-
2024.07.17
日本新聞
中国の軍事脅威強調の防衛白書に中国が抗議
4578号1面記事
中国の軍事脅威強調の防衛白書に中国が抗議
「台湾有事」は日米の宣伝、それを口実に南西諸島軍事要塞化、軍備増強。「防衛」をかたり、島民を戦争の犠牲にすることは許されない
2024年の防衛白書が12日の閣議で報告された。例年であれば、その日の夕刊か翌日の朝刊でその中味が報じられるが、今回は防衛白書自体を取り上げている新聞は少なく、「自衛隊員218人処分」がトップ記事である。
防衛省は、特定秘密の不適切運用、パワハラなどで自衛隊員218人を処分したという。その他にも、海自の潜水艦の乗員が川崎重工から不正に金品を受領していた問題がある。自衛隊という組織自体が病んでしまっているのが実際である。自民党の裏金問題にも見るように、まさに「今だけ、金だけ、自分だけ」がまん延し、市民のための政治も望めないし、安全を守ることも二の次三の次なのである。
これまで米側は、日本で情報流出が起きても、十分に重い処分が科されてこなかったことに不満があったという。つまり、今回、処分に踏み切ったのは、米側に対して「日本は情報を守る。これだけ真剣にやっている」というアピールだったのだ。
マスコミもそれを大宣伝して、防衛白書についてはあっても小さな記事で終わっている。
中国、朝鮮共和国の脅威を強調し、軍備増強を正当化
2024年の防衛白書では、中国について、「日本列島から沖縄、フィリピン、そして伊豆諸島から小笠原諸島、グアムまで活動を活発化させ、ロシアとの連携強化の動きを一層強めている」としている。
南西諸島にミサイル基地を置き、軍事要塞化して緊張を高めているのは日本である。「台湾有事」を言い始めたのはアメリカであり、それを受けて日本は南西諸島の軍事基地化に乗り出した。
「台湾有事」というが、台湾では8割が現状維持を望んでおり、中国が台湾に攻撃する可能性は低い。米軍が南西諸島の島々からミサイルを発射すれば話は別である。南西諸島が危険にさらされる。その時、米軍は撤退し高みの見物、あとを引き継ぐのは自衛隊である。つまり、「台湾有事」はアメリカと日本が作り出すのであり、南西諸島周辺が危険だ、というのは偽りである。
日本の平和と安全、国際秩序強化のために、同盟国・同志国などと協力して対応、これは実に危険な表現だ。「有事」をかたって、戦争に突入する準備を行っているのである。
朝鮮共和国については、核・ミサイル能力の向上に注力している、と危険視している。
このように見てくると、日本はアメリカと歩調を合わせ、どんどん敵を作っているのがわかる。
今回の防衛白書について、中国は強く批判している。中国外務省の林剣報道官は「乱暴に中国の内政に干渉し、いわゆる『中国の脅威』を騒ぎ立て、地域情勢の緊張を誇張している。中国は強く不満であり、断固として反対する」と語った。
また、解釈改憲で集団的自衛権行使容認の閣議決定から10年を経た今回の防衛白書から、安保関連法に関する特集が削除された。こうして解釈改憲を既成事実にしようとしているのではないか。集団的自衛権の行使容認、安保3文書、武器輸出などすべて憲法違反であり、認められない。
自衛隊のなり手不足が深刻だというが、当然である。アメリカと手を組んで、アジアの国を敵視し、戦争に向かっている中で、真っ先に戦場に向かわせられるのが自衛隊だからである。
中国は今、経済的にも日本をはるかに抜いて、アメリカをも、あと数年で追い抜くと言われている。国際的にも大きな影響力をもつ中国を敵視するのではなく、力を合わせてアジアの経済圏の発展に向かうことが、日本にとっても建設的な未来に向かうことである。戦争ではなく平和への道を。
(沢)
-
2024.07.10
日本新聞
子どもの自殺が年々増えている日本の病巣
4577号1面記事
子どもの自殺が年々増えている日本の病巣
小中高生の自殺が2020年から急増し続けている実態。自殺の6割「原因不明」はありえない。問題を直視し子どもが希望を持てる社会に
札幌市立中学1年女子生徒が2021年10月、いじめが原因で自殺した。生徒の両親は「何度もいじめ被害を訴えていたのに、学校が放置し続けた」と、7月5日、札幌市に約6500万円の損害賠償を求め、札幌地裁に提訴した。
今年2月に、第三者による調査委員会が公表した報告書では、生徒は学校のアンケートに「仲間外れや無視をされる」と何度も答えていた。6年生の時には「どれいあつかいされる」と書いていたという。調査委員会は、「髪の毛を引っ張られたり、絵の具で服を汚されるなどのいじめも受けていた、学校側が適切に受け止めず、対応しなかったことが自殺につながった」と結論づけた。
訴状では、小学5年から2年以上、陰湿ないじめを受け、「終わりの見えない苦痛、屈辱を感じる慢性的ストレスを受けた」と主張している。
生徒の父親は「学校の先生方や市教委には、娘を死に追い込んだことについて責任を自覚し、償ってほしい」、母親は「いじめられ続け、被害を訴えても、先生方が誰も助けてくれなかった。どれだけ娘が悩み苦しんでいたかと思うと、悔しくてなりません」と訴えている。
第三者の調査委員会が調べてすぐわかるいじめを、学校側が把握できないわけがない。いじめを問題にもしない教育現場に深い闇がある。
いじめは日々、陰湿化し、教師も一緒になって葬式のまねごとをしていた事例や、いじめられた女子生徒が凍死したあとも「死んでサッパリした」とSNSに書き込んだり、心が病んでいるとしか言いようがない。校長も「死んだ一人より、生きている(いじめた)10人の未来を考えなければならない」と、死んでも尚、問題にしようとしなかった。このようなことが現実に起こっていることを重く受け止めなければならない。
児童生徒が自殺に追い込まれても、「いじめとの因果関係は不明」などと平気で言い放つことが繰り返されてきた。今、子ども達を取り巻く問題を掘り下げて考えなければならない時にきている。
世界でも子どもの自殺
が深刻な日本
日本の小中高生の自殺は、
2019年 317人
2020年 415人
2021年 473人
2022年 514人
2023年 513人
と、年々増えている。2022年に比べて2023年が1人減っているのは、不登校が増えている関係がある。いじめが減っているわけではない。
15~19歳の死因のトップが自殺であり、これはG7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ)のうち、日本だけである。そして、自殺の原因は6割が不明とされている。これも全く異常である。不明なのではなく、明らかにしたくないのである。
日本の子どもの「精神的幸福度」はOECD38カ国中37位だとされている。虐待、いじめ、差別、貧困など、子どもを取り巻く状況は厳しい。
コロナ禍もあり、貧富の格差は拡大するばかりである。仕事を失った親は子どもを食べさせるために必死に働き、子どもと話をする時間さえない状況だ。貧困家庭に対する政府の支援体制は全く不十分である。貧しい子どもたちが差別され、いじめられる。お金がなければ大学にも行けない。将来を考えても、貧困から抜け出すすべはない。持っている能力を伸ばすこともできない。
一番若い世代が自ら命を絶つ国に未来はない。子ども達が希望を持てる社会、生きたいと思える社会へと変えていかなければならない。差別を許さない教育、貧困の連鎖を断ち切る政治が求められる。 (沢)
-
2024.07.03
日本新聞
沖縄の自治、人権踏みにじる日米両政府
4576号1面記事
沖縄の自治、人権踏みにじる日米両政府
政府は起訴後3カ月も事件を隠す暴挙。5月26日にも女性暴行事件。辺野古土砂搬出現場の抗議活動中、ダンプ衝突で警備員死亡、女性重傷
昨年12月、沖縄で16歳未満の少女が米兵に誘拐・性的暴行された。この事件は3月27日に起訴されていたが、政府は沖縄県に隠していた。事件がわかったのは6月25日のことだった。沖縄県議選の投開票日は6月16日。事件の発表は沖縄県議選が終わるまで隠されていたという可能性も考えられる。
5月26日にも米海兵隊員が、性的暴行をしようと女性を襲い、2週間のけがをさせる事件が起きている。昨年12月の事件を早期に発表していれば、この事件を防ぐことができたかもしれない。
米軍側は日本人が被害にあっても、誠意ある対応はない。彼らにとって日本人は“ジャップ”でしかないのだ。そして日本政府は断固とした抗議を行わず、身柄の引き渡しも要求しない。沖縄県民の人権も沖縄の自治も踏みにじり続けている。
今回の事件を受けて、「オール沖縄」、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」、「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」などの団体が、日米両政府、米軍に対して、謝罪と心のケアを求めて抗議声明を出している。
1995年にも、米兵による少女暴行事件が起き、抗議の県民大会には11万人を超える人が結集し、怒りをぶつけた。しかし、30年近く経った今も、状況は変わっていないのである。
5月にも暴行事件が起きていたことについて、玉城知事は、「このような非人道的で卑劣な犯罪が再び発覚したということは、断じて許されるものではない。強い憤りを禁じ得ない。情報を把握していれば、米国や国に対してしっかりと申し入れ、我々も被害が発生することがないように注意を認識できた。非常に残念」と述べた。
沖縄をないがしろにする政治を変えていかなければならない。
辺野古の土砂搬出現場
で死傷事故
6月28日、沖縄県名護市安和の国道で、警備員と土砂搬出抗議行動の女性がダンプにひかれた。警備員の男性は死亡、女性は足を骨折するなどの重傷を負った。
辺野古新基地建設については、沖縄県民は選挙でも住民投票でも反対の意思表示を明白にしている。玉城知事も基地反対を訴えて知事に選ばれた人で、県民とともに基地建設反対を貫いている。
辺野古大浦湾にマヨネーズ状の軟弱地盤の存在が明らかになった。そのため、国は埋め立て計画の変更を余儀なくされ、沖縄県に承認を求めていた。
基地を造ること自体、県民の民意に反しているし、ましてや軟弱地盤に基地建設などとんでもない。玉城知事は埋め立て計画の変更を承認しない。ところが国は知事の合意がなければ国が代執行できると、辺野古の工事を強行している。
これはあってはならないことである。国と地方は対等であり、国は地方自治を尊重しなくてはならない。(最近、それを覆す悪法が成立したが)ところが国は、何が何でも辺野古新基地建設を強行する姿勢である。
これでは沖縄戦の二の舞ではないか。唯一の地上戦である沖縄戦で、沖縄県民の4人に1人が犠牲となった。戦いを望まない沖縄の人々が戦場にかり出され、命を失った。
今も、沖縄県民が望まない基地(米軍基地も自衛隊基地も)が、南西諸島に次々造られ、戦場にされようとしている。
“軍隊は住民を守らない”これが沖縄戦で思い知らされた真実である。米兵による少女暴行事件、基地建設現場での死傷事件、すべて戦争に向かうことによる犠牲である。
平和を愛する沖縄の民意を政府は守るべきである。基地はいらない。戦争の準備を中止すべきである。 (沢)
-
2024.06.26
日本新聞
沖縄慰霊の日 南西諸島の軍事要塞化に反対
4575号1面記事
沖縄慰霊の日
南西諸島の軍事要塞化に反対
唯一地上戦を強いられた沖縄戦。6月23日の慰霊の日、多くの県民が
平和の礎を訪れ霊を悼んだ。沖縄戦を繰り返させない反戦の運動を
6月23日は沖縄慰霊の日である。1945年6月23日、陸軍第32軍の牛島司令官が自決したため、日本軍による組織的な戦闘が終わった。この日を沖縄県では慰霊の日として、沖縄戦の犠牲者を悼み、毎年、沖縄戦全戦没者慰霊祭を行っている。
玉城知事は次のように平和宣言した。
「沖縄戦から、平和の大切さ、命の尊さを学んだ。あの戦争から79年、今も広大な米軍基地、それによる事件・事故、環境問題。そして安保3文書などによる自衛隊の急激な配備拡大など、祖先は一体どのような思いで見ているだろうか。
沖縄の本土復帰の時、日本政府は、沖縄を平和の島とし、国際的な経済的文化的交流の新たな舞台とすることこそ、多くの霊を慰めることだと、声明を出した。
米軍基地の整備縮小、普天間基地返還、辺野古新基地断念を求める。戦争につながる一切の行為を否定し、人間の尊厳を重く見る、人間の安全保障、より高次な平和を求める。この島が世界の恒久平和に貢献する国際平和総合拠点となるよう、全身全霊取り組んでいく」と宣言した。
岸田首相があいさつに立つと、「沖縄を守ってくれ!」「沖縄を戦場にするな!」という声が何度も起こった。
岸田首相は「沖縄戦の悲惨な歴史を思うと、胸がふさがる思い」だと言い、「戦争の惨禍を二度と繰り返さないと御霊に誓う」と言ったが、一体どんな気持ちで言っているのか、怒りが湧いた。沖縄を含む南西諸島にミサイル基地を造り、自衛隊を配備し、強大な軍事基地化している。アメリカが煽り立てる「台湾有事」に対応するとばかりに軍事費倍増、5年間で43兆円である。能登半島地震の被災地では、いまだに水道も復旧していない地域が多いというのに。言ってることとやってることが、余りにも違う。御霊にこれほどの嘘を平気で誓える人間に、私たちの未来を任せてはおけないと、強く思う。
沖縄を戦場にするな
79年前の沖縄戦で住民が辛酸をなめさせられたのは、日本軍によるところが大きい。集団自決の惨劇も、日本軍がいるところで引き起こされた。
6月23日が組織的戦闘終結の日と言われているが、実際には、この日以降が最も犠牲者が多かった。牛島司令官は自決したが、「最後まで闘え」と命じる遺書を遺した。このため、最後の闘いだと命を散らさせられた兵士が多かった。「捕虜になるよりは死を選べ」という愚かな教えが、生きられる人をも殺したのだ。ひめゆり学徒などは、6月23日の終結宣言以来、自分で逃げることを強いられた。日本軍が守ることなどなかった。6月23日以後の犠牲者が最も多かったのである。
沖縄戦の教訓を沖縄県民は知っている。だから新基地建設に反対しているのだ。
ところが政府は沖縄県に対して、8月1日から辺野古の大浦湾での軟弱地盤の本格工事に着工すると宣言したのである。沖縄県民は辺野古新基地建設に反対し、玉城知事を選んだのである。その沖縄の民意を全く無視して、新基地建設を強行するというのである。これが「戦争の惨禍を二度と繰り返さないと御霊に誓う」政府のやることか。マヨネーズ状の軟弱地盤に7万本もの砂杭を打ち込むという。軟弱地盤に基地を建設すること自体、土台無理なことであり、ゼネコンの儲けのためなのは明白だ。
慰霊の日に沖縄県民をだまそうとするのではなく、平和の島にすると言ったら、その実現に向かうべきである。
沖縄慰霊の日、反戦の思いを新たに運動を前進させよう。 (沢)