねらっている。福島第一原発事故収束の見通しもなく、事故の全貌も明らかにせずに、柏崎刈羽原発の再稼働など認められない。地元では県民投票を求める声があがっている。当然のことであるが、知事はそれを認めない。
汚染水の海洋投棄、デブリ取り出しをやめ、原発からの撤退策を政府は急ぐべきである。 (沢)