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2025.03.12
日本新聞
東電福島第一原発事故から14年、政府は原発から撤退を
4612号1面記事
東電福島第一原発事故から14年、政府は原発から撤退を
原発事故による福島の子ども達の甲状腺がん400人、因果関係認めず最高裁は東電旧経営陣無罪の不当判決。全ての原発を廃炉にすべき
東日本大震災、東電福島第一原発事故から14年が過ぎ去った。日本だけではなく、世界を震撼させた大事故であり、今も収束していない。廃炉のめどさえ立っていないのが実情である。廃炉作業は今も続けられ、毎日4000人以上の作業員が被ばく作業を続けさせられている。故郷も生業も奪われ、今も故郷に帰れない人も多い。被害者の多大な健康被害の問題も明白である。
このような状況の中、驚くべきことに政府は第7次エネルギー基本政策で、原発を最大限活用する方針を出したのである。
311子ども甲状腺がん裁判で闘い続ける青年達
福島では原発事故が起きてから、小児甲状腺がんを発症した子どもが400人近くいる。通常は100万人に1人くらいの発症なのに、福島では38万人に400人である。原発事故による放射能汚染が原因と考えるのが当然なのに、国も東電も因果関係を認めていない。このような中、6人の青年達が原告となり、自分たちがなぜ甲状腺がんになって苦しまなければならなくなったのか、東電を相手に提訴した。原発事故の被害について話すだけでバッシングを受ける中での勇気ある行動である。“自分たちのあとにたくさんの青年達がいる。その代表として闘う”という決意である。
3月5日、第13回口頭弁論が行われた。当日は底冷えのするとても寒い日だったが、86の傍聴席に対して200人がかけつけた。
裁判では、被ばくと発がん性の因果関係について、原告側から指摘された。被告・東電やUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)は、「100ミリシーベルトを超える被ばく量でなければ、がんにならない」と被ばく量を問題にしているが、病気という結果から判断するのが正しいという指摘だ。また、科学的根拠という観点からも、スクリーニング効果(たくさん調べたから多くのがんがみつかった、という被告側の論)と言うが、小児甲状腺がんが数十倍に上昇していることは、スクリーニング効果では説明できない。
裁判の傍聴にかけつけた愛知県立大学の学生の皆さんは「原告の人たちの不安、思いが先延ばしにされるのを知った」
「希望の将来を一度に失った原告さんの思いは大変なものだと思う」「SNSで、甲状腺がんを発症した被害者を攻撃するのはひどいと思った。僕は被爆3世、多くの若い人に考えてほしい」、若者たちの実際から真剣に考えている発言に希望が見える。
最高裁、旧東電幹部に無罪の不当判決
5日、最高裁は東電の旧経営陣を無罪とした一、二審の判断を支持し、検察官役の指定弁護士の上告を棄却した。これによって被告の無罪が確定した。
原発事故の責任を誰も取らない、では被害者はどうすればいいのか。全く不当な判断であり、決して認められないものである。誰も責任を取らないのに、今後も原発を動かすなど、やってはならないことである。
「さようなら原発全国集会」に3000人
3月8日には、代々木公園で「さようなら原発全国集会」が行われ、3000名がかけつけた。この日もとても寒い一日だった。
原発事故被害者団体連絡会の大河原さきさんは「最大の公害事件・原発事故は、誰にも責任はないのか。最高裁の旧経営陣無罪判決は間違っている。福島県、東京都、目黒区でも避難者追出し裁判をやっている。司法が人権に基づいた判断をせず、行政や東電と癒着して、一番弱い立場の人を痛めつけることは断じて許されない!」、新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会の沢居恵美さんは「放射能汚染土を全国の公共事業で再生利用するという政策が進んでいる。その実証事業場所に選ばれたのが、新宿御苑と所沢だ。安全レベルは1キロ当たり100ベクレルなのに、その80倍の8000ベクレルまで安全だという。原子力政策は政府の虚構の積み重ねだ。本来なら東電の敷地で保管されるべきだ」、柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民で決める会の池田千賀子さんは「原発再稼働問題に県民の意思をしっかり反映させる県民投票を行う、この直接請求の署名活動を行い、15万128筆、直接請求に必要な有権者数の4倍を獲得した。新潟県議会が審査・裁決を行うのは4月8日から3日間の臨時会です。新潟県議会が最後の裁決を行うまで、大きな圧力をかけてください!」と訴えた。
全国の状況を見ても、原発は絶対に動かしてはいけない、廃炉以外にないという思いの強まる集会であった。
原発事故から15年目に突入した今、全国で原発からの撤退を政府に突きつけよう。 (沢)
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2025.03.05
日本新聞
政府は現行保険証の発行存続を!
4611号1面記事
政府は現行保険証の発行存続を!
マイナ保険証一本化ねらう政府。個人情報の提供で公的医療費抑制、民間企業が医療情報利活用の危険。医療機関は事務手続き煩雑で混乱
マイナンバーカードの取得は義務ではない、任意だとされてきた。しかし、マイナンバーと保険証を一体化させてマイナ保険証を作るに至って、事実上、強制となってきた。政府はマイナ保険証の原則一本化をねらっている。
政府はマイナンバーカードの普及のために、取得すれば2万円プラス5000円のプレミアムをサービスした。そしてマイナ保険証の利用を申し込んだ人に7500円分のポイントを付与した。このように、マイナポイント付与に2兆円も税金を投入している。その他にマイナンバーシステムに1兆1700億円もかけている。
ところが、マイナ保険証の普及は進まず、2024年10月28日~12月31日までにマイナ保険証をやめた人が4万5214件に及んだのである。他人の医療情報が間違って入り込んでいたり、あるいは自分の情報が他の人のマイナ保険証に組み入れられたりするケースがあったのだから、当然である。その結果、マイナ保険証の利用率は25%にとどまっている。
デメリットだらけのマイナ保険証
・マイナカードは任意だと言われながら、公務員のカード一斉取得推進施策が行われた。家族も含めて、カード取得の事実上の強制である。それは公務員に限らず、民間企業にも及んだ。カードを取得しない自由が保障されるべきである。
・マイナカードの裏側にマイナンバーが記載されている。このため第三者に番号を知られ、不正利用される可能性がある。
・マイナ保険証の利用者の医療費を安くするというのは差別であり、認められない。
・マイナ保険証は申請しないと取得できない。さらに5年に一度は更新手続きが必要。介護施設入居者、独居の高齢者、障がい者で申請手続きや管理ができない人を置き去りにした制度だ。
・紛失すると再発行に時間と手間がかかる。
・システムに対応できない医師は廃業に追い込まれる。
・医療現場に過度の負担が強いられる。機械は1台なので受付が並んでしまう。朝の読み込みエラー、タッチパネルの動作エラーで現場は混乱。患者さんへの説明、クレーム対応に追われる。
・小さなクリニックは発熱外来病棟を設けられず、車で待機してもらって対応する。マイナ保険証対応の機械は持っていけず、受付もできない。
・基本、機械でデータを確認しなくとも、医療情報は患者さんに聞けばいいし、薬の情報はお薬手帳を見ればいい、これが現場の見解である。
政府は何のためにマイナ保険証の普及拡大をねらうのか
政府は、なぜこれほどまでにマイナ保険証をごり押しするのか。
ひとつには、個人情報が網羅されることで、その情報をもとに公共サービスや社会保障からの排除や制限にもっていこうというねらいがある。ますます不利益を被ることになる。
また、民間企業にも情報提供が可能。たとえば検診結果や人間ドッグの結果などを保険会社が入手して、保険の勧誘などに使うなど起こり得ることである。
高齢者や病気で気が弱くなっている人が儲けの対象にされかねない。
政府は昨年12月2日から、従来の保険証の発行をやめた。現行の保険証は12月2日から1年間は有効だという。当分の間、マイナ保険証を持っていない人には資格確認書を発行するというが、今後、いつどうなるかわからない。
マイナカードは、あらゆる個人情報の国家による一元管理であり、監視社会日本をますます強化するものに他ならない。
政府に、マイナ保険証一本化の方針を撤回し、現行の健康保険証を存続させることを求める。 (沢)
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2025.02.26
日本新聞
自給率38%、食料を守らない国に未来なし
4610号1面記事
自給率38%、食料を守らない国に未来なし
農家が農業を続けられ、消費者が安心して農産物を買える対策を講じるのが政治の役割。「時給10円で
生きられるか」米農家の怒りの叫び
“日本の農家は過保護にされている”などと言われて、あたかも農家が潤沢な補助金をもらって悠々自適に暮らしているように宣伝されて久しい。実際はどうだろうか。
日本の農家の平均年齢は68歳、しかも後継ぎのいない農家が多い。自分の子どもに「農業をやってほしい」と言えないのだ。農業をやって食っていけないからである。
今、米の値上がりが宣伝されているが、今ようやく30年前の水準に戻ったと言える。米を60キロ作るのに経費は1万5000円はかかる。1990年には2万1000円を超えていたが、その後、米価は下がり続け、1万1000円台~1万6000円台を上下し続けてきた。米農家は赤字経営を強いられた。経費を差し引いた米農家の収入は年たったの1万円、労働時間で割ると、なんと自給10円にしかならない。こんな統計が発表された。これではとても生きられないから、米以外のもので収入を得る方法を農家は必死で考えて生きてきたのである。先祖代々の土地を何とか生かしたい、そんな思いで米作りを続けてきたのである。
今ようやく2万3000円台になったところだ。そうなると今度は“米が高値で消費者は買えない”と宣伝し、“農家だけがいい思いをしている”と、農家と消費者の対立を煽る。
責任は政治にある。農家に米や野菜を作って生きていける価格を保障する、同時に消費者に安心して食料を買える価格を設定する。その差額を農家に保障するのが国の仕事である。
2009年、当時の石破農水相は「生産調整を廃止に向けて緩和していき、農家に必要な生産費をカバーできる米価水準と市場米価の差額を全額補てんする。それに必要な費用は3500億円~4000億円で、生産者と消費者の双方を助けて、食料安全保障に資する政策は可能である」と方向性を出した。
首相になった今、これを実行すべきである。軍事予算8兆7000億円である。これをやめれば3500億円~4000億円はすぐにでもねん出できるというものである。
若者が希望を持って従事できる農業の確立を
日本の食料自給率はたったの38%である。6割以上を輸入に頼っている。ひとたび、ウクライナ戦争のようなことが起きると、日本は最も打撃を受ける国だと言われている。世界のどこよりも大量の餓死者を出し、国の存亡に関わるというのである。そうならないように、食料を自国で自給できるようにする、これが当然の政策だと思うが、日本の農政はそうではない。
・農業予算が多すぎる
・飼料米補助をやめよ
・低米価に耐えられる構造転換
・備蓄米を減らせ
・食料自給率を重視するな
これが政府の方針だというのだから驚く。何も実際に即していない。
1980年に農林水産予算額は3兆5800億円だったのが、2024年には2兆2700億円と大幅に減っている。一方、軍事予算は1980年に2兆2300億円だったものが、2024年には7兆9400億円まで増え、農林水産予算の3.5倍になり、今後もどんどん増額される。
農家は高齢化し、食料を作る人が減っていく中で、軍事費を増やしてどうやって生きていけるというのか。都市に人口が集中し、農漁村は過疎化するばかり。耕作放棄地がどんどん増えていく。これはすべて政治の責任である。
農林水産業など一次産業に力を入れ、地方に産業を興す。そうして雇用を創出して、地方で暮らせるようにする。それが今、早急に求められている。
3月30日、東京・青山で、農政の転換を求めてトラクター行進が行われる。元農水相の山田正彦さんが事務局として尽力している。農家を守ることは食を守ることであり、消費者を守ることだ。食を守ること、命を守ることを第一にする農政の大転換を求める。 (沢)
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2025.02.19
日本新聞
福島第一原発 汚染水の空タンク解体開始、作業員被ばく
4609号1面記事
福島第一原発 汚染水の空タンク解体開始、作業員被ばく
タンク解体作業で30代作業員が内部被ばく。鹿児島では原発複合災害訓練実施。原発からの撤退、事故
炉遮へい、汚染水発生防ぐ対策を
2月14日、福島第一原発の汚染水タンク解体が開始された。
2023年8月から、事故炉から発生した汚染水の海洋投棄が実施された。ALPS処理水とは言っても、トリチウムは除かれていないし、他の放射性物質も取り除かれてはいない汚染水である。海洋投棄反対の漁業者はじめ多くの声を無視しての強行である。
福島第一原発事故炉からの汚染水保管タンクは1000基を超えている。これまで、10回、タンク78基分を投棄した。その空になったタンクのボルトを外したり、ガスバーナーで切断したりし、細かく切って、コンテナに入れて原発敷地内の北側に保管するという。
放射性物質は拡散しないのか、作業員の被ばくはどう防ぐのかと疑問が湧く。1日目の14日はタンクのフタを5つに分けて撤去する作業。作業後の検査で、30代の作業員が放射性物質に汚染され、内部被ばくが確認された。
事前に予測できたことだ。21基のタンクを解体するというが、作業員の被ばく対策をやれないなら、作業継続はできないことだ。
タンク解体開始と同じ14日、鹿児島では地震に伴って九州電力川内原発で重大事故が起きたという想定で、避難訓練を実施したという。国と鹿児島県、地元市町、九電など294機関、住民約4800人が参加しての大訓練。
しかし、重大事故の訓練を物々しくやるより、原発からの撤退を考えた方がいい。東電福島第一原発事故は世界を震撼させた大事故である。事故後、ドイツは原発ゼロを実現した。ところが事故に直面した当の日本は、あろうことか今、原発を「できる限り活用」と原発推進策に戻っている。今も事故処理の見通しさえ立っていないというのに。
科学は人類の発展のためにあるべきで、発展とは破壊ではなく生成でなければならない。将来の世代に、核汚染という解決不能の問題を負わせる原発は、果たして科学と呼べるのか。
市民科学者が重要な提言を示している。
「汚染水発生ゼロめざし、長期遮へい管理求める」原子力市民委員会
東電は、21基のタンクを解体した跡地に燃料デブリの一時保管施設を建設することを検討しているという。放射性物質を敷地内のあちこちに分散する、これは汚染を拡散することではないだろうか。総量8トンもある燃料デブリは現在0.7gを試験的に取り出して調べている段階。超高線量で気の遠くなるような工程であり、取り出しは不可能である。
原子力市民委員会はすでに昨年3月、国と東電に提言書を提出している。
1.福島第一原発の廃炉に関わる「中長期ロードマップ」の「汚染水対策」の目標に「汚染水発生量ゼロ」を加え、その達成時期を明記すること
2.「汚染水発生量ゼロ」実現のために、地下水流入を防ぐ原子炉建屋止水を最優先項目に位置付けること、及び建屋止水後の燃料デブリの冷却のために、循環注水冷却システムを現在の開ループ方式から閉ループ方式に変更すること
3.「燃料デブリ取り出し」は、現状では技術的に極めて困難なこと、また、住民と作業員の被ばくリスクが大きいことから、「取り出し規模の拡大」を凍結し、現在の位置で長期遮蔽管理すること
実に明確である。原発事故に対しては、「止める、冷やす、閉じ込める」が原則だと言われている。今、政府・東電が行っているのは、「閉じ込める」ではなく「拡散する」である。原子力市民委員会が提言しているように、汚染水をこれ以上増やさないことが大切だ。建屋への地下水流入を防がず、汚染水を増やし海洋投棄、これでは汚染被害を拡大する一方だ。こんなやり方では、作業員の被ばく、住民の被ばくも拡大する。
政府・東電は汚染水の海洋投棄を即、中止し、事故炉の長期遮へい措置へと方針を変更すべきである。 (沢)