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2026.08.05

日本新聞

政府、原発建て替え数値目標決定の無謀

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4685号1面
政府、原発建て替え数値目標決定の無謀

いまだに収束していない福島第一原発事故。今も高線量が続く被ばく地域。人が戻らない地を巨大産業拠点にし「復興」を世界にアピール

 7月31日、政府の原子力関係閣僚会議は原発建て替えの数値目標を発表した。2040年代までに最大5基、2050年代までに最大14基をめざすと正式に決定したというのである。
 2011年の東電福島第一原発事故は世界を震撼(しんかん)させた。“原発をゼロに”が国際世論となった。日本も当初はエネルギー基本計画で、“限りなく原発によるエネルギーをゼロに”と言っていたが、今では“原発を最大限に活用”と180度方針を変えている。
 一体何が変わったのか。原発が安全だと証明されたのか。
 原発は事故を起こしたらもちろん危険だが、通常運転でも大気中に海に放射性物質を放出している。原発周辺住民の被ばくも明らかにされているし、イギリスやフランスの再処理工場付近の子どもの甲状腺がん多発など、被ばくによる健康被害が報告されている。
 ところが日本はこの期に及んで、新たに原発を建てると発表したのである。実に危険である。

 福島の実際

 7月30日、福島を訪れた。福島県南相馬市にある、3.11&福島原発事故伝承アートミュージアム「おれたちの伝承館」を訪ねるためだ。
 ガイガーカウンターで放射線量を測りながら行った。毎時0.23μSv(マイクロシーベルト)を超えると除染が必要な地域である。富岡町役場付近は0.05μSv、しかし車が山の中に入ると0.37μSvにまで上がった。大熊町でもどんどん上がり、0.49、0.72、1.249、1.459と上がっていった。このあたりで除草作業が行われていたのにも驚いたが、作業員がマスクもしていなかったのには閉口した。危険が全く知らされていないのだ。ガイガーカウンターは最高で1.7μSvを示した。除染が済んだとされている双葉町で0.21μSv、浪江町で0.115μSvであった。
 このような中で、福島県立の伝承館では、モニターに移された大学教授が「福島県の子どもたちの小児甲状腺がんと、原発事故との因果関係は全くありません!」と断言している。実に犯罪的だ。「おれたちの伝承館」はこの嘘を通してはならないと、原発事故の真実を伝えるために作られたものである。
 被災者が置いてきた牛がかじった柱があった。食べるものもなく柱をかじって餓死したのだ。原発事故がなければこんな悲惨なことは起きなかった。そこに一枚の色紙があった。
“人間が 牛の世話したんでねえ
 人間が 牛の世話になったんだ”
福島で牛と共に生きた人の無念が伝わってくる。
 集中的に除染した地域を一歩離れて山に近づくと、今でも高線量の実際がある福島。そこに若い家族を住ませるために、数々の支援策を講じている。大熊町も双葉町も帰ってくる住民は少ない。そこで、原発事故のことやその後の状況を何も知らない若い世代を誘致しているのである。だましのやり方だ。毎時0.1μSvや0.2μSvで安全という保障は全くない。小さな子どもたちがそこで暮らして、健康被害を受けない保証はない。
 福島県浜通りで進められているイノベーションコースト構想は巨大な国家プロジェクトで、実に広大な土地を占めている。福島の人が戻ってこない、その土地を逆に利用して世界的な産業基盤を造る、実に巧みだ。
 廃炉の技術開発、ロボット・ドローン産業、水素などのエネルギー・リサイクル技術、IT・ロボット活用の農林水産業等々、結局は大企業が進出し儲けるものだ。
 最優先課題は被災者の生活支援であり、故郷を奪う原発からの撤退である。決して新たな原発を造ることではない。      (沢)