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2025.06.18
日本新聞
農家が生きられる持続可能な農政へ
4625号1面記事
農家が生きられる持続可能な農政へ
「今こそ日本の食と農を守ろう」緊急集会開催。減反を見直せ!食べ物は国産で!
農家に欧米並みの所得補償を!これらは実現可能なこと
コメ問題が一向に解決が見えない中で6月5日、参議院議員会館で「今こそ日本の食と農を守ろう」緊急集会が行われた。
集会に先立ち、令和の百姓一揆実行委員会事務局長の高橋宏通さんから「備蓄米の次はMA米(ミニマムアクセス米)でアメリカから輸入を増やす話が出ている。日本の税金でアメリカの農家に所得補償することでとんでもない。日本の農家に所得補償すべきだ。今日の集会を、日本の農業を守り、日本の食を守り、日本の子ども達の未来を守る集会にしていきたい」と訴えられた。
生産者からの声
日本の種子を守る会会長、JA常陸組合長の秋山豊さんは「私の地元では農家は35%の水田で転作させられている。今年農水省は「転作を1%緩和する」と発表した。それでいいのか。
生産者米価(60キロ)は
令和3年 1万100円
現在 2万4000円
5キロ精米で農家がもらってるのは2300円、約半分。農家にとっては高くない。
異常高温障害で打撃を受けた。1等米は5割、新潟米はゼロに近かった。農水省の作況指数は101で平年並み。これは間違い。適正な生産者米価にすべき」と指摘。
静岡県の米農家の藤松泰通さんは「米農家の廃業、倒産は過去最高。政府は、輸入米を入れる、農業の大規模化を言うが、大規模化は農薬、化学肥料を多大に使用、農村のコミュニティも壊れる。今後10年で農家は半減。農業は国防そのものだ」と主張した。
新潟の米農家の石塚美津夫さんは「農林予算を見ると、スマート農業の予算は農機具メーカーにいき、区画整理事業費は土木業者にいく。安心して翌年もお米が作れる世界、安心して翌年もお米が買える世界にしていきたい」と訴えた。
パルシステム産直事業本部の黒井洋子さんは「日米関税交渉のテーブルに、大豆、トウモロコシをあげたことは残念でならない。大豆の自給率は6~7%、アメリカから65%を輸入。輸入大豆は情報が示されず“国内製造”表示。食料自給率の向上、フード・システムの構築が大事」と指摘した。
各分野から
日本消費者連盟事務局長の纐纈美千世さんは「日本消費者連盟は、緊急声明“食の売り渡しに断固反対します”を出し、27団体から賛同を得ている。農家が置き去りにされ、価格だけ問題とされている現状に怒りを感じる。日本消費者連盟の創設者・竹内直一さんは“食べ物は商品ではない。命を育むものだ”と言っている。農家と消費者が手を結んで、農業をどうしていくか考えていこう」と呼びかけた。
愛知大学農業経済学教授の関根佳恵さんは、「小規模農業は効率が悪い、生産性が低い、というのは実際ではない。EUは大規模農業の補助金を削って、小規模農家に回している。農業予算は、フランスは日本の2倍、米国・韓国は日本の3倍」と日本の農政の問題点を指摘した。
ノンフィクション作家の島村菜津さんは「子どもの心とからだの健康を死守したい。農家の声、消費者の声、本当の声を出していこう」と訴えた。
全国有機農業推進協議会理事長の下山久信さんは「毎年5000ヘクタールの農地がなくなっている。この10年で5万ヘクタール減った。10年後、6割の農地の受け手がない。大問題だ。このままいったら国が終わる。社会のあり方を根本的に転換しなければならない」と警鐘を鳴らした。
農家への所得補償実現のために行動を起こそう
元農水大臣・山田正彦さんは「なぜ今、日本の米が不足しているのか。生産者は米を作ると赤字だ。農家が米を作れるだけの所得補償しなければならない。私が農水大臣時代、4000億円の所得補償をした。今、5000億円あれば所得補償できる。国会や政府に署名を送るなり、行動を起こそう」と力強く呼びかけた。
最後に令和の百姓一揆実行委員会代表の菅野芳秀さんが「農地改革で475万の自作農が生まれた。今、70万を切ろうとしている。米農家の平均年齢は70歳を超えている。米作りのたすきを受け取ってくれる人がいない。命の危機だ。国会議員に命がけでやってほしい。我々も、日本農業、日本の農村を守るために全力を尽くす。一緒にやりましょう!」と熱烈に呼びかけた。
小泉農相に、「農家に所得補償はしないのか。備蓄米を輸入ではなく、日本の農家に作ってもらうというのはないのか」問うたら、「そういう政策はない」という返事が返ってきたという報告もあった。備蓄米を放出したら輸入米、これが政府の方針であり、これでは危機を脱するどころか、日本農業壊滅が避けられない事態になる。
農家と消費者が力を合わせて、亡国に向かう悪政にストップをかけなければならない。 (沢)
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2025.06.11
日本新聞
農家への所得補償がコメ問題の解決
4624号1面記事
農家への所得補償がコメ問題の解決
小泉農相の備蓄米随意契約、30万トンだけ低価格販売は解決にならない。生産者が見通しをもってコメを作れる具体策を打ち出すべき
江藤農水相(当時)が消費者のことを何も考えない問題発言をして更迭になった。新農相となった小泉進次郎農相は備蓄米の随意契約を開始し、5キロ2000円で備蓄米が店頭に並ぶと明言した。政府が放出する備蓄米は2022年産米が20万トン、2021年産米が10万トン。5月29日時点で22万トン61社が確定した。1回の引き渡し量の裁定が10トンか12トンであり、精米設備を持っていなければならないことから、小さな米穀店には手が出ない。対象はあくまで大手企業に限られる。残りの8万トンは、“不公平感を拭い去るため”として、スーパー6万トン、米穀店2万トンの枠を設定すると言うが、それでも対象は絞られる。
備蓄米の随意契約では解決にならない
政府の備蓄米は100万トンだというが、これは年間必要量の1.5か月分にすぎない。全部放出したとしても焼け石に水であるが、そのうち30万トンの放出で解決は見えない。備蓄米を放出してしまったら、食糧危機にどう備えるのか。
小泉農相は“消費者目線で”などと言っているが、すぐになくなる安価な備蓄米放出では先が見えている。生産者のことを真剣に考えるべきである。
日本の農家は先祖代々引き継がれてきた農地を大切に守り続けてきた。減反や転作奨励などで振り回されて苦しい目にあわされながらも、食料供給の責任があると、米を作り続けてきた。長い間の米価引き下げで、米作りでは生きられない中も、兼業しながら米作りを続けてきたのが今の米農家である。
こうした生産農家に所得補償をし、米価を安定させて消費者が安価な米を買うことができるようにする、これが唯一の解決策である。石破首相は「所得補償を考えていないわけではない。努力している農家には補償したいが、やみくもに行うわけにはいかない。精査しなければならない」と言っている。この最悪の農政の中で、努力しないで農業を続けられるわけがない。努力していない農家など存在しない。
政府は大規模農家だけ残して、更なる大規模化を行うことが農業改革だと言っている。ドローンやヘリコプターで農薬をまく農業だ。これは日本の国土の現状を全く無視している。日本は山間地や狭い土地が多く、大規模農業ができるのは農地のせいぜい3分の1である。残りは家族農業など小農が守ってきた。それをつぶしてしまって、3分の1の土地で日本の食料をまかなうことができないのははっきりしている。
世界では小農が中心の農業こそが、生き残る農業だと確認されている。2018年12月、国連総会は国連宣言(小農権利宣言)を121か国の賛成多数で採択した。日本は棄権している。小農が守ってきた日本の農業の実態を全く無視した姿勢であり、日本の農業を壊滅させる方向が見える。
今日の米農家、酪農家、野菜農家など全ての農家の苦境は、農家の実態を見ようともしない政治が根源である。
今、米価が上がったといっても30年前に戻ったにすぎない。そして上がった米価が農家の所得に反映されているかと言うと、決してそうではない。
農村で農家が安心して暮らせる補償があれば、農村に産業がよみがえり若者の職も生まれる。現在のような東京、大阪などの大都市に人口が集中する状態では、一気に食料危機に直面するのは避けられない。日本が生き延びるためには政治の大改革が必要不可欠である。
今日のコメ問題の解決は農家への所得補償なしには不可能である。そのために必要な額は4000億円、軍事費60兆円をやめれば、ただちに実現可能だ。 (沢)
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2025.06.04
日本新聞
狭山事件の再審を求める市民集会に全国から結集
4623号1面記事
狭山事件の再審を求める市民集会に全国から結集
「石川一雄さん追悼!第4次再審闘争勝利!東京高裁は再審開始を!」
狭山差別裁判闘争はすべての差別反対、すべてのえん罪晴らす闘い
5月23日、「狭山事件の再審を求める市民集会」が開催され、日比谷野音に全国から差別反対の思いでかけつけた。去る3月11日、石川一雄さんは急逝された。殺人犯のえん罪を着せられ62年、人生を奪われたといっても過言ではない。しかし、石川さんは屈せずに差別反対を闘い抜いた。
石川さんの遺志を継いで、早智子さんがすぐさま第4次再審請求した。今集会は第4次再審のスタートとなる集会だ。
開会のあいさつで西島・部落解放同盟中央本部委員長は「いよいよ証人尋問が始まるのではという強い思いをもって望んでいた中での石川さんの死は、残念無念だ。これを乗り越え、第4次再審勝利を一刻も早く石川さんに届けたい。新100万人署名を全国的に強化し、できるだけ短期間に100万人署名を達成し、世論を動かす原動力にしたい。同時に今国会で再審法の改正をかち取っていかなければならない」と訴えた。
作家の落合恵子さんは「私は敗戦の年に生まれた。これを必然として生きてきた。そしてこの国で差別される側の母の娘だ。誰かが自分の努力でどうにもならないことで差別されているのを見たら、それは私の痛みだと生きてきた。石川さんの苦しみを一人の苦しみ、一人の悔しさにしてはならない。ボブ・ディランが“罪人とは、間違ったものを目にして、それが間違っていることに気づいたにもかかわらず、それから目をそらしてしまうことだ”と言った。本当にそうだと思う」と語った。
社民党の福島みずほ参議院議員は「今国会で再審法改正を何としても実現したい。一つは証拠開示、もう一つは検察官不服申し立ての禁止。今国会で何としても再審法の改正をしたい」と決意を述べた。
「生き抜いて無罪判決をかち取る」と早智子さん
早智子さんは悲しみを胸に、それを乗り越え闘う思いを語った。最初に石川さんが書き残した短歌を詠んだ。
● 権力にごまする司法聞こえるか/絶叫するわれの声が
● 真相は心の目では見えずとも/科学の進歩を重視されたし
● うぐいすが四季を問わずに泣き続け/無罪明白再審しろと
そしてこう語った。
「私は今、78歳です。なんとしても生き抜いて無罪判決をかち取りたい。一雄に今もかかっている見えない手錠をはずしたい。今の再審法では再審開始決定をかち取っても、再審もない。検察の上訴でいつまでかかるかわからない。検察は無実な人をどこまでも追いかけ、無罪判決を否定する。石川の無念と苦しみを二度と繰り返させないでください。苦しい人生の中でも一雄は「生まれ変わったらまたこの村に」と詠んでいる。
次の世もうまれしわれはこの村に/兄弟姉妹と差別根絶
彼は苦しい人生ではあったけれど、皆さんからこんなに支援され、愛され続けてきた。彼の人生は決して不幸ではなかった」と心に迫る言葉だった。
1972年から人生をかけて狭山事件の弁護を続けてきた中山弁護士が、車いすでかけつけた。
「1972年10月に石川さんから手紙をもらった。“自分は部落差別の中で教育を受けられなかったことに対しては恨まないが、教育を受けれなかった者に対する国家権力の冷酷さが許せない”と書いてあった。この言葉が私の弁護士としての原点となり、狭山弁護団で活動してきた。石川さんの無罪を求める闘いの根底には、部落差別にたいする人間的怒りと仲間への連帯の心情があった。狭山事件は部落差別に基づくえん罪事件であることを何としても認めさせなければならない」と力強く訴えた。
足利事件の菅家さんをはじめ、えん罪事件の被害者の方々から「狭山再審をともに闘う」と連帯のあいさつが続いた。
日弁連再審法改正推進室長の鴨志田祐美さんから、経過報告があった。
「再審法改正は今、手が届くところにきている。昨年3月、全部の政党がメンバーとなった超党派の再審法改正をめざす国会議員連盟が立ち上がった。今年5月8日現在で議連のメンバーは386名、国会議員は約700名なので過半数を超えている。去年の秋ぐらいから法案作りを始めて、いよいよ国会に上程する改正法案を作る最終段階に差し掛かっている。証拠開示についての命令、再審開始決定が出たら検察官の不服申し立ては一切認めない、有罪判決をした裁判官はその後の再審には関われない等々盛り込まれている。
ところが、議連の法案を出すためには、各議連のメンバーが所属している政党が承認しなければならない。問題なのは自民党。“法制審議会にきちんと諮問して、内閣提出法案で出さなければダメ”という自民党議員も出てきている。法制審に任せていたら、何年経っても法改正は実現しない。国会がんばれと応援しよう」と呼びかけた。
袴田事件では、再審決定に対して検察が抗告、その後、再審開始まで9年もかかったのである。人権侵害もはなはだしい。
石川早智子さんと連帯して、狭山第4次再審請求を闘い、再審をかち取り、石川さんの無罪をかち取ろう。狭山の闘いは石川さん一人の闘いではない。すべてのえん罪を晴らす闘いであり、すべての差別反対の闘いである。 (沢)
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2025.05.28
日本新聞
4622号1面記事 国が横田基地PFAS調査、地下水汚染の解決を
4622号1面記事
国が横田基地PFAS調査、地下水汚染の解決を
立ち入り調査で幕を引こうとする国と東京都。「周辺の土壌や地下水
の汚染調査が必要」と市民団体。日米両基地や企業の責任を問うべき
昨年8月、豪雨の影響で横田基地の貯水池から約4万7000リットルのPFAS汚染水が基地外に流出した。米軍は10月に日本側に伝達。12月に国や都、周辺自治体が基地内に入り、現場で説明を受けた。そして5月14日、国や都が横田基地に立ち入り調査した。
PFASは自然界では生成も分解もできない「永遠の化学物質」と言われ、蓄積されやすい。発がん性も指摘される有害物質である。
昨年8月に漏出が起きてから9カ月も経って初めて、立ち入り調査し、サンプル採取。このサンプルは米軍のPFAS浄化装置を通過させて浄化された水である。それが日本の目標値1リットル当たり50ナノグラム未満であれば排出を許可するという。結果が出るまで2週間かかるという。
漏出したのは浄化した水ではなく、貯水池の汚染水である。米軍によると、貯水池には約150万リットルの汚染水が貯まり、PFAS濃度は1リットル当たり約1240ナノグラムである。これが流出したのだから、環境への影響は大きい。住民の命を守ることを第一に対策が講じられなければならない。
横田基地によるPFAS汚染は今に始まったことではない。
2003年
多摩地区の下水処理場から高濃度のPFOSが検出。その後、横田基地の排水から高濃度のPFOSが検出。
2012年
横田基地で推定約3000リットルの泡消火剤を漏出。米軍は事故を隠ぺい。
立川市西砂町の井戸から1340ナノグラムのPFOS検出。
2019年
同じく西砂町で最大525ナノグラム検出。
2021年
都が立川市、府中市など7市で11浄化施設と34本の井戸からの取水停止。住民の血液からPFAS検出。
これでも都知事は米軍に抗議すらしない。横田基地だけではない。沖縄でも嘉手納基地近くの北谷浄水場の水源の河川などから高濃度のPFOS、PFOAが検出されている。日本全国の米軍基地が汚染源となっている。ドイツでは米軍基地周辺の浄化費用は米軍が出しているが、日本では政府と地方自治体が負担している。全く理不尽である。
ダイキンなど企業の責任は明らか
日本の企業ではダイキン工業とAGC(旧旭硝子)が世界主要有機フッ素メーカー8社に入っている。これらの企業の排水垂れ流しによる河川や地下水汚染、大気汚染は深刻だ。
2012年6月
環境省のPFOS・PFOA汚染調査で第1位が摂津のダイキン工業淀川製作所近くで、1リットル当たり5500ナノグラム。ダイキンは少なくとも1960年代後半から2015年までの45年間以上、PFOAを製造・使用し、排水を地域の用水路に流していた。住民は用水路から水を引いて農作物を作ってきたのだ。
1953~55年
東淀川区と摂津市の一部で、農牛47頭が怪死。ダイキンは4台の耕運機を配った。
1955年6月
1963年6月
1973年6月
無水フッ素ガス漏れで、農作物被害、340世帯避難、用水路には死んだ魚が浮いた。
当時の府知事はダイキンの責任をあいまいにし、事態を放置。府知事の後援会長がダイキンの会長だった事実がある。ここにも政治と企業の癒着があり、住民が犠牲にされてきたのだ。
PFASの危険性も知らされず、便利なペットボトル、こげつかないフライパンなどと生活全般にPFASを取り入れさせられてきた。企業は危険を承知で儲けるだけ儲けるというのが本質だ。問題になったら、それをやめて、次の儲けの手段を考えるだけである。
汚染源をはっきりさせ、汚染の根源を断たない限り解決はない。米軍も企業も、住民の命や健康など二の次三の次である。私達市民が力を合わせて、米軍や企業の責任を問うように政府に求めていかなければならない。 (沢)